双子の姉妹のどちらが危険なのか? 「信頼できない語り手」が不気味な心理スリラー The Good Sister

作者:Sally Hepworth
Publisher : St. Martin’s Press
刊行日:(アメリカ)April 13, 2021
Hardcover : 320 pages
ISBN-10 : 1250120950
ISBN-13 : 978-1250120953
適正年齢:一般向け(PG15)
読みやすさ:7
ジャンル:心理スリラー
テーマ、キーワード:双子の姉妹、信頼できない語り手、ASD(自閉スペクトラム症、アスペルガー症候群)、心理コントロール、ロマンス

シングルマザーに育てられた二卵性双生児のFernとRoseは、母が薬物オーバードースで入院してからは支え合って生きてきた。ことに自閉スペクトラム症があると思われるFernはRoseの判断力を信頼しきっている。Roseは結婚して別の家に暮らしているが、Fernとは週に3回夕食をともにし、毎日のように電話で連絡を取っている。子供の頃から、RoseはFernを守るのが自分の役割だと決めていた。

姉妹が幼い時から母が図書館に連れて行ってくれたために、Fernは今でも本と図書館を愛している。図書館での仕事で仲間もでき、かつての上司からは人との対応の仕方も学んだ。自立しているFernだが、12歳の時にミスで人を殺してしまった過去があるために自分が危険だと信じている。また、騒音や人混みが苦手でパニックを起こすたびにRoseの助けを求めることになり、Roseなしには生きられないと思っている。

身体的な問題でRoseが妊娠できないことを知り、Fernは自分が代わりに子供を生んであげることを思いつく。そこで、図書館にプリンターを使いに来た若い男性にデートを提案するが、予定とは異なる展開になっていく。自分では意識しないうちに多くの人間関係を築き上げていったFernはRoseとは異なる自分の世界を持ちはじめる。だが、Roseはそれは危険だとFernを説得しようとする……。

双子の姉妹のFernの視点とRoseの日記で進行していくこの心理スリラーは、読者が最初に受けた印象が次第に変わっていくところが醍醐味だ。心理スリラーを読み慣れた読者なら何が起こっているのかすぐわかるだろうが、それでも読むのをやめられないページターナーだ。私が特に好きだったのは、Fernが無意識に築き上げていく温かい人間関係の数々だ。どうふるまっていいのかわからないことを小説や映画で学んで真似するところはつい吹き出してしまう。少しスペクトラムのボーイフレンドとのやり取りも楽しい。不気味さはあっても、その他の部分で心あたたまるので、疲れている読者にもおすすめ。

アメリカではオーストラリア人作家の作品があまり刊行されないのだが、Sally Hepworthはアメリカでもベストセラーになる人気作家である。

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