タフな少年時代を独自のユーモアで語る児童作家ダールの自伝 Boy

Roald Dahl
1984年初版
自伝/ユーモア

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Charlie and the Chocolate Factory、James and the Giant Peach などの児童書で有名な英国の作家Roald Dahlの子供時代を語る自伝。



ノルウェイ出身のダールの両親の逸話からして既に波瀾万丈である。片腕を失ったハンディキャップをものともせずに英国に渡ってビジネスで成功した父と、若くしてシングルマザーになったが逞しく家族を統率した母親の姿がいきいきと描かれている。

彼の幼年時代は男の子らしい冒険心や悪戯に満ちている。そして、彼の作品の登場人物を連想させるような大人たちも多い。
駄菓子屋の恐ろしくも魅惑的なスイーツと、駄菓子屋の主への嫌悪感から生まれた作品をいくつも連想することができる。この当時には珍しく子供の人権を重んじている母親と、幼い子供への体罰を心から楽しむ大人たちへの恨みなどが、彼の作品に影響を与えているようである。

宗教や教育に対する彼の根深い不信感も書かれている。

何も悪いことをしていない小学生の友人に対して、容赦なく杖を打ち付けた(ちょっと叩くだけではなく、正真正銘の暴力である)校長が、後にカンタベリー大主教になったことについて、"have doubts about religion and even about God(宗教のみならず神に対する疑問を抱いた)"と書いている。

これを読んで、私はなぜ彼の作品が好きなのか分かったような気がした。
私が子供の頃に感じた大人の世界の理不尽さへの憤りのようなものを、彼はずっと忘れてはいなかったのだ。だからこそ、スポーツ万能でキャプテンになり、下級生をこきつかったり暴力を振るうことが許される立場になっても、彼はその権利を放棄する。彼が悪戯好きで、規則を守らず、手のかかる生徒だったことは容易に想像できる。だが、それは規則が理にかなっていなかったからに違いない。こういう少年だったからこそ、ダールは全世界の子供の心をつかむ児童作家になれたのだ。

体罰やダールの家族が体験した悲劇についても話は及ぶが、彼の文章は、決してセンチメンタルになることはなく、淡々としたユーモアが際立つ。体罰への怒りですら、それに使われる杖(Cane)のイラストを使って笑いに仕立てている。

これを読めば、ダールの作品を読んだことがない人もきっと手にとってみたくなることだろう。

●読みやすさ 中程度〜やや簡単

簡潔な文章なので、読みやすいと思います。
ダール自身が描いたイラストや写真などビジュアルが多く、さらに読みやすく感じるでしょう。
英国独自の表現があります。

例えば、本書に出てくるPublic Schoolは私立学校のことです。英国では公立学校はstate school と呼びます。ですが、米国ではPublic Schoolは公立学校で、私立はPrivate Schoolです。

●アダルト度

ダールは児童作家として有名なので子供が読むことを想定して書かれています。

けれども大人でも十分楽しめる内容です。大人にとっては、自分の子供時代を懐かしく振り返らせてくれる楽しい本でもあります。

洋書を読むことにまだ慣れていないけれど、「絵本や子供っぽい本は読みたくない」という方にもおすすめです。

●続編

Going Solo
ダールが成人になってからの自伝です。

8 thoughts on “タフな少年時代を独自のユーモアで語る児童作家ダールの自伝 Boy

  1. 初めての児童書です。結構児童書っておもしろいんだ、というのが今回の発見でした。多読チャレンジのおかげでまた読書の世界が広がりました。
    家族の愛情やその時代・社会の子供の心情がユーモラスに描かれていて、心温まる一冊でした。
    この時代・社会では当たり前、といえばそうなのかもしれませんが、大人のひどい仕打ちに心が痛みました・・・。
    ダールの青年時代の冒険が気になるので、多読チャレンジが終わったら続きも読もうと思います!
    次はSuper Sad True Love Storyを読みまーす。
    Room読了。http://watanabeyukari.weblogs.jp/yousho/2010/09/room.html#youshofan

  2. こんにちは。
    ね、児童書ってけっこう面白いでしょう?
    ですから、皆さんに1冊は試していただきたいと思っているのです。
    私も昔「食わず嫌い」なものが沢山ありましたが、後で「もっと読んでおけば良かった」と。
    それにしてもすごい勢いですね!

  3. 5冊目です、読み終えました!
    Charlie and the Chocolate Factoryを既読ですが、彼自身の体験が投影されている部分が多そうで、ファンにとってはそういう楽しみ方もありそうですね。
    読みやすいし、ノルウェーでの夏休みなどはとても楽しく読んだのですが、全体的にユーモアよりも「痛み」が強くて、読み進めるのがつらかったです。私自身が子供時代のつらかったことをまだ克服していないのかも。

  4. 作者のRoald Dahlは、大人になってからでも、子供らしい考え方、物の見方(例えば、駄菓子屋さんでのエピソードの中で、おばあさんの姿ではなく手に注目しているところ。)を上手に書くことができますね。文章が進むに従って、私も自分の子供の頃を思い出しました。素敵な本の紹介、いつもありがとうございます。

  5. Marie_100さん、5冊読了おめでとうございます!
    Roald Dahlの伝記が最近発売されたのですが、どうやらあんまり良い人じゃなかったみたいですね。
    それを夫が語っていると、娘が「やめて、やめて!子供にとってはダールは神様みたいな存在なんだから、イメージが壊れる」と。
    自伝はやはり、フィクションの一種なのかも…

  6. dearaiさん、
    ダールは本当に文章がうまいですよね。ノンフィクションではなく、ややフィクションなのかもしれませんが、文章のうまさだけは否めません。
    本人はあまりlovelyではなかったようですが、それを知っても好きな本です。

  7. ロアルド・ダールとの初めての出会いは、SFやショートショートが好きだった中学生の頃、『あなたに似た人』という短編集でした。
    二十数年後、夫の赴任先の英国で、小学生の子どもの母親だった私は、児童文学作家としてのダール氏に再会、 The Twits, James and the Giant Peach, Charlie and the Chocolate Factory などを読みました。 お気に入りは(本が好きな)Matilda。
    それからまた10年、今度は多読チャレンジで彼の自伝を読むことになろうとは・・・。「このお母さん、すごい!」とか「まったく男の子ってのは・・・」など、同じ著者の本でも中学生の時と息子を持つ母親としてとでは全く違う読み方。
    レプトンって聞いたことあると思ったら英国で住んでいたダービーの近くなのね、6th form って言葉目にするの久しぶり、など、懐かしさも感じながら楽しみました。

  8. ameterumさん、こんにちは。
    実は私も、30年前に英国に行き、最初に触れたのが彼の短編小説でした。ですから、娘を通じて児童書のダールに触れたのも同じです。
    私もMatildaが一番好きですし、ダールのお母さんに「すごい、私にはできない」と思ったのもそっくり(笑)。でも、ダールの少年時代って、他の子よりもっと手に負えなかったような気がします。

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