SF、ミステリー、冒険が混じった2010年ニューベリー賞受賞作 When You Reach Me

Rebecca Stead
208ページ
Wendy Lamb Books
2009年7月14日発売
児童書(9-12歳)小学校4年生〜中学生対象/SF/ミステリー/冒険

時は1979年、小学校6年生のMirandaは弁護士事務所で働く母とニューヨーク市の小さなアパートで暮らしている。同じ建物に住む少年Salとは幼い 頃から親友だったのに、突然彼はMirandaを無視するようになる。その前後からMirandaの周囲で不思議なことが起こり始める。まずは奇妙 な行動を取るホームレスの老人が出現し、見知らぬ少年からSalが殴られ、アパートの鍵が紛失し、Mirandaあてに未来を予告するメモが届く。 Mirandaの愛読書は60年代に出版されたMadeleine L’Engle著のSFのクラシックA Wrinkle in Timeで、When You Reach Meでは、この本が重要な役割を果たしている。 謎めいた雰囲気だけでなく、親友を失った寂しさや、学校での人間関係の難しさ、ちょっとした初恋の気分、自分自身の欠陥への気付き、などこの年齢に特有の感覚をよく表していている。 軽く読めて、胸が暖かくなる。一応SFだが普通の児童書としても読める。

2010年ニューベリー賞 (Newbery Medal)受賞作

●ここが魅力!

洋書ファンクラブJr. 参加者のMoeさんとディスカッションしたときにも言ったことなのですが、この作品の最大の魅力あ、主人公のMirandaがごく普通の女の子であるということです。正義感溢れるヒロインでもなければ、優れた才能があるわけでもありません。親友のSalから無視されるようになったから、ひとりぼっちが嫌で友達と喧嘩をしたらしい同級生に近づくところや、その子の元親友を敵視するところなどに、読者は好感が持てないかもしれません。けれども、それが普通の子だと思うのです。欠陥があってもそれを悟って、成長してゆく、それをこの年齢の子どもの視点でよく描いていると思います。

全体にちりばめられた謎が読者をぐいぐい引き込んでゆき、最後に「じん」とさせてくれます。

私が子どもの頃とちょっと重なっているので、国は異なるけれども、少しノスタルジックになりました。

●読みやすさ ★★★★☆

簡単でとても読みやすい文章です。
1ページの語数とページ数が少ないので、読了もしやすいと思います。
ただし、タイムトラベルのからくりや全体にちりばめられたヒントなどは、注意を払わないと分からなくなるかもしれませんので、要注意。

●アダルト度 ★☆☆☆☆

ちょっとしたキスシーンはありますが、子どもっぽいものです。

7 thoughts on “SF、ミステリー、冒険が混じった2010年ニューベリー賞受賞作 When You Reach Me

  1. 今多読チャレンジで、Hot, Flat, and CrowdedとFreedomを読んでいるのですが、出かけるときに重くなさそうなこの本を持っていきました。出先で読み始めたのですが、帰宅後読み終えるまで止まりませんでした。
    RoomのときのGoodnight Moonと同様、渡辺さんのおかげで、先にA Wrinkle in Timeも読めていたし、どっぷりと浸って楽しみました。
    Mirandaが他者の中に存在する自分と同じ感情に気付くことで人を前より思いやれるようになるところなど、押し付けがましくないメッセージがそこここにあって、そんなところも好きでした。SF要素の部分も十分楽しめて、大満足です。
    それから私も少しノスタルジックに。
    いつも素敵な紹介、ありがとうございます☆

  2. ちょこさん、
    それにしても長いのばっかり選ばれたんですねえ!
    私は多読チャレンジ期間は、本読む暇がなくて困ってる次第です(;_;)
    Mirandaの成長が、本物っぽくていいですよね。

  3. 面白かったです!SFやファンタジーは、現実的ではないし、自分の身にはおこらないから面白くないと思っていたのですが、”When you reach me”は、もしかしたら私の身の回りにも、ちょっと気をつけてみれば起こっているかもと、わくわくさせられる本でした。スピンオフで他の登場人物からみた視点でも、是非読んでみたいです。

  4. dearaiさん、
    そうなんですよね。何気ない日常に潜んでいる不思議さがとても面白いですよね。
    これをSF/ファンタジーのジャンルに入れるのは、だからちょっと問題があるおうな気もするんです。本来楽しめそうな人をおいやってしまいそうで。
    スピンオフ、良いアイディアですね!読んでみたい

  5. ニューヨークに住むこの微妙な年頃の女の子の会話にまったくついていけませんでした。前半半分ぐらいまでは、読み進めるのも大変で、すぐに眠くなってしまいました。後半の 1/3 ぐらいでようやくちょっと面白くなってきて最後まではそれなりにスピードアップして読めましたが、それでもまさに私が苦手とする英語の典型です。それなりに英語力がある(2001年に受けた TOEIC の点数は、875)と言っても、この手の会話文になるとまるっきしです。なんとかすらすら読めるようになりたいと思う文章なだけに、最後までたどりつくことができました。とは言え、理解度は 30〜40% といったところでしょうか?なんとなくあらすじがわかっているというレベルです。もう少し英語の本を読み慣れたら、またチャレンジしたいと思います。

  6. 本当に深いお話でした。最後までyouとは誰なのかと考え、ひとつひとつのエピソードは非常に日常的で読みやすいのに、ずっと雲をつかむように読まされる。最後に、すべてがつながるところは、やはりニューベリー賞だなと納得させられました。読み返したくなり、やはり2回読んでしまいました。聡明なMarcus, Juliaの肌の色、無くなった靴、あらゆるキーワードが意味があり、本当に深いお話でした。

  7. さとみさま
    本当に複雑で深い児童書ですよね。大人の読者のほうが、ある意味もっと楽しめるかもしれないと思いました。子どものときに読んだ子は、きっと大人になってから「ああ、そういう意味があったのだな」と新たな発見をするかもしれませんね。

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