43代大統領ジョージ・W・ブッシュの意外な引退生活 『Portraits of Courage 』

著者:George W. Bush
ハードカバー: 192ページ
出版社: Crown
ISBN-10: 0804189765
発売日: 2017/2/28
難易度:中級(半分は絵で、あとは人物の紹介文)
ジャンル:アート本(ポートレート)
キーワード:ジョージ・W・ブッシュ、アフガニスタン紛争、イラク戦争、退役軍人、油絵、ポートレート

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日本人イラストレーターのアートで絶賛されているアメコミ- Monstress

著者:Marjorie Liu(ストーリー) Sana Takeda(イラスト)
ペーパーバック: 192ページ
出版社: Image Comics
ISBN-10: 1632157098
発売日: 2016/7/19
適正年齢:PG15(バイオレンスシーン多し)
難易度:中級+(会話部分はシンプルだが、読みにくいかもしれない)
ジャンル:グラフィックノベル/コミック/ファンタジー
キーワード:半人半獣、古代の神

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実話を元にしたファンタスティックなSelznickの新刊 The Marvels

著者:Brian Selznick
ハードカバー(のみ): 640ページ
出版社: Scholastic Press (2015/9/15)
ISBN-10: 0545448689
発売日: 2015/9/15
適正年齢:PG12(内容的に中学生以上でないと良さがわからないと思う)
難易度:中級(文字がないイラストが半分以上だが、文字だけの部分も200ページほどある)
ジャンル:児童書(とはいえ、どちらかというと大人向け)
キーワード:The Invention of Hugo Cabret (の著者)、イラスト、同性愛、家族関係、Dennis Severs’ House

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BEA報告1 楽しすぎる絵本作家Jon Klassenさん

今年もBEA(BookExpo America)に来ています。詳しい報告は後ほどいたしますが、とりあえずお会いした素敵な作家さんたちをご紹介していこうと思います。

まずは、本ブログで作品をレビューしたJon Klassen(ジョン・クラッセン)さんです。

とっても快活でフレンドリーなクラッセンさんとは、犬や猫の話をしました。

IMG_1100

お喋りしながら、サラサラとイラストを描いてくれるクラッセンさん

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私がみる不思議な夢を本にしたらきっと… ー Tales from Outer Suburbia

Shaun Tan
98ページ (ハードカバー)
Templar Publishing
2009/3/2
YA(小学校高学年以上)/絵本/アート本/短編集

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「これを読まずして年は越せないで」賞にrumblefishさんがノミネートされた作品です。以前からShaun Tanは気になっていたのでこの機会に読んでみることにしました。

The Arrivalで世界的に注目されたオーストラリア人作家Shaun Tanは、新作Tales from Outer Suburbiaで15のシュールリアルな物語を紹介しています。最初のストーリィは郊外の空き地に住む水牛が導きを求める子供たちに寡黙な方向を示すという象徴的なもの。そして次は台所の食品貯蔵室に住みこんだ葉っぱのような姿の「外国人留学生」のお話です。Tanの独自な雰囲気のイラストと淡々とした文章が織りなす世界は、あまりにも非現実的なのですが、奇妙な郷愁をかきたてます。
私の生い立ちとはまったく重ならない物語のどこがそんなに懐かしいのだろうと自問してはたと思い当たったのが、私がよく見る不思議な夢の数々です。

Waterbuffalo

私はよくとてもリアルな夢を観るのですが、どこかで「これは夢だ」と自覚しています。リアルなようで、風景や人物に決定的に非現実的なところがあるからです。面白いのは、留学生Ericのようにあり得ない設定でも夢の中で私は平然と対応していることです。楽しいことは楽しいし、悲しいことは悲しい。笑いながら、泣きながら目覚めたあとで、「この夢は何を意味しているのだろう?」と考え込んでしまいます。変な夢にはきっと意味があるはずですが、どう解釈してみても解けない謎が残ります。そんなもどかしさも、Tanの創造する世界とそっくりです。

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「変な夢」の感覚をさらに強めるのがShaun Tanのイラストです。
grandpa’s storyで新婚ほやほやの祖父母が旅立つ風景には、地面に半ば埋もれた家や家の半分ほどの巨大なテディベア、山のてっぺんに漂着している船、など奇妙なものが当たり前のように隠れています。ひきつづく8ページにわたるイラストに文章がないのも、Grandpaがフラストレーションたっぷりに語ったように「…In fact, the more I tell you, the less you will actually understand…」の感覚を見事に表現しています。

