アップル製品のように魅了しよう。アップルの元祖エヴァンジェリストが明かす秘訣 Enchantment

Guy Kawasaki
ハードカバー: 240ページ
出版社: Portfolio (ペンギングループ) (2011/3/8)
ビジネス/マーケティング

Enchantment-Cover IT分野でよく使われている「エヴァンジェリスト(evangelist)」という肩書きのことをご存知でしょうか?キリスト教の伝道師を意味する言葉ですが、製品について知らない人々を啓蒙し、素晴らしさを人々に伝えて行く職種のことです。 日本でも「エヴァンジェリスト」という肩書きはよく知られるようになっていますが、90年代には米国でもこの肩書きの名刺を渡すと「どういう意味?」という感じでヒップでクールだったものです。最近は少々使い古された印象ですが、それだけ定着したということです。


GuyKawasaki8 このエヴァンジェリストという職種を作り上げて世に広く知らしめたのが、初代アップル社チーフ・エヴァンジェリストのGuy Kawasakiです。Kawasakiが考案したエヴァンジェリストの仕事は、「アップルは外部のソフト会社にマック用のソフト開発を説得する」ことと「アップルブランドの情熱的なユーザー・アドボケイトを生み出す」ことです。キリスト教を広めてゆくように、エヴァンジェリストが情熱的な信者を作り、その信者がさらに多くの人々を改宗させるというコンセプトです。それまでのマーケティングのやり方を根本的に覆す斬新な発想でした。

ハワイ生まれの日系アメリカ人Guy Kawasakiは、スタンフォード大で心理学を学び、UCLAで経営学修士(MBA)を取得しています。ビジネスと心理学が、エヴァンジェリストとしてのKawasakiの基盤になっているわけです(詳しい経歴)。

そのKawasaki氏から最新刊(3月8日発売)の献本をいただきました。
ご覧のように真っ赤なバックグラウンドに折り紙の蝶(ちゃんと名前がついているのです)が印象的な表紙です。このデザイン誕生の逸話はあとがきにありますので、ぜひお読みください。そのものが非常に興味深いと思いました。

http://rcm.amazon.com/e/cm?lt1=_blank&bc1=FFFFFF&IS2=1&npa=1&bg1=FFFFFF&fc1=000000&lc1=0000FF&t=yofaclja-20&o=1&p=8&l=as4&m=amazon&f=ifr&asins=1591843790 http://rcm-jp.amazon.co.jp/e/cm?lt1=_blank&bc1=FFFFFF&IS2=1&npa=1&bg1=FFFFFF&fc1=000000&lc1=0000FF&t=yukariscott-22&o=9&p=8&l=as4&m=amazon&f=ifr&asins=1591843790

 

iPhoneや iPadなど新しいアップル製品が発売されるたびにTwitterはその話題で埋まります。それらは、「ラブコール」に近いアップルファンのメッセージと、それらに対する「アップルはカルトだ」といった揶揄や批判です。マイクロソフト製品はこれほどの愛憎をかきたてません。そこがアップルの魔力ではなないかと思います。

Kawasakiは、そのアップルの魔力のことをEnchantmentと呼びます。まるで魔法をかけたかのように相手を魅了するテクニックを身につければ、読者自身がアップルに、あるいはアップルのような会社や製品を生み出すことができるというわけです。

Enchantmentのために必要なテクニックを、ひとつひとつ丁寧に解説している内容で、やろうと思えばたやすく実行に移せるものばかりです。他人を魅了しようと思ったら、好感が抱け、しかも信頼できる人になる必要があります。「そんなの常識じゃないか」と言う人もいるかもしれません。でも、それを実行しているかどうか胸に手をあてて自問すると、できていないことが多いのではないでしょうか?だからこそ、Kawasakiが恐ろしく丁寧に挙げている項目をチェックしてみることは無駄ではありません。

また、部下や上司との人間関係に悩む社員に役立つのがChapter 10: How to Enchant Your Employees Chapter や11: How to Enchant Your Bossです。

内輪のことで申し訳ないのですが、夫の著作Marketing Lessons from the Grateful Dead(今年中に邦訳版が出版されますので、どうぞお楽しみに)の素晴らしさについても言及されています。

日本語でEnchantmentを説明しているところが、日本人としてはとても嬉しいところでした。昔の日本の文化を今でも誇りに思い基盤にしている日系人から現代の日本人が学ぶことは多いのではないかと思います。

せっかくですから、ガイ・カワサキ氏にいくつか質問をしてみました。

 

Yukari: I enjoyed reading Enchantment. The story about “Kawasaki Swallowtail” is interesting, too!
Enchantmentを楽しく拝読させていただきました。「カワサキ・スワローテイル」の逸話も興味深かったです!

