Month: August 2009

ニューヨークタイムズ紙ベストセラー(フィクション/ハードカバー)

さて今週のニューヨークタイムズ紙ベストセラー(フィクション/ハードカバー)です。この中で読む価値があるのは、South of Broad, The Help, That Old Cape Magic, The Girl Who Played With Fire,…

人の心の痛みの間違った治療法ーRemedies

Kate Ledger384 ページPutnam 2009年8月20日発売文芸小説/現代文学 http://rcm.amazon.com/e/cm?lt1=_blank&bc1=FFFFFF&IS2=1&npa=1&bg1=FFFFFF&fc1=000000&lc1=0000FF&t=yofaclja-20&o=1&p=8&l=as1&m=amazon&f=ifr&md=10FE9736YVPPT7A0FBG2&asins=0399155899 http://rcm-jp.amazon.co.jp/e/cm?lt1=_blank&bc1=FFFFFF&IS2=1&npa=1&bg1=FFFFFF&fc1=000000&lc1=0000FF&t=yukariscott-22&o=9&p=8&l=as1&m=amazon&f=ifr&md=1X69VDGQCMF7Z30FM082&asins=0399155899 ワシントンDC地区に住むSimon Bearは疼痛専門医でその妻のEmilyは大手PR会社(アメリカではPRはテレビコマーシャルではなく、広報を意味する)の重役をつとめており、いわゆる「成功者」である。豪華な邸宅に住み、Simonはその邸宅に直結した美しいクリニックで治療する有名医である。 Simonのクリニックを訪れるのは他の医療機関では満足を覚えなかった、あるいは治療を断られた重傷あるいは慢性の疼痛患者である。Simonは疼痛患者を治療し、Emilyは情報をスピンすることでスキャンダルを起こした有名人や会社を救うことに長けている。どちらもRemediesのプロである。だが、どちらも自分たちの関係に深い傷を残している「長男の死」という体験に対して正しいRemediesを見つけられず、どんどん傷を深める。 疼痛のために暗い生活を送る患者に解決策を与える自分の能力と勇気にSimonは誇りを抱いているが、彼が新たに雇用した新人看護師は、Simonの治療法に強く反論する。看護師の疑問に耳を傾けず頑に自分の正当性を押し通すSimonだが、両親を訪問した先で偶然発見した新薬の試験をきっかけに深刻な問題に巻き込まれる。 妻のEmilyは昔の恋人に再会して夫や娘との関係にさらに強い疑問と不満を抱くようになり、そこからの脱出を夢見る。一人娘のJamieもまた、両親に内緒で自分の心の痛みから逃れようとしていた。 ●ここが魅力!タイトルにも書いたように、熟練した文章力と人物描写がRemedies最大の魅力です。とくに主人公の医師とその妻が実存する人物のように見事に描かれています。どちらも自己愛が強く、自己中心的で、読者は不愉快な気分を覚えるかもしれませんが、彼らの(自己正当化の)視点から描きつつも読者に不快感をじわじわ抱かせるところがLedgerの手腕なのです。新人でこれを完璧に実現したLedgerには脱帽しました。unlikable characterですがそれを描ききっているために傑作、という意味でアップダイクのRabbitをちょっと思い出しました。 疼痛治療に関しては東西(米国と日本)とではアプローチの方法が非常に異なります。米国では(発熱もそうですが)すぐに疼痛解熱剤を与えるように指示が出ますが、日本ではウィルスを殺す役割を果たす熱をすぐには下げません。疼痛でもこちらではちょっとした手術で麻薬性鎮痛剤をすぐに処方しますが、日本ではこのように依存性が高い薬剤はめったに使いません。SimonとEmily夫婦の関係も疼痛治療のように東西差がはっきり出ていて、日本人の方には別の意味で興味深く読めるかもしれません。 ひとつだけ難を言わせていただくならば結末。でもその理由はここでは内緒。読んだ方とは意見を交換してみたいです。…