短編だけでなく、コラージュ形式のDistant Rainという詩のような作品もあります。イマジネーションをかきたてるこの作品は私が特に気に入った作品です。

学校や図書館では小学校高学年以上のヤングアダルトに仕分けされていますが、ひょっとしたら大人のほうが楽しめるのではないか、と思った芸術的な作品です。

●読みやすさ ★★★★☆

ネイティブであれば小学校高学年から読めるレベルです。
詩的な作品ですから、すぐに状況が理解できない場合もあるかもしれませんが、イラストが助けてくれるでしょう。もともと夢のようにはっきりしない作品なので「明確な理解」を目標にしないことです。

●アダルト度 ★☆☆☆☆

小学生に安心して読ませることができる作品です。
低学年だとイラストのイメージが怖い可能性もありますが、それはその子の感受性次第なので身近な大人が判断してください。

●Shaun Tanの他の作品

The Arrival

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ウィキッドのマグワイアがセンダックのイラストを解説する楽しさ ー Making Mischief

208ページ(ハードカバー)
William Morrow
2009/9/1発売
画集/アート本

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WickedのGregory MaguireがMaurice Sendakのイラストを解説するアート本」、と聞いて「おお!」と興奮するのは私だけではないでしょう。
Maguireは、以前にもお話しましたが、Wickedで成功するまでは児童書作家でした。児童書といっても、人畜無害な可愛い作品ではなく、Wickedなどの大人用の本と共通するMaguireらしい「mischief(悪戯)」であふれています。そのMaguireが、mischiefの王様と言えるMaxを生み出したSendackのイラストを解説するというのです。ふつうのSendack解説本と異なるのはたやすく想像できます。

どのアーティストも尊敬する巨匠のアートを模倣することで腕を磨きます。また、作品の中にパロディとして拝借するのも尊敬の念を表明する行為です。Mauriceもその例外ではありません。愛するアーティストたち( Randolph Caldecott, William Blake, Phillip Otto Runge, Winsor McCay、など)をふんだんに利用してきました。Mischiefに満ちたMauriceの模倣と拝借を、Mischiefの天才Maguireがこれもまた「悪戯っぽく」解説しています。
通常はアーティストが成長した記録を年代順に提示するものですが、Maguireはテーマごとにまとめており、謎解きのように「なるほど!」と唸らせてくれます。

Mischief1large

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そしてフィナーレは、Mauriceの別の作品からのイラストを使った Where the Wild Things Are のリメイク、というサービス精神。そのあたりの遊び心がとっても心憎いアート本です。

どっしりと重い208ページもアート本の魅力。これも、わが家のコーヒーテーブルに加わりました。

Coffee_table

●読みやすさ ★★☆☆☆

イラストが中心ですからMaguireの解説は少ないのですが、簡単でわかりやすい文章ではありません。ストレートな解説でわかりやすいところもあるのですが、詩のようにちょっと考えなければならないところもけっこうあります。
でも絵が中心ですから文章が完璧に理解できなくても十分楽しめます。また、何度もイラストと見比べているうちに文章の意味がすっきりわかるようになるかもしれません。

●アダルト度 ★★☆☆☆

児童書作家が児童書イラストレーターの作品を解説した本ですが、子供が対象の児童書ではありません。
あくまで、クレバーな遊び心を愛するセンダック好きの大人向けです。

●Maguireのその他の作品

Leaping Beauty

作品一覧

「王様の耳はロバの耳!」という秘密を閉じ込めてアートにしたPostSecret

Frank Warren
288ページ(ハードカバー)
William Morrow
2005年11月29日初版
絵はがきアートを集めた写真集/告白集

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PostSecretという興味深いアートプロジェクトのことを知ったのは、実は娘が通う高校でのことでした。
廊下に張り出されたコラージュのようなアートを近くで眺めた私は、しばし目を疑いました。誰かが書いたはがきを集めたものだったのです。内容がまた凄いのです。あるはがきの中心には大きなベーグル(ドーナッツ型のパン)の写真があり「私は太るのが怖くて炭水化物をもう何年も食べていない」というコメント。「私は友達のボーイフレンドをわざと盗んだ」とか「成績が良いから親は僕が良い生徒だと思っているけれど、本当は二重生活を送っている」といった凄い告白も並んでいます。
「こんなの高校に貼っていいの?」と娘に訊ねた私は、「PostSecretのこと知らないの?」とかえって馬鹿にされました。

5
このプロジェクトの発案者はFrank Warrenという普通のビジネスマンです。精神的な底辺からアートで癒され、立ち直ったWarrenは、他人に伝えたことのない秘密を告白するはがきを自分宛に送って欲しいというハガキを作り、見知らぬ人々に配りました。
それを集めたものが話題になり、Warrenのプロジェクトは展示、ブログ(左の写真)、本のメディアでそれぞれ大人気になりました。

この本は最初に出版されたものなので、内容も一番オリジナルです。
互いの顔が見えないように隠された結婚式の写真に添えられた「I know he doesn’t love me anymore」という悲痛な告白や「He’s been in Prison for two years because of what I did. 9 more to go.(彼は私がやったことのためにもう2年刑務所に入っている。残りの刑期は9年)」といったゾッとするものも。このほかにも告白の内容は多様で、性的な告白、犯罪の告白、愛と憎しみと裏切りの告白…とバラエティも豊富。一度に全部読むのは、ちょっと濃すぎる感じです。

●ここが魅力!