Guy: Thanks! Glad that you like it!
ありがとう!気に入ってくれてよかった

Yukari: You introduced some Japanese phrases in this book (e.g. “Think Japanese” part). And philosophy in “Enchant All the Influencers “ is sort of “nemawashi”. Did you learn these Japanese wisdom from your parents?
本書の中(例えば”Think Japanese”の部分)で日本語のフレーズを紹介されていますし、 “Enchant All the Influencers “に書かれている哲学は「根回し」のような感じですよね。これらの日本の知恵はご両親から学ばれたのですか?

Guy: I am sansei (third-generation) Japanese-American, so the Japanese wisdom is pretty diluted by now. Honestly, and ironically, I garnered most of this wisdom from a good round-eyed white guy name Garr Reynolds. Garr used to work for Apple Japan, and now he's a presentation expert who still lives in Japan. The lesson is, "Gather knowledge wherever you can."
ぼくは日系三世なので、日本の知恵はもう既にけっこう薄れてしまっているんです。正直言いますと、皮肉なことでもあるのですが、これらの英知の殆どは Garr Reynoldsという純粋無垢な白人男性から戴いたものなんです。Garrはかつてアップルジャパンに勤務していて、現在もプレゼンテーション専門家として日本に住んでいます。教訓は、「収集できる知識はどこからでも得よ」ということです。

Yukari: I've been feeling these “Japanese thinking” you mentioned in your book are becoming foreign to the young generation in Japan. I often think Japanese Americans preserve Japanese philosophy and value a lot better than we do in Japan. What do you think about it?
あなたが著作の中で語っている「日本的な考え方」が現在の日本の若い世代にはforeign(異質と外国的という二重の意味)になっているのではないかと感じています。日系アメリカ人のほうが、日本に住んでいる日本人よりも日本の哲学や価値観を維持しているのではないかと思うのですが、どう思われますか?

Guy: This is hard to say. I don't know much about Japan–I've only been there a few times and not recently. I do love all the Japanese zen, bushido, enryo, honor, minimalism, and sacrifice values, though. I find them not only effective, but also enchanting. Truly, enchantment is a  basic human quality that knows no cultural boundaries.
これは難しいですね。僕は日本のことはそんなに知らないのです。数回しか訪問したことがありませんし、最近は行っていません。でも、日本の禅、武士道、遠慮、高潔さ、ミニマリズム、犠牲精神、などはとても好きです。効果的なだけでなく、enchanting(本のタイトル/魅力的)だと思うのです。まさにenchantmentは文化による境界がない人間の本質なのです。

Yukari: The Japanese economy is currently struggling. The young generation seems to have accepted the defeat. Do you have any advice for them?
日本経済は現在低迷しており、若い世代は敗北を受け入れてしまっているように見えます。何かアドバイスはありますか?

Guy: One is only defeated if you accept defeat. Until you accept defeat, you have not yet lost.
敗北を受け入れたときに初めて負けたことになる。敗北を受け入れるまでは、まだ負けていないのです。

 

本書の内容をイラストで表したインフォグラフィックも参考になるかと思います。

 
 ●読みやすさ 読みやすい

非常に分かりやすい英語で、簡潔に書かれています。
英語にあまり慣れていない方でも読みやすく感じるでしょう。さすが元祖エヴァンジェリストです。

●関連するテーマのマーケティング本

Marketing Lessons from the Grateful Dead
本書にも登場します。

Poke the Box (献本をいただきましたので、近日中にレビューします)

4 thoughts on “アップル製品のように魅了しよう。アップルの元祖エヴァンジェリストが明かす秘訣 Enchantment

  1. これは面白そうですね! 早く読んでみたいです。
    新刊のビジネス書をたくさん読んでみたいと思っているのですが、正直なところ、どの本がいいのか分からないので、良さそうなビジネス書をタイムリーに紹介していただいて非常に助かります。これからも、よろしくお願いいたします!

  2. Tomoyukiさん、
    これは、軽く読めて、「うんうん、わかる、わかる」って感じの本です。要約してしまうと、「好感が抱けて、信頼できる人、というイメージを持ってもらうと仕事がどんどんしやすくなる」ってことなんですよね。でも、忘れていることを思い出させてくれる、という点で、私にも役立ちました。

  3. こんにちは。
    日本のアマゾンは相当遅れがあるようですね。
    紀伊国屋で購入できて良かったです。
    マーケティングの本は、Kawasaki氏のものだけでなく、Seth Godinのものとか、全般的に仕事以外にも仕えることができますよね!

Leave a Reply