夫婦の異なる視点で真実がジワジワ浮かび上がる、ミステリとしても楽しめる文芸小説 Fates and Furies

著者:Lauren Groff
ハードカバー: 400ページ
出版社: Riverhead Books
ISBN-10: 1594634475
発売日: 2015/9/15
適正年齢:PG15(高校生以上。性的コンテンツあり)
難易度:超上級(時間が前後に飛ぶ。ネイティブには難しくないが、読み慣れている必要あり)
ジャンル:文芸小説
キーワード:夫婦関係、妻と夫の視点、過去、秘密、復讐、贖罪、ミステリ

裕福な家庭の一人息子Lottoは、大学でシェークスピアを演じ、手当たり次第に女子学生と肉体関係を持つくせに誰とも継続的に付き合わず、それなのに皆から愛さる太陽のような存在だった。そのLottoが初めて恋におちたのが、モデルのように美しいMathildeだった。「どうせ長続きしないだろう」という友人たちの予想に反し、Lottoは22歳の若さでMathildeと結婚し、妻以外の女に手を触れようとはしなかった。

LottoとMathildeの小さなアパートは、それからも毎年友人たちが集まる集いの場になった。いつまでもゴージャズなカップルだったが、その背後では葛藤が繰り広げられていた。プロの俳優をめざすLottoは長身すぎて役が得られず、Mathildeを嫁として認めない母親は資金援助を拒んでいた。鬱状態になっていたLottoを支え、彼の隠れた才能を見出し、陰で成功に導いたのはMathildeだった。そんな妻のことをLottoは自分にはもったいない存在だと思い、いつ見捨てられるのかとビクビクしていた。

だが、Mathildeは夫が思い込んでいるような女性ではなかった。そして、それを知るLottoの長年の親友は、Mathildeへの復讐の機会を何十年も狙い続けていた。

物事には必ず2つの視点がある。著者Lauren Groffは、人々が羨むような夫婦の24年にわたる結婚生活を夫と妻の視点で別々に語り、人間の愛の複雑さを描いている。

登場人物が最初の印象からどんどん変わっていく部分とミステリ的な要素からGillian FlynnのGone Girlと比べる人もいるようだが、Fates and Furiesはもっと文芸的である。静謐でリリカルな文章なだけでなく、人間関係の複雑さについても深く分析しているのが見える。作者が若いためか後半のMathildeにいまひとつ説得力が欠けていたのが残念だったが、読者によってはこれで納得できるのかもしれない。

図書館司書をしている元義妹に薦められてARCを入手したのだが、読んでみて、9月に発売されたら注目されるのは間違いない作品だと思った。

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