作者:Oscar Hokeah
Publisher : Algonquin Books
刊行日:July 26, 2022
Hardcover : 272 pages
ISBN-10 : 1643751476
ISBN-13 : 978-1643751474
対象年齢:一般(PG15 露骨ではないが、セックスとドラッグの話題あり)
読みやすさ:7
ジャンル:連作短編集、現代小説、アメリカ文学
キーワード、オクラホマ州、カイオワ族、チェロキー族、メキシコ系移民、ドラッグ依存症、家庭内暴力、家族ドラマ
母からカイオワ族とチェロキー族の血を受け継ぎ、父からメキシコ人の血を受け継いだEverという男性を、彼に関わる数多くの人々の視点から描く連作短編集。
メキシコ出身のEverardoと結婚したTurtleは、息子のEverがまだ生後6ヶ月のときにメキシコに住むEverardoの家族を訪問した。Everardoはアメリカへの国境手前で悪徳警官らにリンチされて持ち金すべてを奪われ、健康も失った。働けないフラストレーションからEverardoはアルコール依存症になり、家族に暴力をふるようになる。Everを訪問したソーシャルワーカーが母と子ども2人を救うためにシェルターに移したのだが、Everは家族を崩壊させたのは自分だと信じて罪悪感を抱く。
父の怒りの爆発と暴力を目撃して育ったEverは、父のような怒りを内包しており、暴力をふるって学校を退学になる。軍隊に加わることで人生のやり直しに成功したかに見えたが、覚醒剤依存症になった妻を助けるために退役する…。
アメリカの先住民族コミュニティを描いた連作短編集の小説ということで、ベストセラーになったThere Thereを連想する読者は多いだろう。私もそのひとりだった。だが、この2つの作品には大きな違いがある。There Thereには、欧州からの移民が先住民族から土地を奪った血みどろの歴史と、その結果である現在の状況への行き場のない憤りがあった。だが、このCalling for a Blanket Danceにはそういう怒りはない。それよりも、オクラホマ州に実際に存在する、カイオワ族、チェロキー族、メキシコ人の血と文化が混じったコミュニティを舞台に、Everという男性を中心にして文化的な拘束の息苦しさや、暴力や依存症などが繰り返される悲劇を描いている。
There Thereほどのインパクトは感じなかったが、最後に救いがあるのが良かった。