2020年のアメリカらしい理想とロマンスが詰まった青春小説 You Should See Me in a Crown

  • 作者:Leah Johnson
  • ハードカバー : 336ページ
  • ISBN-10 : 133850326X
  • ISBN-13 : 978-1338503265
  • Publisher : Scholastic Press
    出版日:June 2, 2020
    適正年齢:12+(中学生から高校生向け)
    難易度:中級+ 6/10
    ジャンル:YA/青春小説
    キーワード:LGBTQ、同性愛ロマンス、プロム、プロムクィーン、人気投票、インディアナ州、人種差別、友情

女子高校生リズが住んでいるのは、アメリカでも特に保守的なインディアナ州の小さな町だ。町の住民は平均的に裕福で、高校で毎年行われる美人コンテストのようなプロムクイーンに取り憑かれている。肌が黒く、背が高く、同性愛で、家庭が貧しくて勉強にしか興味がないリズは、居心地の悪さを感じてきた。でも、リズは、将来の計画をしっかり立てていた。高校を卒業したらこの町を離れ、名門ペニントン大学に進学して有名な大学のオーケストラで演奏し、卒業後はメディカルスクールに進学して医師になるというものだ。すでにペニントン大学には合格していたので、後はオーケストラからの奨学金を得るだけだ。

ところが、オーディションのときに緊張しすぎたのか、リズはオーケストラから断られてしまう。奨学金がなければ大学に進学することができないし、貧しい家族に相談したら家を売って学費を作ろうとするだろう。悩んだリズがすがりついたのが、高校のプロムクイーン・コンテストだ。クイーンに選ばれたら奨学金を得ることができる。そうすれば念願のペニントン大学に進学できる。

しかし、問題は、リズが歴代のプロムクイーンとは似ても似つかないタイプだということだ。母親の代からプロムクイーンの世界に詳しい親友のガビがリズにアドバイスを与えるが、それは、リズらしさを打ち消してしまうものだった。リズには他にジョーダンという幼い頃からの親友がいたが、ある時から絶交状態になっていた。そのジョーダンはプロムキングに立候補していた。転校生のマックという少女にリズは淡い恋心を抱くようになるが、マックはプロムクイーンのライバルだ。現実とソーシャルメディアの嫌がらせも加わり、リズの高校生活は平穏さを失う……。

つい最近まで、アメリカのYA(ヤングアダルト、高校生向けのジャンル)小説の主人公は、シスジェンダー(生まれつきのジェンダーと自分が自覚するジェンダーが一致している)、ヘテロセクシュアル(異性に対して性的な感情を抱く)、白人が大部分だった。タブーもあっただろうが、出版社がそれ以外はあまり売れないとみなしていたところもある。同性愛者やトランスジェンダー、ジェンダーフリュイドといったLGBTQ+のティーンが主人公のYAも増えてきたが、重いテーマを扱っている暗くて辛いものが多かった。

でも、2019年ごろから性的マイノリティと人種マイノリティの主人公であっても、これまでメインのYAロマンス小説と変わらない雰囲気のものが出てきた。Leah JohnsonのYou Should See Me in a Crownは、その代表的なものだ。リッチな白人が権力者である保守的な中西部の田舎町に住む、貧乏な人種マイノリティのリズの境遇は楽なものではないが、彼女には悲壮感はなく、明るいバイタリティがある。嫌な奴もいるし、裏切りもあるが、良い友人がいて、良い大人たちがいて、未来に希望がある。

こういうYA小説をアメリカの中高生が読んでいて、ベストセラーになっているということそのものが、未来への希望ではないかと思うのだ。

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