語り手の姿が移り変わる心理スリラー The Girl on the Train

著者:Paula Hawkins
ハードカバー: 336ページ
出版社: Riverhead Books
ISBN-10: 1594633665
発売日: 2015/1/13
適正年齢:PG15
難易度:上級レベル(入り込みやすく、理解しやすい文章なので、洋書を読み慣れている人には簡単)
ジャンル:心理スリラー
キーワード:unreliable narrator(信頼出来ない語り手)、アルコール依存症、ドメスティックバイオレンス(DV)、殺人

Rachelは、毎日同じ時間にロンドン行きの通勤列車に乗る。そのルートで、一旦停車をする場所に閑静な住宅地がある。その中の一軒に住んでいる若い夫婦の睦まじい姿を眺めるのがRachelの唯一の楽しみだ。Rachelは夫婦にJessとJasonという名前を勝手につけ、その二人の素敵な生活を夢想する。


RachelもかつてはJessやJasonのように素晴らしい結婚生活を送っていたのだ。でも、今のRachelはただのアル中だ。

ある日、Rachelはショッキングなシーンを目撃する。黙っていられなくて警察に行って報告するが、Rachelの「事情」と「嘘」を知った警察は彼女のことを信用しない。関わらないように忠告されるが、それでもRachelは関わらずにはいられない。

 

この心理スリラーの優れたところは、「unreliable narrator(信頼出来ない語り手)」であるRachelが読者をすっかり騙すところだ。最初と最後では、それぞれの登場人物の見方がすっかり変わってしまうのが面白い。

私と夫が偶然別々に購入して同時に読んでいた作品で、どちらも「面白かった」と思った。だから、男性にも女性にも自信を持ってお薦めできる。

3 thoughts on “語り手の姿が移り変わる心理スリラー The Girl on the Train

  1. 渡辺さんの書評を読んで「この本、絶対読みたい!」と思っていたのですが、さすがに大人気で、図書館でやっと出会えたのが4日前でした。本当におもしろくて、読み出したらなかなかやめられませんでした。ラストでは「警察ってこんなにあっさり納得するものなの?」と思ったりもしましたが、とにかくAnnaが怖かったです(笑)。10月には映画が公開されるそうで、予告編を見ました。Rachelは本からイメージしたよりも美しすぎるような気がしましたが、映画も見てみたいと思いました。

    1. 映画が原作に忠実に作られてはいないけれどおもしろい、というパターンが私は好きです。Jodi Picoult の『My Sister’s Keeper』は先に映画を観てボロボロ泣いたのですが、小説を読んだ時は感傷的になるよりも考え込んでしまったし、映画とは全然違う結末に愕然としました。David Mitchell の『Cloud Atlas』を読んだ時には映画化は無理なのではないかと思ったのですが、映画は構成を大幅に変えて、原作とは違うつながりを作って楽しませてくれました。『The Girl on the Train』も、こういう一粒で二度おいしい思いをさせてくれるといいのですが。

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