14歳の少女が自分の価値を学んだ1970年ボルチモアのロックな夏 Mary Jane

作者:Jessica Anya Blau
Publisher : Custom House
刊行日:May 11, 2021
Hardcover : 320 pages
ISBN-10 : 0063052296
ISBN-13 : 978-0063052291
適正年齢:PG15
読みやすさ:6
ジャンル:青春小説、文芸小説
テーマ、キーワード:1970年、ボルチモア、ロックスター、精神科医、ヒッピー、フリーラブ、coming of age、青春、親からの圧迫、自分の価値を見出す

1970年メリーランド州ボルチモアが舞台。

14歳のMary Janeの両親は、南部の裕福な白人キリスト教徒であることを誇りにする厳格なタイプだ。弁護士の父親は自分が属するカントリークラブの会員になれる階級の者だけを尊敬しており、「自分の身の程を知っている」従業員の黒人のほうが、「身のほど知らず」のユダヤ人より好きだと娘に言う。母親は、家事と身なりが完璧であることを誇りにする専業主婦であり、娘を厳しく躾ける。

親の期待に応えて良い子でいたMary Janeだが、最近引っ越してきたユダヤ人の精神科医の家でベビーシッターとして働くようになってから社会通念や両親の考え方に疑問を抱くようになる。

「医者の一家」という情報しか知らなかったMary Janeの両親は「尊敬に値する」とベビーシッターのバイトを許可したのだが、Mary Janeが訪問した家は想像してもいなかったほど散らかっていて、冷蔵庫には腐った物しか入っていない乱雑さだった。精神科医の妻は家事にも育児興味がないのは明らかだった。精神科医は住み込みで極秘に治療している依存症のロックスターにかかりきりで、妻のほうはロックスターの妻で有名な女優のマネをすることにとりつかれている。Mary Janeは、精神科医の4歳の娘を世話しながら、家中を掃除し、家族全員のために料理までし始める。でも、皆から頼られて、感謝されるのはとても幸せな感覚だった。

無責任だけれども両親にはない暖かさを持つ精神科医一家とロックスター夫婦からMary Janeは愛され、まるで重要な家族の一員のように扱われるようになる。これまで両親から褒められたことがないMary Janeは、率直に感情を語る人々から自分の価値を学んでいく。けれども、ロックスターと精神科医のことが両親に知られ、人生で一番楽しかったMary Janeの夏は終わる……。

精神科医と妻のいいかげんさやロックスターの振る舞いを読んでいると、ひとりの親として「何か悪いことが起きそうだ」と心配になる。”Almost Famous meets Daisy Jones and the Six“という宣伝文句も不安材料だ。どちらもハッピーエンドとは言えないから……。

でも、ご安心いただきたい。70年代のロック時代を背景にしたマイルドでノスタルジックな青春小説であり、何も悪いことは起きないので。

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