女性の社会的地位を低め、健康を脅かしてきたデータのバイヤス – Invisible Women

作者:Caroline Criado Perez
ハードカバー: 432ページ
出版社: Harry N. Abrams
ISBN-10: 1784741728
ISBN-13: 978-1784741723
発売日: 2019/3/7
適正年齢:PG14(理解力では高校生以上)
難易度:中級+〜上級(ストレートな英語なので、日本で英語を学んだ人には小説より理解しやすいだろう。ただし、日本語でも基本的な知識基盤がない人には理解しにくいと思う)
ジャンル:ノンフィクション
キーワード:データバイアス、認知バイアス、性差別、構造的差別
賞:フィナンシャル・タイムズの2019年ベストビジネス書
2019年 これを読まずして年は越せないで賞候補

日本で大学医学部の受験で女性に対する差別が行われていたことが明るみに出て、海外でも大きな話題になった。2018年にケイクスで「東京医科大学が恐れた未来はすでにアメリカで起こっている」というコラムに書いたように、アメリカではすでに医学大学院に進学する半数以上を女性が占めている。

日本の大学が点数操作をした理由は「女性は出産や子育てで、医師現場を離れるケースが多く、医師不足を解消するため」と伝えられているが、海外のデータと比べると、やはり日本の状況は特異だ。ラトビアやエストニアでは医師の7割以上を女性が占めるほどなのだから。もし、日本で女性を医師にすると医師不足になるとしたら、それは女性のせいではなく、日本での医師が働く環境やシステムそのものに問題があると見るべきだろう。

私は20代前半に大学病院で助産師として働いていたし、娘はもうじきアメリカのメディカルスクールを卒業して救急科専門医になるので、この世界をまったく知らないわけではない。

だが、日本のソーシャルメディアで多くみかける医学部擁護の意見を読み、彼らと私では見えている世界が異なることをつくづく実感した。

この「見えている世界の違い」の根底にあるのは、女性に関するデータバイアスであり、データバイアスによる認知バイアス、そして、それらが作り上げ、継続させている構造的な女性差別である。

それを、綿密なデータで立証しているのが、キャロライン・クリアド・ペレズのInvisible Womenである。

長い歴史の間、「ひと」のデフォルトは「男性」だった。だから、「ひと」に関するデータは、ほとんどが男性のものである。そのデータに基づいて政治、経済、教育、インフラなどの重要な方針が立てられてきたので、ますます男性のほうが有利な社会になった。

政策を決定する立場にあるのが男性ばかりのとき、男性のデータをデフォルトにしてしまって女性のニーズが欠けたままになってしまうことがある。

たとえば、幼い子どもの世話や、老人の世話をするのは女性が圧倒的に多い。収入がない(が時間と労力を要する)家事を担当するのも女性が多い。その結果、女性は自家用車やUberではなく、徒歩や廉価な公共交通機関で移動することが多くなる。そのうえ、単独で行動することが多い男性とは異なり、女性は子供や老人をベビーカーや車椅子で移動することが多い。だが、こういった個人的な体験がない男性たちには、これらの女性は見えない。その結果、男性中心のデータにより、公共バスへの資金がカットされてしまうことがあるのだ。

男性をデフォルトにした医学データは、女性の健康に深刻な影響を与える。男性と女性では、症状が異なることもあるし、薬の効き方が違うこともあるからだ。

下線を引きたくなるデータバイヤス例があまりにも多くて、抜き出して紹介する気力がなくなってしまったほどだ。

フィナンシャル・タイムズ/マッキンゼーの2019年のベストビジネス書に選ばれたこの本が邦訳され、多くの人に読んでもらえることを願っている。

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