70年代の架空のパンクロック・デュオを通して音楽界での人種差別や女性差別の歴史を浮き彫りにする話題の小説 The Final Revival of Opal & Nev

作者:Dawnie Walton
Publisher ‏ : ‎ 37 Ink
刊行日:March 30, 2021
Hardcover ‏ : ‎ 368 pages
ISBN-10 ‏ : ‎ 198214016X
ISBN-13 ‏ : ‎ 978-1982140168
適正年齢:一般向け(PG15+ セックスシーンはあるが露骨すぎない)
読みやすさ:8(文章はシンプルだが、取材形式の小説なので最初のうちは何が起こっているのか把握しにくいと思う)
ジャンル:歴史小説(1970年代)
キーワード、テーマ:1970年代、パンクロック、アフロパンク、人種差別、公民権運動、ドキュメンタリー形式の小説

1970年代にOpal & Nevというアイコニックなパンクロックのデュオが存在した。アメリカのデトロイト出身の黒人女性とイギリス出身の赤毛の白人男性という珍しい組み合わせのデュオだった。けれども、ある大きな事件で有名になった後に解散し、Nevはその後メローな音楽で売れっ子になり大金持ちになった。Opalはスポットライトを離れ、音楽活動をやめていたが、音楽界で名前を知らない者はいないほどの存在だ。そのOpal & Nevが2016年に再結成することになり、音楽雑誌の編集長Sunny Sheltonが取材企画を立てた。

Sunnyは黒人女性として初めてその音楽雑誌の編集長に起用されたのだが、内部にはそれをよく思わないライバルたちもいた。亡くなったSunnyの父はOpal & Nevのバンドのドラマーであり、結婚していたにもかかわらずOpalとつきあっていた。そういった個人的な関係もあり、Sunnyはこの企画に特別な思いを抱いているのだが、OpalもNevも取材しやすい対象ではなかった。ジャーナリストとして多くの人々を取材していくうちに、Sunnyはこれまで知られていなかった事件の真相に近づいていく。しかし、そのためにNevとその周辺の人々を敵に回し、困難な状況に追い込まれる……。

70年代ロック、セックス&ドラッグ、架空のバンドのドキュメンタリー形式…というと、2019年にベストセラーになったDaisy Jones & The Sixを連想することだろう。私もそのひとりだった。共通点はあるが、この2つはまったく異なる小説である。Daisy Jones & The Sixはある種のラブストーリーだったが、OpalとNevの間には恋愛関係はない。純粋に音楽によって繋がっていた関係であり、だからこそ最後に明らかになる真相に胸が痛くなる。Opalたちは、同じ年代のロックシーンであっても、Daisy Jonesのバンドが体験しなかったアメリカ独自の人種差別にあっている。それがデュオの解散に関係しており、Nevのその後の成功の意味について読者は考えずにはいられなくなる。

私はオーディオブックとハードカバーの両方を買ったが、どちらもそれぞれに良いところがある。ハードカバー(紙媒体)のほうが何が起こっているのか理解しやすいが、オーディオブックはOpalの語り口などがドキュメンタリーのようで魅力的である。

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