ウォール街のヘッジファンド業界を舞台にした金融スリラー The Gods of Greenwich

Norb Vonnegut
ハードカバー: 336ページ
出版社: Minotaur Books
(2011/4/26刊行)
金融スリラー

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Jimmy Cusackは、ウォール街でマネー・マネジャー(機関や個人の証券ポートフォリオを管理・運用する専門家)の小さな会社を運営していたが、妻の父親が資金をすべて引き出してしまったために倒産して会社を閉じる。収入がないと母親が借りている車や自宅のコンドを失うという絶体絶命の状況に追い込まれたJimmyは、コネチカット州グリニッジの有名なヘッジファンド会社Leeser CapitalのCy Leeserからの職のオファーに喜んで応じる。


しかし、Cy LeeserがJimmyを雇ったのは彼の腕を見込んだからではなく、Leeserが固く守るヘッジの秘密が絡んでいた。

アイスランドの銀行、美人の殺し屋、元ベストセラーロマンス作家のLeeserの妻との関係、などサブプロットも面白く、スピーディーな金融スリラー。

●ここが魅力!

カート・ボネガットの遠い親戚にあたるNorb Vonnegutは、金融界でプロとして働いてきたインサイダーです。そういうわけもあって、この金融スリラーが扱っているヘッジファンド業界の内情が実に生々しく伝わってきます。

2008年は、2007年から始まったサブライムローン問題で住宅価格が下落し、それを皮切りに他分野の資産価格が暴落してリーマンブラザーズが破綻し、次々と世界的な金融危機に連鎖した「リーマンショック」の年でした。この本は、その当時のウォール街のざわざわした雰囲気とパニックを、内部から描いているのが面白いところです。ヘッジファンドのテクニックでよく使われるショート(株式の売り持ち)がけっこう重要な部分で、それも、素人に分かりやすく書かれています。

本のタイトルにもなっているコネチカット州グリニッジは、16年前に香港から米国に移住(夫にとっては帰国)したときに私たち家族が住むことを検討した町です。買うかどうか迷った家もあります。夫の弟も、ヘッジファンドではなくM&A(合併と買収)が専門ですが、金融業に属してグリニッジに住んでいます。招待されないと会員になれない(その招待されるまでのコネ作りの過程は、お受験戦争に似た壮絶さ)というおとろしい「the Greenwich Country Club」にも属していて、「庶民」の私たち家族もときおり食事に招待してもらっています。私と娘の趣味は、そこでピープルウォッチングをすることです。ちなみに、そのクラブでアジア人の会員は、私の義妹だけみたいです(今は知らないけれど)。

今振り返ると、ほんとうにグリニッジに住まなくて良かったと思います。私のような「庶民」が住むと、友だちができないだろうし、人生が嫌になるかもしれない町ですから。

それらのような事情で、個人的にはゴシップ本のように面白く読めました。

哲学的に優れた本ではありませんが、スピーディーで、クレバーな金融スリラーです。こういう本にありがちな文章の稚拙さも目立たず、優れた娯楽作品だと思います。

●読みやすさ 中程度〜やや簡単

金融関係の用語(ショートなど)が出てきますが、素人を対象に書かれた本なので専門的な知識がなくてもだいたい何のことかは想像できると思います。分からない場合にはネットで専門用語の解説などを探して読むことをおすすめします。
文章は簡潔で、わかりやすいと思います。スピーディーな展開なので、すぐに引き込まれ、読みやすく感じると思います。

●対象となる年齢

ちょっと性的なシーンや殺人シーンはありますが、過激な暴力や性的表現はありません。中学生以上(ただし、中学生は読んでも面白くないかも)。

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