悲劇的な過去を持つ心理学者と過去に怯える少女の絆が胸に響く心理スリラーシリーズ第一巻 Good Girl Bad Girl

作者: Michael Robotham
Publisher : Scribner
刊行日:July 23, 2019
Hardcover : 368 pages
ISBN-10 : 1982103604
ISBN-13 : 978-1982103606
適正年齢:一般向け(性虐待のテーマや残酷シーンあり)
読みやすさ:7(シンプルな文章なので読みやすい)
ジャンル:心理スリラー
キーワード:殺人、性虐待、司法心理学者、悲劇的な過去、統合失調症、自立支援施設(旧名:教護院)家族問題、国際的な犯罪組織
シリーズ:Cyrus Haven

統合失調症の兄に家族全員を殺されたCyrus Havenは、心的外傷に対応するために勉学に集中して心理学者になった。だが、患者を治療するという当初の目標ではなく警察に協力する司法心理学者として働いている。最近依頼されたケースは、問題行動を持つ未成年者を対象にした自立支援施設に収容されているティーンの少女Evie Cormacが大人として出所できるかどうかを判断するというものだ。Evieは問題行動を持つただのティーンではない。彼女の過去は封印されていて、ごく少数の者しか過去を知らない。

6年前、犯罪歴がある男が残酷に殺される事件があった。その死体の近くで隠れていた少女がみつかり、男は彼女を誘拐してレイプした自動性虐待の犯罪者だとみなされていた。しかし、少女は名前も過去も語らず、家族も名乗り出てこなかった。DNAでデータを調べても何の情報もみつからない。過去が謎に包まれた少女は、天使のように美しい顔を持つことから「Angel Face」というニックネームで呼ばれるようになった。EvieはそのAngel Faceだった。

大人を信用せず反抗的な態度を取るEvieに対して施設で働く者やケースワーカーは悪意すら抱いている。だが、CyrusはEvieの特殊な才能に気づき、彼女を援助したいという衝動にかられる。他人と距離を持ち、誰にも自分の心に踏み込ませなかったCyrusにとって、それは意外な感情だった。Evieの才能は、人が嘘をついているかどうか100%見抜けることだ。

CyrusがEvieのケースに興味を懐き始めたのと同時期にフィギュアスケートのチャンピオンとして有名な女子高校生のJodieが死体でみつかった。性犯罪の前科を持つ男が逮捕されて事件は解決したとみられていたが、Cyrusはそれでは説明できないことに気づく。

誰からも「良い子」とみなされていたJodieと「悪い子」という烙印を押されているEvieには、表層とは異なる実像があった。Cyrusはそれに気づいてくるが、大人の社会は表層的な解釈をそのまま受け止めて生きるようプレッシャーを与える。Cyrusがそのプレッシャーを無視して行動し始めたとき、危険が迫ってくる……。

ミステリーの部分だけでも読み応えがあるが、それにも増して、孤独な心理学者と、幼い頃に大人から残酷な扱いをされて誰も信用しなくなった少女の特別な人間関係がこのシリーズの醍醐味と言えるだろう。しかも、簡単に2人の中心人物の恋愛小説にしないところも評価できるところだ。Cyrusは患者が治療者に対して恋愛のような感情移入をしやすいことを承知しているので、Evieとの心理的距離についても注意深い。

第2巻のWhen She Was Goodでは、いよいよEvieの過去と児童性虐待の犯罪組織が明らかになってくる。

この巻ではジェフリー・エプスタインの事件を連想させるような内容もあり、元ジャーナリストである作者の視点を感じる。1巻よりさらに暗くて辛いところもあるが、まだ謎のすべては明らかにならないので3巻も続けて読まねばならない。また、続けて読む価値もあるシリーズである。

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