学校で孤立しがちな「変わり者」への優しい視線を感じる小学校高学年から中学生向けの小説 The Miscalculations of Lightning Girl

著者:Stacy McNulty
ハードカバー:304ページ
出版社: Random House Books for Young Readers (May 1, 2018)
ISBN-10: 1524767573
適正年齢:小学校高学年から中学生
Lexile Measure: 0530
発売日:2018年5月1日
ジャンル:児童書(ミドルグレード/小学校高学年から中学生)
テーマ/キーワード:天才、強迫性障害、ホームスクーリング、学校での孤立、いじめ、仲間はずれ、友情
2018年 これを読まずして年は越せないで賞候補

両親が亡くなって祖母に育てられているルーシーは、幼いときに雷に打たれたときから数学の天才的な能力を得た。けれども、同時に強迫性障害(OCD)にもなってしまった。小学校に溶け込めないために自宅で学習する「ホームスクーリング」をし、12歳で高校卒業レベルの学力があることを証明するテストに合格した。大学に進学してそこで心ゆくまで数学を勉強するつもりだったのに、祖母から中学校に編入するよう命じられた。大学に行く前に、自分と同じ年齢の子供と友達になって楽しむべきだと祖母は考えているのだが、ルーシーにとっては考えるだけで苦痛でしかない。

OCDのリチュアルで机やロッカーなど手が触れる物すべてを消毒しなければならず、着席するときには座って立つのを2回繰り返さなければならないルーシーを、クラスの女王的な少女はすぐに馬鹿にしてイジメのターゲットにする。

ルーシーは、中学校で生き延びるために天才であることを隠して「ふつうの子」のフリをすることを決意する。簡単すぎる数学のテストでも満点を取らないよう注意深くミスを取り入れようとするが、それに失敗してカンニングの疑いをかけられたりする。

細かい戦略を作って中学生活に挑んだルーシーだが、その戦略の計算ミスで、同じく「人気者グループ」から仲間はずれにされている2人の同級生と一緒に社会貢献プロジェクトをすることになる。言い争ったり、仲違いをしたりしながらも、プロジェクトを通じて3人は互いのことを思いやる友情を育てていく……。

同年齢層の友情をテーマにした「ニューベリー賞」受賞のHello, Universeよりもずっと登場人物にリアルさがあり、感情移入できる児童書だった。

同級生だけでなく数学教師より数学ができることを必死で隠さなければならないルーシーの心境は、日本人であっても、数学の天才でなくても、学校で浮いてしまう子には痛いほど理解できるだろう。私も、同級生に溶け込めずに辛かったことがある小学校、中学校時代のことを思い出して、「ちょっと外れた」友達がいたことに感謝した。

アメリカでもレーダーから漏れているようだが、読者の評価はとても高い。多くの人に読んでほしいので、「2018年のこれを読まずして年は越せないで賞」に推薦した。

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