『The Martian』が好きだった人にお薦めのアンディ・ウィアーの最新作 Project Hail Mary

作者:Andy Weir (The Martianの作者)
Publisher ‏ : ‎ Ballantine Books
刊行日:May 4, 2021
Hardcover ‏ : ‎ 496 pages
ISBN-10 ‏ : ‎ 0593135202
ISBN-13 ‏ : ‎ 978-0593135204
対象年齢:一般(PG12,セックスの話題は出てくるがシーンはない)
読みやすさ:6(科学についての説明は多いが、非常にシンプルな文章なので、日本人には読みやすいタイプ)
ジャンル:SF
キーワード、テーマ:地球滅亡の危機、国際協力宇宙プロジェクト、宇宙旅行、宇宙飛行士、エイリアンとの遭遇、サバイバル

Ryland Graceは、見慣れない場所でひとりきりで目を覚ました。最初は何も思い出すことができないが、少しずつ記憶の片鱗が蘇る。地球が滅亡の危機に瀕しており、人類に残された最後のチャンスとして国連が『Project Hail Mary』というプロジェクトを作った。非情なタスクマスターであるEva Strattの指揮のもと、中国人の船長、ロシア人のエンジニア、そして原因究明をする専門家としてのアメリカ人科学者3人のチームがTau Ceti(くじら座タウ星)に送り出されたのだった。

『Project Hail Mary』は地球と種としての人間の存続のためのプロジェクトであり、宇宙飛行士は原因究明をやり遂げたらBeatlesと呼ばれる4機の小さな無人宇宙船でその結果を送ることになっている。それが最も早い方法だからだ。宇宙飛行士を帰還させるだけの燃料と食料はない。任務を遂行したら、彼らは自分の望む方法で自殺することになっていた。

長旅の途中は諸事情で医学的な昏睡状態にある必要があった。昏睡状態に生き延びやすいDNAを持った者だけが選ばれたのだが、生き残ったのはGraceだけだった。記憶があやふやなGraceは、単独でどうミッションをやり遂げたらよいのか絶望的になる。

自分が置かれた状況を把握しようとしていたときに、彼はエイリアンに遭遇する。その生物もまた同じミッションで祖国の惑星からTau Cetiに来たのだが、Graceのように一人だけ生き残ったのだった。祖国の重力と大気の構成が大きく異なる2人なので同じ空間に存在することはできない。それでも2人はコミュニケーションの方法を見つけて協力関係を築く……。

地球に戻る可能性がなくて大きな宇宙でひとりきり、その中で問題解決…というのはWeirが本名で出版したデビュー作The Martianとよく似た設定だ。そこからの展開がどんどんワイルドになっていくのだが、ありえなさを無視して身を任されば、すべてのページが面白いページターナーである。読んでいるときに映画のシーンが想像できるが、やはりライアン・ゴズリング主演で映画化されるらしい(ライランド・グレイズという主人公の名前がすでにライアン・ゴズリングに似ているので、作者が狙ったのではないかと思うほど)。

こんなに危険なミッションなのに(代役がいない)宇宙飛行士を昏睡状態にするとか、昏睡状態が覚めたときにすぐに作業できるようなチェックリストやプログラムがないことなどツッコミを入れたくなるところは沢山ある。会話やシチュエーションのあちこちにミソジニー感もあるのだが、そういったことは無視して楽しんだほうがいいSFだと私は思う。

ユーモアたっぷりであり、ありえなさそうなエイリアンとの友情が楽しく、エンディングは胸にぐっとくる。読後感が良いSFとしておすすめ。

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