トランプがはじめた21世紀の南北戦争: アメリカ大統領選2016

予備選の初期から、オンラインマガジンCakesの「アメリカ大統領戦、やじうま観戦記!」という連載で大統領選挙をわかりやすく解説し、ニューズウィーク日本語版では「【2016米大統領選】最新現地リポート」という形で、最新情報のコラムを書いてきました。

それらを読んで、(なんと7月の時点で)「アメリカで起こっていることの本質について、ぜひ1冊お書きいただきたい」と声をかけてくださったのが、晶文社の編集者の足立恵美さんでした。
「イギリスの離脱派を非難したり、トランプ氏をけなしても、あまり意味のないことだと思います。どうしてそのようなことが起こるのか、その本質のところが知りたい」
そんな足立さんの言葉に強く共感を覚え、書かせていただいたのが本書です。

いつの時代も、人々はなにかしら不平や不満を抱いているものです。(戦争や経済不況などの深刻な理由が背後にあることは多いけれど、深刻な状況でなくても不満を持つのが人間の性)。そんな人たちに「変化」を約束する「インサージェント候補」は、常にある一定の人々を魅了します。1992年のビル・クリントンと2008年のバラク・オバマもインサージェント候補でした。

2016年の大統領選挙では、民主党のバーニー・サンダースと共和党のドナルド・トランプがインサージェント候補でした。しかも、両候補とも、予備選に出馬するまでは党に属していない「よそ者」でした。それは、プロの政治家に飽き飽きしていたアメリカ国民にとって非常に魅力的だったのです。

2008年にインサージェント候補のオバマがモチベーションとして使ったのは「希望」でした。けれども、サンダースとトランプが集めたエネルギーは「怒り」でした。「アメリカの現状は徹底的に悪い」、「自分たちの幸福を搾取している悪者がわれわれの中にいる」という内容のメッセージは、多様性を尊重してきたアメリカを敵味方に分け、分断しました。

熱狂的なファンに近い支持者を集めた「よそ者候補」の二人は、民主党と共和党の二大政党を根底から揺り動かし、深い傷を負わせました。

アメリカの大統領選にはどのような意味があるのか、この選挙で何が起こったのか、そして、大統領選の結果から未来はどう変わるのか、じっくりとお読みいただければうれしいです。

 

※ タイトルに「南北戦争」を使った理由については、下記のコラムをお読みください。

トランプが火をつけた21世紀の南北戦争 (日経ビジネスONLINE)