良い意味でも悪い意味でもフレンチな現代小説 The Discreet Pleasures of Rejection

Martin Page (英語翻訳:Bruce Benderson)
192ページ(ペーパーバック)
Penguin
2010/1/26発売
文芸小説(原作:フランス語)/現代小説

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How I Became Stupid
の作者Martin Pageの最新作。

パリに住む31歳の独身男性Virgilが仕事を終えて帰宅すると、留守電にあるメッセージが残されていた。それはガールフレンドのClaraが一方的に別れを告げるものだった。だが問題は、VirgilにはそのClaraにまったく心当たりがないことだ。どう努力しても彼女とつき合ったことが思い出せないVirgilは混乱してかかりつけの精神科医を訪問する。
Claraが間違えて電話したのではないことは確かだ。彼女はVirgilの名を呼んだし、彼の元ガールフレンドで友人のFaustineも彼らが別れたという話を聞いて友人たちに言いふらしていたからだ。
思い出せないVirgilは脳が侵されていて死ぬのだと思い込み、金に糸目をつけず夕食とワインのデリバリーを頼み、自己憐憫に浸る。
だが、CATスキャンの結果、疾病がないことがわかり、Claraの謎はさらに深まる。

●感想

記憶に無いガールフレンドからの別れの告白に現実世界がガラガラと音を立てて崩れて行く、というのは心惹かれる設定です。
また、記憶がないときに真っ先に駆けつけるのが精神科医だったり、脳の病で死ぬと思い込んでからの最初の行為が金に糸目をつけずに高い夕食を注文するところがいかにもフランス人で笑いました。自己憐憫に陥り、死ぬ前にちゃんと後始末をしておこうとして電話、電気、アパートを解約してしまう神経症的なところもそうです。
これ以外にもこの本は「フランス人だなあ」と思う部分が沢山あります。
広告代理店勤務のVirgilが欺瞞を職業として高給取りだということについて友人たちが揶揄しているというのは、日本人や米国人にはちょっと想像できないシチュエーションですが、これもフランス的(パリ的)価値観というものなのでしょう。

こういった、奇妙なシチュエーションとさらに奇妙な反応がこの本の面白さですが、肝心のClaraの謎ときに関してはあまりドタバタの面白い展開がなくて少々がっかりしました。

読後すぐに面白かったのか面白くなかったのか決めかねたので、数日待ってみたのですが、いまだに不明です。たぶん、個人のテイストによりけりでしょう。

●読みやすさ ★★☆☆☆

フランス語の英訳だということをしみじみ感じる文体です。

ストレートに表現すればいいのに、かえって回りくどくしている所が多いので、慣れない人は読みづらく感じるでしょう。

でも短い小説なので、いったん慣れればすぐに読了できます。

●アダルト度 ★★☆☆☆

Virgilの性的妄想がありますが、さほど大したことではありません。

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