ハガキに込められた秘密とその秘密を告白した人の人生を想像すると、ひとつのハガキで1冊の小説に匹敵するストーリーがあることをひしひしと感じます。それゆえ、一般的な写真集に比べて1冊で何度も楽しめます。
また、秘密を匿名で告白することで癒しを得る効果もあり、「私もPostSecretで告白したい」という意欲をかきたてるかもしれません。

●読みやすさ ★★★★☆

はがき一枚に収まるコメントですから短くて読みやすいものばかりです。
けれども、短い文ですべてを表現しなければならないので、一文に込められた意味は深く、それをすぐに察知するためには英語に相当慣れていなければならないでしょう。
ただし、はがきには絵や写真がついていますので、英語に慣れていない方はそれを見て文の意味を想像することができます。
ですから、英語に慣れていない方が慣れるためには最適の本ではないかと思います。

●アダルト度 ★★★☆☆

性的な告白や犯罪の告白があります。小中学生にはおすすめできません。
高校生くらいからです。

「天才ロックミュージシャンは27歳で死ぬ」ちょっとマニア向け27歳伝説アート本-The 27s: The Greatest Myth of Rock & Roll

Eric Segalstad(文筆業/ミュージシャン)、Josh Hunter(イラストレーター)
312ページ
出版社:Randam House
2009年4月発売
アート本/音楽/ノンフィクション/グラフィックノベル
(小説ではないけれどこのジャンルに入れている人がいるから)

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今年のBook Expo Americaでは、大手出版社の暗さと自費出版やインディ出版の活気の差が目立ちました。業界の雰囲気をそのまま反映していたようです。また、業界では自費出版で成功を収めて大手から出版されるケースも目立ってきました。
Eric SegalstadとJosh Hunterが作ったThe 27s: The Greatest Myth of Rock & Rollもそのひとつです。彼らは、既成の概念を超えらない出版社にフラストレーションを覚え、アーティストのクリエイティビティを活かす本作りのために自らSamadhi Creationsという出版社をクリエートしてしまったというすごい若者たちです。このマニア向けの本が話題になり、今年4月に大手のRandam Houseからトレードーペーパーとして新たに出版されました。

ロック界には、天才的なミュージシャンが27歳で死ぬという現象があり、それが伝説化しています。
27歳で亡くなった代表的な人物は、NirvanaのKurt Cobain(カート・コバーン)、DoorsのJim Morrison(ジム・モリソン)、Jimi Hendrix(ジミー・ヘンドリックス)、Janis Joplin(
ジャニス・ジョプリン)、そしてRolling StonesのリーダーだったBrian Jones(ブライアン・ジョーンズ)などです。
Kurt Cobainに関しては殺人説もありますが、"It’s better to burn out than to fade away,"つまり「凋落するよりもは燃え尽きたほうがいい」といった意味の遺書を残した自殺が有名です。また日本人がジミヘンと呼ぶ天才ギタリストのJimi Hendrixは、今でもラジオのクラシックロックで「最高のギタリスト」にノミネートされます。京都で英会話学校に通っていたとき私が自分のニックネームに選んだのはJanis JoplinからとったJanisでした。どちらも私がティーンになる前(1970年)に死亡していますが、ロックファンだった私にとっては青春時代を思い出す懐かしい名前です。
でも、この本で紹介されているのはこれらの有名なミュージシャンだけではありません。27歳で亡くなったロックミュージシャンはほかにも30人もいるのです。この本は時代から忘れられているそれらのミュージシャンへの鎮魂歌でもあります。

27歳伝説の真相にせまるThe 27s: The Greatest Myth of Rock & Rollを手にとったとき、私は高校生のころに田舎の本屋からビートルズの写真集を取り寄せたことを思い出しました。届くまでになんと8ヶ月ほどかかり、お小遣いがすっかり底をつく値段でしたが、1ページ1ページを大切に眺め、納得したものです。The 27sも既存の本とは異なり、丹念な作りです。紙の質もすばらしく、スタイリッシュなイラスト、地図、年表、音楽豆知識などが、1ページごとにアートとして提供され、ミュージシャンと彼らが生きた時代を視覚的に表現してくれます。それにしても、作成にこんなにお金がかかる本を日本のAmazonでも2700円ちょっとで入手できるというのはすごいと思います。だって、全ページカラーなんですよ!

