ビジネスをしていない人でも発想の転換に役立つ今年話題の実用書 Zero to One

著者:Peter Thiel(ライターはBlake Masters)
ハードカバー: 224ページ
出版社: Virgin Books
ISBN-10: 0753555182
発売日: 2014/9/18
適正年齡:PG12(仕事や将来に興味を持っている成熟した中学生ならおおいにどうぞ)
難易度:中級(ストレートなので日本の学校で英語を学んだ人には読みやすいタイプの文章)
ジャンル:ビジネス書/実用書
キーワード:起業、スタートアップ、投資、PayPalPalantir、Facebook

 

今年アメリカで非常に話題になったビジネス書である。著者は、PayPalPalantirの共同創始者で、Facebookの初期投資者になったPeter Thiel(文章はプロのライターであるBlake Masters)だ。
Thielは、これまでも他人とは異なる大胆な意見を述べることで知られていた。この本には、そういった彼の言動の背景にある思考回路がしっかりと書かれている。

日本でもNHK出版から邦訳版が刊行されており、すでに多くの方が書評や解説を書いておられるので詳しい内容はそれらを探していただくことにして、私はこの本で最も重要なポイントだけを伝えておこうと思う。


それは、タイトルそのものである。
本当に重要なInnovation(革新的な発想やその実現)は、これまで存在しなかったもの、つまり無から生まれるのである。これまであったものを改善したり変更したりするのではないのだ。

スタートアップで成功した者は、宝くじに当たるように偶然成功したのではない。どういった物を作り上げたいのか明瞭なビジョンを持つだけでなく、そこに達成する具体的な計画が立てることができたのである。

通常のビジネス書は、ハウツー本である。多くは、著者自身のたったひとつの成功事例を元に「こうすればいい」と書いてある。だが、拙著『どうせなら、楽しく生きよう』でも触れたように、一人の人がやってうまくやったことが萬人に通用するわけではない。また、ミック・ジャガーがどんなに素晴らしくても、世界にミック・ジャガーはひとりしかいらない。モノマネは、モノマネとしての価値しかないのだ。

私の周囲には、「これまでなかったこと」をやり遂げた起業家が沢山いる。だから、Peter Thielの書いていることはcontroversial(物議を醸し出す、論争を呼ぶ)とは感じなかった。とても実用的で納得できる意見だ。

そして、第六絶滅期が逃れられないものになりつつある現在、これまでになかったテクノロジーを生み出し、人々の行動を根こそぎ変えてくれる人が現れてくれるのを私自身も心から願っている。

非常に論理的だし、納得できることは多いが、「逆もまた真なり」という部分もしばしばある。それは本人もたぶん承知しているだろうし、投資家としてはケース・バイ・ケースでやってきたのではないかと思う。

本書はビジネス書だけれども、将来を考え始めている若者や、日本で子育てをしている親にもお薦めしたい。大きな発想転換になるだろう。

 

 

 

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