ダークなユーモアで人生とは何かを考えさせるSF青春小説ーGoing Bovine

Libba Bray
Delacorte Books
9月22日発売予定
496 ページ
ヤングアダルト/SF/青春小説

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16歳のCameronは、野心も人気もない、その場しのぎのぐうたら男子高校生である。両親の仲は危ういし、優等生で完璧な双子の妹は兄の存在を完全に無視している。つまらない人生をなるべく努力せずに過ごすしか興味のないCameronが狂牛病(Bovine Spongiform Encephalopathy、ゆえにGoing Bovineという題名)にかかり、余命わずかと知らされる。生きることも楽しまず努力もしなかったCameronだが、致命的な病にかかって死にたくないと焦る。病院でくさっているCam(Cameronの愛称) のもとにパンクっぽい身なりの天使Dulcieが現れ、世界が滅亡に瀕していて、それを救うのがCamの使命なのだと言う。滅亡の原因は量子物理学の天才で異次元をトラベルする方法をみつけたDr. Xという人物で、彼を見つければ狂牛病を治癒してもらえるとDulcieは告げる。
そこでCamはDulcieのアドバイスに従い、ちびで神経質なゲーマーのGonzoと一緒に病院を抜け出してクレイジーな旅に出る。Camたちは伝説的なジャズトランペット奏者、クレイジーな宗教集団、そしてノームに身をやつしている北欧の神などに出会い、念願の初セックスも遂げる。これまで経験したことのないほど楽しい人生を送り始めたのだが、脳はだんだんスポンジ状態になってくる。
Libba Brayをニューヨークタイムズ紙ベストセラー作家にしたGemma Doyle三部作(Great and Terrible Beautyとその続編)とは相当様相が異なる。どちらかというと、ヴォネガット、Don Qixote、ライ麦畑、ガープの世界、などを連想させるダークなユーモアのSF(すべてが幻想だと思えば青春小説?)で、サブリミナルに生きることの意味を考えさせるシュールリアルな作品である。Gemma Doyleのファンが圧倒的に女子高校生であったのに対し、これは男子高校生が主な読者であろう。Gemma Doyle三部作とGoing Bovineの共通性は、単純なハッピーエンドを否定していることと、シニカルなユーモアのセンスである。

●ここが魅力!

実は最初のうち最後まで読み続けるかどうか悩みました。
というのは、Gemma Doyle三部作のつもりで軽く読み始めたところぜんぜんタイプが違うので「いったいこの本は何であり、どこへ行くのか」が見えてこず、「どう感じてよいのか」決めかねたからです。また「狂牛病なんて深刻な病気を笑いものにしていいのかなぁ…」とか気まずく感じたのも事実です。けれども、せっかくBrayに会ってサインまでしてもらったのだから、と最後まで読みました。そして今「読み終えてよかった」としみじみ感じています。
この本は他のYAよりも洗練された読み方を要求するものであり、その心がまえがないと失望するか飽きる可能性があります。でも、私の娘がそうですが、ある程度の年齢になると、軽い本よりも挑戦的なものを読みたくなるものです。この本は、シニカルな年頃の高校生たち(とくに男の子)に、押し付けがましくもなく、説教くさくもなく、「人生とは何なのだろう?」と考えさせてくれる本だと思います。

●ここが怖かった

怖い本じゃないのですが、ディズニーのIt’s a Small Worldのアトラクションが重要なシーンになっていて、これが私には悪夢を見るほど怖かったのです。というのは、私はディズニーのほんもののIt’s a Small Worldの途中で恐怖心がじわじわわき起こり、逃げ出したくなるのですよ。怖いくせに3度か4度入ったことがあり、この本での描写がそのときの感覚を呼び起こして読後に嫌な夢をみちゃいました。作者のBrayもこの本に使うということはある程度不気味だと思ったのでしょうね。

●読みやすさ ★★☆☆☆

通常YA本は成人の本や(ときには)児童書よりも読みやすいものですが、この本に限っては決して読みやすくはありません。実際に私の知っている図書館司書は途中で読むのを断念しています。でも、ヴォネガットあたりのSFを読む感覚で挑めば簡単に感じるでしょう。

●アダルト度 ★★☆☆☆

セックスシーンはあることにはありますが、短くて軽いものです。

ただし、全体のテーマがけっこう重いので高校生以上が対象。

●この作家の別の作品

Gemma Doyle三部作

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