今年のアガサ賞受賞作は、ボストンのベテラン犯罪レポーターが描くミステリ『The Wrong Girl』

著者:Hank Phillippi Ryan

ハードカバー: 366ページ(2014年7月にマスマーケット版発売予定)

出版社: Forge

ISBN-10: 0765332582

発売日: 2013/9/10

適正年齢:PG13(中学校高学年以上。性的関係についての言及はあるが、シーンはキスまで)

難易度:上級(文章そのものは難しくないが、プロットが複雑なので、ミステリを読み慣れていないと難しい)

ジャンル:ミステリ/犯罪小説

キーワード:犯罪レポーター、ボストン、養子縁組エージェンシー、ロマンス

シリーズ:Jane Rylandシリーズ #2(#1は、The Other Woman

賞:2014年アガサ賞受賞作

 

Jane Rylandは、ボストンのニュース番組での売れっ子犯罪レポーターだったが、シリーズ#1のThe Other Womanで情報提供者をかばい切ったために解雇され、地元ボストンの新聞社The Registerの記者になった。前回の犯罪調査で知り合ったボストン警察の刑事Jake Broganとは、友人以上で恋人未満の関係だが、記者と刑事との恋愛はタブーである。バレたら、どちらも職を失う。


仕事と恋愛のどちらでも悩み多いJaneのところに、元同僚のTuckerが押しかけて相談を持ちかけた。幼いときに現在の両親に引き取られたTuckerはようやく「産みの母」に巡り会ったのだが、それが間違っていたことが判明したというのだ。Tuckerと「本物の母」を引きあわせたのは、ボストンでも有名な養子縁組エージェンシーだった。

いっぽう、Jakeは若い女性の殺人事件の調査に関わっていた。現場に残されていたのはまだ言葉がきちんと話せない2人の幼児で、女性の身元も子どもたちとの関係も不明だった。Jakeが気になったのは、現場にあった空っぽのベビーベッドだった。赤ん坊がいたとしたら、どこに行ってしまったのか?

養子縁組エージェンシーの謎と殺人事件の調査に乗り出したJaneは、脅迫の電話を受けとる。そのうえ、アパートに何者かが侵入し、謎の車に追われるようになる。

 

著者のHank Phillippi Ryanは、1970年代には政治レポーターだったのだが、1983年にボストンの「チャンネル7ニュース」(NBC系)に転職し、1989からは犯罪調査を専門にしている。エミー賞を28回も受賞しているベテランで、ボストン界隈の犯罪や警察の内情をよく把握しているのは間違いない。そのRyanが犯罪小説を書き始めたのは2009年のことである。最初はハーレクイン社のMIRA部門(MIRAから出版されるものは、恋愛の要素はあってもロマンス小説ではない)からCharlotte "Charlie" McNallyのシリーズを出版し、始めての作品がアガサ賞の新人賞を受賞した。

Macmillan系のForge社に移籍してからは、新しいヒロインJane Rylandを使った新シリーズになり、その2作め『The Wrong Girl』が2014年のアガサ賞(長編小説部門)を受賞した。

今年のBEAで著者Ryanに会う機会があったので、ちょっとご挨拶してきた。

「よく『Help Me Hank』(視聴者が直面している難関を調査して援助するというコーナー)を観てました。アガサ賞受賞おめでとうございます!そして、小説でも成功されて素晴らしいですね。おめでとうございます」と言うと、「ほんとにビックリよね!信じられないくらい嬉しい!(I know! Can you believe that?)」と興奮した様子だった。テレビで活躍していることと、創作で認められることは、また異なる喜びのようだった。

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新作のARCを手にするHank Phillippi Ryanさん

 

今回の『The Wrong Girl』は登場人物も多く、いくつかのサブプロットが絡んでおり、混乱しやすいかもしれない。なので、シリーズ最初の『The Other Woman』か、アガサ賞の新人賞を取った『Prime Time』から始めてみてはどうだろうか?(新刊のTruth Be Toldは、後日レビューの予定)

Jane Rylandシリーズ #1

 

Charlotte McNallyシリーズ #1

 

 

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