Author: 渡辺由佳里 Yukari Watanabe Scott
オバマ大統領誕生を苦々しく思う保守派の本が売れている
オバマ大統領誕生を歓迎するアメリカ人も記録的だが、苦々しく思う者の数も記録的だという印象があります。クリントン大統領が当選したときもそうだったようですが、今回はもっと激しい戦いが出版の形で始まっています。 次のリストは、いかにメディアがオバマを応援して当選に貢献したか、などメディアや左翼を攻撃する形でのオバマ攻撃です。 Amazonの読者のレビューが良いものは、苦々しく思っている保守派の人だけが読むからです。けれども、これだけベストセラーリストに入っていることを考えると、オバマ大統領の失敗を望む保守派の人口がいかに多いかというのも容易に想像できます。 A Slobbering Love Affair: The True (And Pathetic) Story of the Torrid…
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Down River(南部の哀愁を感じるミステリー)
著者:John Hart 2007年10月初刊 ミステリー/米国南部 読みごたえがある文学的なミステリーを求める方におすすめの一冊 The King of Liesで彗星のようにデビューしたJohn Hartの第二作。 Adam Chaseは5年前に義母の証言により殺人罪で起訴され、有罪判決は逃れることができたが人々の疑惑は消えることがなかった。何よりも息子の自分ではなく義母を選んだ父をAdamは許すことができなかった。5年間恋人とも連絡を取らなかったAdamだが、子供時代の友達Dannyから懇願されて故郷に戻る。 だが、そこで待っていたのは、母の自殺の真相、父が母の死後につくりあげた家族との葛藤、そしてさらなる殺人事件だった。 主人公を含め、登場する者すべてに弱みがある。みな、過ちを犯し、嘘をつき、傷つく。だが、それを許し、受け入れ、癒されることができるのも人間である。抒情詩のような美しい文体と、南部の男流のハードボイルドさが微妙にマッチして、特別な雰囲気をかもし出している。 ミステリーとしてだけではなく、純文学としても楽しめる。…
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アメリカの若者が小説を読むようになっている
パブリッシャーズ・ウィークリー(1/19/2009) の記事によると、アメリカでの読書人口は、2002年の115百万人から2008年は119百万人まで増加しているということです。でもそれは、「一年間に一冊でも本を読んだ人」の割合(18歳以上成人人口のみ)で比較すると56.6% から54.3%に減少しているとのこと。 けれども、次が重要な点です。 文芸作品(長編小説、短編小説、詩)の読者は顕著に増加しているのです。それも、46.7% から50.2%。これは、私が以前に「本を読むアメリカ人が増えている」と(ただの感覚で)語ったのと一致しています。 特にアメリカの出版界に希望を与えるのは、18歳から24歳の文芸作品の読書人口が、42.8%から51.7%と最も大きな伸びを示していることです。ケータイやオンラインに時間を割く若い世代が小説を読んでいる、というのは日本の出版界にとってはうらやましい現象ではないでしょうか。
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Thoroughbredシリーズ(初心者におすすめ)
A Horse Called Wonder(Thoroughbredシリーズbook 1) 著者:Joanna Campbell 1991年初刊 児童書(小学校3年生から)/動物 絵本ではなくちゃんとしたストーリーのある本から始めたい人/ホラーやファンタジーのジャンルが苦手な洋書初心者におすすめのシリーズ http://rcm-jp.amazon.co.jp/e/cm?t=yukariscott-22&o=9&p=8&l=as1&asins=0061061204&md=1X69VDGQCMF7Z30FM082&fc1=000000&IS2=1<1=_blank&m=amazon&lc1=0000FF&bc1=FFFFFF&bg1=FFFFFF&f=ifr&npa=1 http://rcm.amazon.com/e/cm?t=yofaclja-20&o=1&p=8&l=as1&asins=0061061204&md=10FE9736YVPPT7A0FBG2&fc1=000000&IS2=1<1=_blank&m=amazon&lc1=0000FF&bc1=FFFFFF&bg1=FFFFFF&f=ifr&npa=1 Ashleigh(アシュレー)の両親はサラブレッド馬の飼育場を経営していたが、疫病のために馬たちを失う。大好きな雌馬スターダストの死から立ち直れない12歳の少女アシュレーは、もう二度と馬を好きになるまいと決意する。けれども、スターダストを思い起こさせる子馬のワンダーが生まれる。アシュレーは、生き延びられるかどうかわからない弱々しいワンダーに奇跡を願う。動物好きで、心温まる物語が好きな人に最適。 主人公は12歳ということになっているが、読者層は小学校2年生から5年生の少女。 ●読みやすさ ★★★★☆…
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Tree of Smoke( National Book Award 受賞作)
