男社会に虐げられてきた女たちが内に潜めてきた魔女力を発揮する痛快な復讐劇 The Change

作者:Kirsten Miller
Publisher ‏ : ‎ William Morrow
刊行日:May 3, 2022
Hardcover ‏ : ‎ 480 pages
ISBN-10 ‏ : ‎ 0063144042
ISBN-13 ‏ : ‎ 978-0063144040
対象年齢:一般(PG15、セックスや性暴力の話題はあるがシーンはない)
読みやすさ:7
ジャンル:スリラー、現代小説、マジックリアリズム
キーワード、テーマ:男性社会で抑圧される女、セックストラフィッキング、復讐

富豪が別荘を持つことで知られるニューヨークのロングアイランドの町で、これまで接触がなかった3人の女性が出会う。マンハッタンの有名な広告代理店で活躍してきたが50歳を目前に夫と職を失ったHarriet、大手ホテルの重職を離れて女性専用のスポーツジムを開設したJo、警官の夫が殉職した後看護師をしながら双子を育ててきたNessa。3人の共通点は生まれた時から持っている特別な魔力を押し殺してきたことだ。自然と繋がる能力を隠そうともしなくなったHarrietと、押し殺してきた怒りがマグマのように熱となって噴出するパワフルなJo。そして、死者からのメッセージを受け取るNessa。海辺の辺鄙な場所で3人は業務用のゴミ袋に詰めて捨てられていた少女の死体を見つけたが、警察は「薬物依存症の売春婦」と決めつけて捜査もしない。Nessaはこの少女以外にも亡くなった少女たちの幽霊を見て、彼女たちのために死体を見つけ、真相をつきとめたいと思う…。

「復讐もの」はあまり好みではないのであまり読まないのだが、この復讐劇は読んでいて胸がスッキリする爽快さを楽しめた。3人は社会から理不尽な扱いを受けてきた女たちだ。これまで「がまん」と「努力」で生きてきたが、それでも男たちによって簡単に踏み潰される。リッチな男たちによって殺され、その存在すら抹殺されてきた貧しい少女たちの事件を解決しようとするが、大金持ちの男たちのネットワークは強靭である。3人も死んだ少女たちのように抹殺されそうになるが、それで負けないのが「魔女」の底力だ。

特に悟りを開いてやりたい放題のHarrietが最高だ。男たちが自分のことをどう思っているのかなんてまったく興味がない。他人の真髄を見抜き、毒草や虫、鳥を自由に操り、未来に起こることを知っている。読んでいて「Harrietになりたい!」と思った読者は数え切れないだろう。余談だが、Harrietの体験として「炎上する広告ってこうやって作られているんだね」と納得できるシーンがあって、日米ともに「ユーザーが怒って炎上しない限り、こういうことは続くから炎上したほうがいいのだ」と思った。

ネタバレになるので詳しくは書かないが、ジェフリー・エプスタインとリッチな友人関係を連想させる内容もあり、あの事件でモヤモヤした気持ちを抱えていた人たちにある種のカタルシスを与える(特に女性読者にとって)超娯楽的復讐劇。

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