インディ・ジョーンズを連想させる盛りだくさんでスピード感ある冒険・アクションスリラー−The Judas Strain

James Rollins560ページ(マスマーケット版)2007年7月2日初刊発売Harper冒険・アクション/スリラー http://rcm.amazon.com/e/cm?lt1=_blank&bc1=FFFFFF&IS2=1&npa=1&bg1=FFFFFF&fc1=000000&lc1=0000FF&t=yofaclja-20&o=1&p=8&l=as1&m=amazon&f=ifr&md=10FE9736YVPPT7A0FBG2&asins=0060765380 http://rcm-jp.amazon.co.jp/e/cm?lt1=_blank&bc1=FFFFFF&IS2=1&npa=1&bg1=FFFFFF&fc1=000000&lc1=0000FF&t=yukariscott-22&o=9&p=8&l=as1&m=amazon&f=ifr&md=1X69VDGQCMF7Z30FM082&asins=0060765380 架空の米国特殊部隊Sigma Forceシリーズもの4作目 マルコ・ポーロの帰還の旅は現在でも謎につつまれている。それはポーロがある疫病に関する秘密を抱えたまま死んだからである。その疫病Judas Strainが突然現代によみがえった。Judas Strainは通常であればまったく害のないバクテリアが炭疽菌のように致命的な菌に変異したものである。疫病の調査のためにSigma Forceから送られた二人の科学者は謎のテロ集団The Guildに襲われ一人は人質になりJudas Strainの治療法を探るように強要される。The Guildは治療法を見つけ出してからJudas Strainをバイオ武器として使おうとしているのだった。Judas Strainは全世界に広がろうとしており、人類滅亡の危機に面していた。いっぽう、Judas…

蠅の王の作者ゴールディングの驚きの実像をあばく伝記

伝記や自伝というのはたいがいセンセーショナルなものですが、これはその中でも「すごい!」とうなるセンセーショナルさです。 飛行機事故で南太平洋の孤島に遭難した英国人の少年たちが殺し合うというすごい内容の小説Lord of the Fliesが最初に出版されたのは1954年。世界的に有名になり、アメリカでは(日本でもそうかもしれませんが)今でも高校の教材に使われています。作者のWilliam Goldingはノーベル賞を受賞し、英国のknightの称号を得、1993年に81歳で亡くなっています。 しかし、オックスフォード大学で教鞭を取るJohn Careyが新たに発見した未発表の自伝には、このGoldingの驚くべき暗い実像が記されていたのです。英国のSunday TimesによるとGoldingが彼のキャラクターがどのようにして生まれたのかを妻に説明するために書いた記録には、彼が16歳のときに出会った13歳の少女を2年後にレイプしようとしたことや学校の教師をしていたときにLord of the Filesを書くための実験として生徒たちを対抗させたりしたことが書かれていたのです。まったくとんでもない奴だったのですね。 John Careyはこの新発見の記録だけでなく、手紙など多くの資料からGoldingの実像を描き出しているとのことです。 まず英国で発売されますが、米国での発売予定は不明です。日本では米国に先駆けて英国版を入手することができます。…

別荘の本棚が暗示するものは?

まだ東京に住んでいた18年前にナンタケット島に別荘を購入して以来、自分たちが使わないときには貸別荘にしてきました。 そこのマスターベッドルームの本棚に読み終えた本などを残し、「ご自由にお読みください。お持ち帰りOK」と書いておいたところ、けっこう役立ってきたようです。ほこりをかぶっているだけのものもありますが、手あかがついてぼろぼろになってきたもの、消えたものが多く、10冊以上あったThe Cat Whoシリーズは5冊だけになっています。 久々に本棚を探索すると、けっこう面白い掘り出し物を再発見し、それにまつわる懐かしい記憶がよみがえったりします。たとえばこの I Am A Catは日本で印刷されたものです。どうやら昔々に私が夫にプレゼントしたもののようです。1984年に英国で買ったThe Picture of Dorian Grayを発見した娘は、あのころ私がつけたハイライトの選択が奇妙だと文句をつけながらも「すごく面白い!」と感激しています。Wuthering Heightsも私が買ってあげた版よりもここにある古い版のほうが読みやすいと言って、レキシントンの我が家のほうに持って帰るつもりのようです。 久々にみつけてもう一度読み直したいな、と思ったのは1986年に英国で買ったThe…

