hauntingという形容詞がぴったりくるThe House of Riverton

Kate Morton
2008年4月(米国)
歴史小説/文芸小説

若き詩人R.S. Hunter の悲劇的な自殺を描く映画の製作者が、現場にいた者のなかで唯一の生存者である98歳のGraceに接触してくる。それをきっかけにGraceは忘れたかったRiverton Houseのことを思い出す。
第一世界大戦前の1914年の英国。母子家庭で育った14歳のGraceは、母が以前奉公していたRiverton Houseで住み込みのメイドになる。上流階級の者は使用人を人間として考慮しないのでGraceは透明人間のように家族の多くの秘密を目撃するようになる。無口な母との孤独な生活に慣れていたGraceが強く惹かれたのは、館の主Lord Ashburyを訪問していた孫のDavid, Hannah, Emmelineと彼らの秘密の遊び「The Game」だった。Hannahと同い年のGraceは、使用人の立場は超えないもののHannahの秘密の守り人として特別な親密さを与えてもらう。
Davidの高校の友人Robbie Hunterの訪問をきっかけに3人の兄妹の関係にひびが入り、その後の第一次世界大戦により、それまで安定していたRiverton Houseのupstairs(上流階級の家族)と downstairs(使用人たち)の世界はどちらも大きく変貌する。
GraceはHannahへの忠誠心のために自分自身の個人的な幸福をあきらめるが、彼女の犠牲は悲劇的な結末を止めることができなかった。

Rivertonという架空の屋敷での悲劇的なラブストーリーとともに、戦争により変化を余儀なくされた英国の貴族社会の終焉をメランコリックに描いている。だが大げさにメロドラマチックなところはなく、enthralling, hauntingという形容詞がぴったりくる。作者が住んでいるオーストラリアと英国で大ヒットした作品。

●ここが魅力!
ともかく完璧に私好みの世界!
兄妹たちの秘密の遊び「The Game」は、私が幼いころに姉と妹と遊んだ空想遊びによく似ていて、メランコリックになってしまいました。メンバーは3人だけで他の誰とも共有してはならない世界。だからここでも話しません。
Riverton Houseは私が姉や妹たちと空想で遊んだ世界にぴったり。ページを開くと、すぐさま現実の世界を離れて広い庭や池がある英国の田舎のお屋敷にテレポートすることができ、物語りが終わった後もこの世界を離れたくありませんでした。
また、戦争が英国の上流社会のupstairs(上流階級の家族)と downstairs(使用人たち)の生活をいかに変えたのかを描いているところも私にとっては興味深いところでした。

●読みやすさ 上級
長い作品(500ページ弱)ですし、最初のうち緩慢で入り込みにくく感じるかもしれませんが、いったん兄妹たちがストーリーに加われば、あとはページをめくるスピードが上がってくるでしょう。
決して難しい英語ではありませんが、英国のこの時代を描いた作品を読んだことのない人には状況が分かりにくいでしょう。

 

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