非白人に疎外感を与える「あなたはどこから来たの?」という質問に答える素晴らしい絵本 Where Are You From?

作者:Yamile Saied Méndez , Jamie Kim (イラスト)
Publisher ‏ : ‎ HarperCollins
刊行日:June 4, 2019
Hardcover ‏ : ‎ 40 pages
ISBN-10 ‏ : ‎ 0062839934
ISBN-13 ‏ : ‎ 978-0062839930
対象年齢:プレスクール(読み聞かせ)から小学校3年生(本人が読む)
Lexile measure ‏ : ‎ AD640L
読みやすさ:4(文章はシンプルだが、コンセプトを理解するためには読解力が必要)

“Where are you from?”(あなたはどちらのご出身ですか?}という質問に疑問を持つ人は少ないだろう。特に母国でマジョリティの立場にいる人には。

アメリカでも白人同士であれば現在住んでいる場所や故郷についての質問なので「ボストン」と答えればそれですむ。ところが、アジア系やラテン系の人が「ボストン」と答えると、”No, where are you really from?”(いや、そうじゃなくて、本当はどこから来たの?)としつこく食い下がられる。つまり私の場合には「日本の兵庫県で生まれました」と言うまで解放してはくれないのだ。

大人になってからアメリカに来た私には訛りがあるので「外国人」という決めつけも理解できるが、私の娘のように白人とミックスで英語が母国語のアジア系アメリカ人も同じ扱いを受ける。トランプ政権の頃からは、見知らぬ者からいきなり「祖国に帰れ!」とツバを吐きかけられたり、襲われたりするケースも増えている。

一見無害そうな”Where are you from?”という質問には、「おまえは、この社会に属してはいない。よそ者だ」というニュアンスが込められているのである。悪気なく質問している人もいるが、自分の思い込みに問題があるという自覚がないところがすでに問題だ。

この絵本は、学校などでこの質問を受けて悩む女の子が何でも知っているおじいちゃんに質問するというもので、おじいちゃんの回答が素晴らしい。

おじいちゃんの答えは哲学的すぎて「子供が言い返せるようにもっと簡単に答えてよ」と思う人がいるかもしれない。
でも、言い返すのが目的ではない。子供に「私たちはみな、この素晴らしい世界から来たのだ」ともっと大きい視点で自分と、自分とは異なる外見の人の価値を知ってもらう本なのだと私は思う。見た目が少しでも異なると「外国人」として差別されがちな日本でもぜひ読んでもらいたい絵本だ。

アルゼンチン出身の作者Yamile Saied Méndezは他にも数多くの児童書を書いており、YA小説のFuriaはリース・ウィザースプーンの選書にもなった。また、私の娘がVONAのワークショップで学んだ同期でもある。このVONAのワークショップはプロになる準備ができているマイノリティ女性作家予備軍を選ぶことでも知られており、 Never Saw Me Comingの作者Vera Kurinも同窓生。

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