You Tubeでヒットして出版にこぎつけたSimon’s Cat

私がYou Tubeで大好きだったSimon’s Catが本として出版されることになりました。いやはや、最初に観たときからそうなって欲しいと思っていましたが、ついに実現しました。You Tubeであまりにも慣れ親しんでいたので他人とは思えない(他人なんですが)Simonに「おめでとう!」と直接言いたくなるくらい嬉しいです。 こちらが公式サイトです。 ネコと暮らしたことのある人なら、これすご〜くよくわかると思います。Adobe FlashでSimon本人が全部作っていて声もそうなんです。 下のLet Me Inは私がSimon’s Catに出会った作品です。 http://rcm.amazon.com/e/cm?lt1=_blank&bc1=FFFFFF&IS2=1&npa=1&bg1=FFFFFF&fc1=000000&lc1=0000FF&t=yofaclja-20&o=1&p=8&l=as1&m=amazon&f=ifr&md=10FE9736YVPPT7A0FBG2&asins=0446560065 http://rcm-jp.amazon.co.jp/e/cm?lt1=_blank&bc1=FFFFFF&IS2=1&npa=1&bg1=FFFFFF&fc1=000000&lc1=0000FF&t=yukariscott-22&o=9&p=8&l=as1&m=amazon&f=ifr&md=1X69VDGQCMF7Z30FM082&asins=0446560065

英国チューダー小説の女王Phillippa Gregoryの新作本日発売

映画化され、世界的に有名になったThe Other Boleyn Girlの作者Phillippa Gregoryの新作The White Queenが本日米国で発売になります。 http://rcm.amazon.com/e/cm?lt1=_blank&bc1=FFFFFF&IS2=1&npa=1&bg1=FFFFFF&fc1=000000&lc1=0000FF&t=yofaclja-20&o=1&p=8&l=as1&m=amazon&f=ifr&md=10FE9736YVPPT7A0FBG2&asins=1416563687 http://rcm-jp.amazon.co.jp/e/cm?lt1=_blank&bc1=FFFFFF&IS2=1&npa=1&bg1=FFFFFF&fc1=000000&lc1=0000FF&t=yukariscott-22&o=9&p=8&l=as1&m=amazon&f=ifr&md=1X69VDGQCMF7Z30FM082&asins=1416563687 今回の中心人物はWar of the Roses(薔薇戦争)の勃発に深くかかわったElizabeth  Woodville Greyです。27歳の未亡人Elizabethがヨークの22歳の王Edward…

女の子と男の子の脳は生まれつき異なるのか?− Pink Brain Blue Brain

Lise Eliot432 ページHoughton Mifflin Harcourt 2009年9月14日発売予定脳神経学/発達心理/教育/子育て/ノンフィクション http://rcm.amazon.com/e/cm?lt1=_blank&bc1=FFFFFF&IS2=1&npa=1&bg1=FFFFFF&fc1=000000&lc1=0000FF&t=yofaclja-20&o=1&p=8&l=as1&m=amazon&f=ifr&md=10FE9736YVPPT7A0FBG2&asins=0618393110 http://rcm-jp.amazon.co.jp/e/cm?lt1=_blank&bc1=FFFFFF&IS2=1&npa=1&bg1=FFFFFF&fc1=000000&lc1=0000FF&t=yukariscott-22&o=9&p=8&l=as1&m=amazon&f=ifr&md=1X69VDGQCMF7Z30FM082&asins=0618393110 Simone de Beauvoirは「第二の性」で"One is not born, but…