電子書籍に関する話題や、それらに対する疑問は沢山ありますが、その中でも特に呆れるのが、「電子書籍により、将来は紙媒体の本が消える」という説です。実際に電子書籍リーダーが沢山現れたのに売れない日本では、そういった意見は少なくなっているようですが。
大原ケイさんが「ルポ 電子書籍大国アメリカ 」に書いておられるように、アメリカの出版社は、オーディオブックなど多くのフォーマットで読者の需要に対応してきました。電子書籍は、その多様なフォーマットのひとつでしかないのです。読者の需要に応えるフットワークの良さではアマゾンが際立ちます。それについては、「なぜアマゾンはひとり勝ちするのか」をお読みください。
私は初代キンドルのときから電子書籍ファンでしたが、紙媒体の本が消えると思ったことはありません。たとえば「木を切り倒して紙を作ることが敵視されるようになる」といった予想外の理由が発生しない限り、少なくとも今後20〜30年ほどは、米国では紙媒体が依然として主流であり続けると思っています。iPad発売初日の予想は当たっていましたし、この予言もたぶん当たると思います。
以前から何度も言っているように、電子書籍の利点は、「どこにいても、読みたいときに、即座に買って読み始められる(から衝動買いしやすい)」「紙より安い(から衝動買いしやすい)」「出張や旅行に何冊も持って行ける(から衝動買いしやすい)」「表紙を他人に見られずにすむ(からロマンスブックやゴシップ本が売れる)」などであり、もともと読書好きだった人がこれまでより多く買うことを促すものです。また、電子書籍になったからといって、奇跡的に新たな読者が増えるわけではないのです。
「電子書籍が紙の本を殺さない」ということを具体的に表す数字を求めていたのですが、アマゾンは秘密主義で数字を明かしません。けれども、「詳細を明かさない」ことを条件に、とあるベストセラー(ビジネス書)の販売うちわけを入手しました。
それによると、紙媒体が約85%、キンドルが12〜15%、バーンズ&ノーブルのNookがキンドルの10分の1程度だということです。また、アップルのiBooksの数字はさらに極秘ですが、あまり売れてはいないようです。ここに含まれていない数字に、オーディオブックがあり、これも無視できない売れ筋だということです。
文芸書やロマンスブックだとまた異なる割合になると思いますが、上記の数字を見る限り、私の予想は間違っていないと思います。
正しく、共存し本の文化を拡大させますね!
電子書籍がどんどん充実していっても、紙の本はなくなりはしない。これからも共存していくだろう。
興味深い記事。トータルのパイの大きさの変化が気になるなぁ。トータルとして書籍の売り上げが増えていれば、電子書籍に依るシナジー効果とも言えるのだろうが。そうでないなら書店にとっては脅威に変わりない。
Matsuiさま、Urin0729さま、
コメントありがとうございます。
私もちゃんと共存できると思っています。
実際、わが家でも共存してます。夫もキンドルを持っているのですが、好みが違うのでアカウントを共有していません。なのに、たまに良い本があると、電子書籍2つ、そして紙の本、と一家で同じ本を3冊買ったりすることも(笑)
Hirofumidさま、
実際にはトータルのパイは大きくなっているのですが、その数字がすぐにみつからないので、また別の機会に。
電子書籍を持っている人が以前よりも本を読むようになった、という記事はこちらです。
http://watanabeyukari.weblogs.jp/youshonews/2010/09/ebookreader-habit.html
>たとえば「木を切り倒して紙を作ることが敵視されるようになる」といった予想外の理由
え、これって予想外の理由でしょうか。
森林保護・自然保護はむしろペーパーレスの主たる目的と思いますが如何でしょうか。
森林保護の目的であれば、本を敵視する前にやることはいっぱいあると思います。
それなのに、本をまずターゲットにするとしたら、そんな社会は愚かすぎます。だから私にとっては「予想外」と書いたのです。言葉が足りなかったのであれば、申し訳ありませんが、文の前後でご理解いただけると思いました。
非常に参考になる記事でした。
ありがとうございます。
興味深く読ませていただきました。
電子書籍のユーザーは「新しいもの好き」と「ディープな本好き」のふたつのレイヤーで認識しています。