ナチス・ドイツ占領下のフランスを舞台にしたセンチメンタルなベストセラー The Nightingale

著者:Kristin Hannah
ハードカバー: 440ページ
出版社: St Martins Pr
ISBN-10: 0312577222
発売日: 2015/2/3
適正年齢:PG15(性的な場面、残酷な場面あり)
難易度:上級レベル(長いので読了はしにくいかもしれないが、文章そのものはわかりやすい)
ジャンル:歴史小説/女性小説
キーワード:第二次世界大戦、ナチス・ドイツ侵略、フランス、レジスタンス運動、スパイ、ラブストーリー

1995年、アメリカ・オレゴン州の老人ホームに入居している老いた女性が故郷のフランスでの出来事を回想する物語。

1940年、父親のせいで仲違いになっていたViannとIsabelの姉妹は、ナチス・ドイツのフランス侵略を機に小さな農村で同居を始める。夫の従軍中に一人娘を守ることを第一義にするViannを、Isabelは敵に降伏する臆病者とみなしている。家族の安全も考えずに思ったことを口にする反抗的なIsabelとViannの仲は緊張を帯びたものになる。そして、Isabelは姉の元を離れてレジスタンス運動に加わる。

怖いもの知らずのIsabelは、レジスタンス運動の中でも特に危険なミッションを引き受ける。それは、不時着した同盟軍のパイロットをピレネ山脈越しにスペインに脱出させるというものだった。Isabelのコードネーム「Nightingale」は次第に有名になり、ナチス・ドイツから狙われるようになった。

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アメリカでは2月に発売されてすぐにベストセラーになり、現在(4/23)4000近いアマゾンの読者評価の88%が5つ星という作品である。

Kristin Hannahはアメリカでは有名なベストセラー作家なのだが、なぜか私はこれまで手に取る気になれなかった。たぶん「アメリカ人女性が好きな女性小説作家」というイメージが強かったからだと思う(このサブジャンルには苦手な本が多いから)。でも、今回はナチス・ドイツ占領下のフランスが舞台ということで興味を抱いた。しかも、こんなに読者評価が高いのだ。期待せずにはいられない。

だが、読み始めてすぐに違和感を覚えた。

最初に違和感を覚えても、読み進めるうちに良くなってくることはある。そこで、我慢して読み続けた。

けれども、違和感は減るどころか、だんだん「もう読むのやめようかな?」のレベルに膨らんできた。一応最後まで読んだけれど、なぜこれほど読者評価が高いのかまったく理解できなかった。

あまり悪いレビューを書くのも気がひけるし、せっかく読んだけれどそのまま放置していた。

そうしていたところ、「これを読まずして年は越せないで賞」の審査員である春巻まや さんが先日こんなツイートをしたのである。

@harumaki_r ツイート春巻さんとしばし意見交換し、「ベストセラーだから興味を抱く人がいるだろうし、やはり思ったことは正直に書いておこう」と思い直した。

たしかにページ・ターナーである。でも、こんなにシリアスなテーマを扱うにしてはメロドラマ的すぎて、現実味がない。Isabelのキャラクターは現代女性的すぎるし、危険に対する腹の座り方とか「勇敢さ」がまるでYAファンタジーの主人公だ。本当にその場にいたら、どんなに勇気がある人でももっと真剣に怖いはずだ。また、この時代のフランス人の描き方もちょっと違うんじゃないかと思うことが多かった。

それと、春巻さんもツイッターで語っていたが、詰め込みすぎで、メロドラマ的な展開が予定調和的すぎる。「泣かせますよ!」という意気込みが見えてしまって、悲劇的なシーンで私はかえって泣けなかった。

でも、それは私と春巻さんが読者として適していなかったということもある。(このテーマの作品を読みすぎている?)

そこで、このテーマでシリアスな作品をお求めの方には、All the Light We Cannot See や Those Who Save UsThe Book Thiefなどをお薦めしたい。

けれども、これらの作品は洋書を読み慣れていないとわかりにくいところもある。
するすると読めるページ・ターナーで泣ける人生ドラマを探している方は、ぜひThe Nightingaleをお試しあれ。

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