著者:Denis Johnson 2007年9月初刊 現代文学/純文学/ベトナム戦争 忍耐がある偉大なアメリカ現代小説に挑戦したい方だけにおすすめの本 http://rcm-jp.amazon.co.jp/e/cm?t=yukariscott-22&o=9&p=8&l=as1&asins=0374279128&md=1X69VDGQCMF7Z30FM082&fc1=000000&IS2=1<1=_blank&m=amazon&lc1=0000FF&bc1=FFFFFF&bg1=FFFFFF&f=ifr&npa=1 常日頃感じていることだが、偉い文芸評論家やオプラ・ウィンフリーがべた褒めしたからといって良い本とは限らない。有名な賞の受賞作もそうだ。ずっと前は、私の頭が悪いだけかと思っていたが、最近になって私の抱く感想は一般のアメリカ人読書人口とほぼ一致していることがわかってきた。(平均的アメリカ人が馬鹿だといわれたら、それまでだが) このDenis JohnsonのTree of Smokeは、National Book Award受賞作であり、ニューヨークタイムズ紙の文芸評論家Michiko Kakutaniが「bound to…
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恐ろしく売れそうな予感がする新刊テクノ・スリラー-Daemon
スリラー界のモンスター誕生! 2009年1月8日発売のこの書は、発売当時から注目して即入手したのだけれど、忙しくてようやく読み終えたのが昨日のこと。 新人作家による「Daemon」は稀に生まれる「モンスター」と呼ぶべき作品。目前の仕事を終えてから詳しい書評は「洋書クラブ」のほうに載せるつもりですが、おおざっぱに説明すると、死んだオンラインゲームの天才クリエーターが作った世界を制覇するDaemon(注:IT用語辞典によると、UNIX系OSにおいて、バックグラウンドで動作するプログラムのこと)と現在の社会をコントロールしている政府機関や大企業との闘い、そしてそれに巻き込まれた個人たちの個別の闘い、といったものです。私はふだんこの手のスリラーは苦手で完成度としては?ですが、その私でも降参せずにはいられませんでした。 http://rcm-jp.amazon.co.jp/e/cm?t=yukariscott-22&o=9&p=8&l=as1&asins=0525951113&md=1X69VDGQCMF7Z30FM082&fc1=000000&IS2=1<1=_blank&m=amazon&lc1=0000FF&bc1=FFFFFF&bg1=FFFFFF&f=ifr&npa=1 http://rcm.amazon.com/e/cm?t=yofaclja-20&o=1&p=8&l=as1&asins=0525951113&md=10FE9736YVPPT7A0FBG2&fc1=000000&IS2=1<1=_blank&m=amazon&lc1=0000FF&bc1=FFFFFF&bg1=FFFFFF&f=ifr&npa=1 私の予言です。これは絶対に売れます。 この本の邦訳は講談社から出版されるとのことです(著者からの情報により2月9日追記)。
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期間限定オンライン無料購読!The Ruins of Gorlan(The Ranger’s Apprentice Book 1)
ニューヨークタイムズベストセラーで、小学校高学年から中学生の男子に大人気の「The Ranger’s Apprenticeシリーズ」の第一巻The Ruins of Gorlanが無料でオンライン購読できます。キャンペーンが終了すると読めなくなりますのでご了承ください。 Ranger’s Apprentice: The Ruins of Gorlanhttp://d.scribd.com/ScribdViewer.swf?document_id=10330799&access_key=key-xngk6f2hxdh046vnh9o&page=1&version=1&viewMode= Publish at Scribd…
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洋書初心者への「失敗しない完読テクニック」その3
「お勉強癖」を捨てて読書体験を楽しみましょう 日本を離れてもう15年になるので、日本で今「多読多聴」なるものが流行っていることを最近まで知りませんでした。それと関連ある「フォトリーリーディング」はアメリカ発の速読法の一種なんですね。 本家らしき英語のサイトを読んでみると、私が「失敗しない完読テクニック」その2で書いたことにちょっと似ています。でも、根本的な部分が私と信念とは異なるので、ひとこと追記を。 フォトリーディングをはじめ、速読そのものを否定するつもりは毛頭ありません。 授業や論文のために大量の学術書を読まねばならない大学生や専門家には非常に役立つ技術でしょう。私自身、仕事などで短時間のうちに大量の専門書やニュースに目を通すときには、自然と身につけた速読をしています。 けれども、小説やお気に入りのノンフィクションを読むとなると話が違います。 たとえば、すばらしいシェフが時間をかけて作った5コースのフランス料理とソムリエが選んだワインを5分で食べ終えるのがよいことだと思う人はいませんよね。懐石料理でもそうです。空腹を満たすことよりも、場所の雰囲気、流れている音楽(あるいは静寂)、料理の色合い…など味以外の要素も含めて、食の体験全体を楽しんでいるはずです。 趣味の読書もそんなものだと思うのです。 私が何度も読み返す「In the Country of the Young 」(注:これは読みやすさのレベルとしては★★☆☆☆です)という本の第一章はこんなふうに始まります。…