中古のスクールバスでロードトリップをする父と娘。悲劇からの回復を心優しく語る児童書 The Remarkable Journey of Coyote Sunrise

作者:Dan Gemeinhart
ハードカバー: 344ページ
出版社: Henry Holt Books for Young Readers
ISBN-10: 1250196701
ISBN-13: 978-1250196705
発売日: 2019/1/8
適正年齢:PG(小学校4年生から中学生)
Lexile 指数: 730
難易度:初級から中級
ジャンル:児童書
キーワード/テーマ:心の傷、親子関係、友情
2019年 これを読まずして年は越せないで賞 候補

コヨーテ(Coyote)という名前の少女は、父のロデオ(Rodeo)と一緒に、中古のスクールバスを改造したキャンピングカーでアメリカ中を旅している。

コヨーテは父親を愛しているし、父が世界で一番大切にしているのもコヨーテだとわかっている。けれども、常に移動しているコヨーテは友達を作ることができない。ロデオと2人きりのロードトリップを5年続けたコヨーテの孤独はだんだん耐えられないものになっていた。

ロデオがコヨーテに禁じていることは他にもあった。それは、携帯電話、祖母が住む故郷に戻ること、過去について語ること。そして、ロデオを「お父さん」と呼ぶことだ。

その規則が生まれたのは、5年前にコヨーテの母と姉と妹が交通事故で死んだときだ。悲しみに打ちひしがれた父は、事故を起こした会社が払った示談金と家を売り払った金で中古のスクールバスを買って改造し、「過去をふり返らない。前進するのみ」と生き残った娘を連れてロードトリップを始めた。そのときに父は「ロデオ」と名前を変え、娘に「コヨーテ」という名前をつけた。コヨーテには、自分の本当の名前を使うことも、父を「ダディ(お父さん)」と呼ぶことも、死んだ母や姉や妹のことを語るのも許されていない。

賢いコヨーテは、父の心が悲しみで壊れていることを知っている。だから、彼の規則を守りつつ、自分がなにかをやりたいときには父をうまくコントロールする術も学んできた。

コヨーテは、母と姉、妹が亡くなる前にタイムカプセルを埋めた公園が取り壊されることを祖母から聞き、掘り返す工事が始まる前に故郷に戻る方法を考える。しかし、今いるフロリダから故郷の町があるワシントン州までは6000kmもの距離がある。ロデオを騙しつつ、次第に故郷のワシントン州に向かわせるのだが、その途中で、猫や困っている人たちを拾い集め、バスの故障に遭遇したりするうちに、公園の取り壊しの日が迫ってくる……。

スクールバスをキャンピングカーにしてロードトリップしている父と娘という設定は、いかにもアメリカ的だ。日本ではファンタジーの部類になるほど突飛だが、アメリカでは十分あり得る。そのあたりも、日本の読者には面白いのではないかと思う。

だが、親の視点で読むと、特に最初のうちは「これは親による児童虐待の一種だ」と気になってしまう。なんせ、本来なら小学校で友達と遊んでいるべき娘を、自分の心の平和のために「ロデオとコヨーテだけのハッピーな世界」に閉じ込めているのだから。それでもめげずに自分を確立しているコヨーテは、子供でありながら大人として親の面倒をみる強いヒロインだ。環境はまったく異なるが、『じゃりン子チエ』のチエをつい連想した。

でも、ストーリーはどんどん予想外の方向に展開していく。壊れたバスのように、スピードを上げて。

作者のDan Gemeinhartは、ワシントン州の小学校で教師/図書館司書として勤務している3人の娘の父親だ。だから、ロデオは作者に近いキャラなのだろう。ロードトリップで拾っていったキャラクターが活きていて、後半の冒険も楽しく、エンディングも希望に満ちている、とても読み応えがある児童書だった。

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