ツッコミどころ満載だけれどページ−ターナーとしては楽しめる心理スリラー The Wife Upstairs

作者:Rachel Hawkins
Publisher : St. Martin’s Press
発売日:January 5, 2021
Language : English
Hardcover : 304 pages
ISBN-10 : 1250245494
ISBN-13 : 978-1250245496
適正年齢:大人向け
難易度:7
ジャンル:心理スリラー/ゴシックミステリ
キーワード:ジェイン・エア、ゴシック、隠された妻、嫌ミス

アメリカ南部のアラバマ州バーミンガムにある「Thornfield」は、門番がいて住民と住民が招待した者しか足を踏み入れることができない「Gated Community」である(アメリカ南部には多いが、北部には少ないシステム)。このコミュニティに住んでいるのは超裕福な人々だけだ。ここで犬を散歩させるdog-walkerのアルバイトをしているジェインは、他の州から引っ越してきたばかりの若い女性だ。リッチな主婦たちは、ジェインを女中レベルの使用人のカテゴリに入れているので気にもかけていないが、「ジェイン」は本名ですらない。他人に知られたくない過去から逃げてきたジェインの優先順位はサバイバルだ。リッチな家族からジュエリーを盗んだりするが、それに罪悪感すら覚えない。

だが、ジェインに夢のようなチャンスがやってきた。ハンサムでリッチな寡夫のエディ・ロチェスターに出会ったことだ。ロチェスターはジェインを雇うためにわざわざ犬を飼う。2人の関係が深まり、ジェインはエディの家に移り住む。コミュニティの主婦たちはこれまで「使用人」のカテゴリに属していたジェインの「出世」に驚くが、やはりただの愛人として見下している。それでもジェインは諦めずエディからプロポーズを受けて正式のフィアンセになることに成功する。しかし、サバイバルのために観察力を研ぎ澄ませてきたジェインは、エディがなにかを隠していることを察知する。それを探ろうとしているとき、豪邸の上階から奇妙な音が聞こえるようになる……。

The Wife Upstairs(上階にいる妻)というタイトルから既にシャーロット・ブロンテのジェイン・エアを連想する読者は多いだろう。読むとすぐに主要人物の名前がジェインとロチェスターだと気づくので、リメイク的なゴシックミステリだという作者のメッセージは明らかだ。そして、ロチェスターが上階に妻を隠しているということも。ということは、読者にとっての謎や驚きはそこではない。

では、作者は何を驚きとして用意しているのか?

私がこの話題のミステリを最後まで読んだのはそれを知るためだった。

結論から言うと、作者のHawkinsが容易した謎や驚きは想定内で特に驚きはなかった。また、リアリティに欠けるし、辻褄があわないし、説得力に欠ける。だから、かなりイライラした。それが正直な感想だ。

ミステリや心理スリラーを読みすぎている私のほうにも問題があるので、そのあたりは差し引いてとらえていただきたい。ミステリをそれほど沢山読まない人にとっては最後まで驚きもあるページ−ターナーだと思う。ただし、この心理スリラーは「嫌ミス」のカテゴリに入るので、登場人物に感情移入したい人にはお薦めできない。

Leave a Reply