私はいつでも手にとって眺められるように、リビングルームのコーヒーテーブルの上にオバマ大統領就任記念の本とともに飾っています。

●読みやすさ ★★★☆☆
ロックファンであれば固有名詞がわかるでしょうから、難しくないと思います。
通常のノンフィクションというよりも、大人の絵本といった感じです。

ヌードモデルの冷静な体験談-Live Nude Girl

Kathleen Rooney
2009年
回想録/エッセイ

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かつて私は絵を描いていたことがあります。
売ることを考えずに趣味で描くとしたらもっとも楽しいのはヌード画です。この8年ほどまったく絵を描いていないのですが、それまではヌードモデルを使ったセッションに何度も参加しています。5分ごとにポーズを変えてそれをスケッチするエクササイズから油絵を20分で描くエクササイズ、3時間かけて描きあがえるもの、などいろいろありますが、すべて短時間で1度きり。ひとつのモデルを何度も使って絵を完成させるようなセッションではありません。

Live_nude_girl_003_2 いったん始めると描くことに夢中になりすっかり忘れてしまうのですが、最初の30秒くらいは気まずい緊張感を覚えます。「視線は顔に合わせるべきなのか」、「羞恥心を覚えたら失礼なのだろう」、「羞恥心を覚えたら失礼だから、それが表情に出ないようにしなければ」、「モデルは人として扱って欲しいのだろうか、それともオブジェクトとしてみなしてほしいのだろうか?」といった疑問がどっと押し寄せ、ちょっとしたパニック感を覚えるのです。ヌードモデルのセッションそのものに慣れても、「最初の30秒」の緊張感は消えません。

私がKathleen Rooney著の「Live Nude Girl」に興味を抱いたのは、私がヌードモデルたちに直接尋ねることのできなかったいろいろな質問の答えを知りたかったからです。
著者のRooneyがモデルをしていたのはボストン界隈なので、私の縄張り(?)とも一致します。時間的にオーバーラップしていないので直接彼女を使う機会には恵まれませんでしたが、写真を見る限りは大きな瞳とセンシュアルな唇が魅力的な美しい女性です。
厳格なカソリックの中流家庭で育ち、結婚し、大学で創作を教える知的なRooneyが、(貧乏学生ならともかく)なぜゆえヌードモデルをまだ続けているのか、私でなくても不思議に思う人はいるでしょう。

私が描いたモデルのほとんどはKathleen Rooneyのように若くて美しい女性ではありませんでした。美術専攻の栄養失調気味の女子学生もいましたが、残りはやせた60歳くらいの男性、太鼓腹でひげ面の中年男性……といった非常にアセクシャルな人々で、もっとも印象に残っているのは体重100kgをはるかに超えるふくよかな女性でした。
私が「なぜモデルをやっているのか?」と質問する機会に恵まれたのは、残念ながらこの若くはない(30代後半か40代前半の)ふくよかな女性だけです。太っているからこそ、彼女はやせたモデルよりもアーティストに人気があり、引っ張りだこだという噂でした。
リッチな町で不動産エージェントをしている彼女にとってヌードモデル業は「趣味」にすぎません。自分のことを「exhibitionist」と呼ぶ彼女は、「オブジェクトとして賞賛の目で鑑賞される興奮は病み付きになる」と笑顔で教えてくれました。
Rooneyの答えがこの不動産エージェントのものと大きく異なるのかどうか、というのが「Live Nude Girl」を読むにあたっての私の興味の焦点でした。

個人的に興味を覚えたのは、私がアーティスト側で感じた「最初の30秒」をRooneyがモデル側から説明してくれたことです。でも、よく他人が比較する「売春とヌードモデルの差」やNakedとNudeの差を古典などの文献を使って説明する部分にはさほど興味を覚えませんでした。たとえば、Nakedは性的なものを含めて赤裸々になることであり、そこには羞恥心が付随します。けれども「Nude is a form of dress」と表現されるように、Nudeは自分をまったく曝け出すことなくオブジェクトになることだと彼女は説明します。アメリカがキリスト教文化の国だからなのか、Rooneyが若くて美しい女性だからなのか、必要以上に長い説明のような気がしました。
それよりもっとモデル心理を掘り下げてほしかったというのが私の本音です。
たとえば、Rooneyをモデルとして雇ったJeremyやDavidとのエピソードからは、モデルとアーティストとのセクシャルでもアセクシャルでもなく、他人でも恋人でもない、微妙な関係を想像することができ、ここは読んでいて面白い部分でした。

さて、この本により求めていた答えが得られたかというと、隣町の不動産エージェントとの会話の後に覚えた「もっと突き詰めて知りたい」という物足りなさは同じです。
もしRooneyがこれほど美しい女性でなかったなら、もっと面白い本になっていたかもしれません。それがちょっと残念です。

●ここが魅力!
ヌードモデルがどういうものかを知らない人にとっては、モデルがどういうことをするのか、料金はいくらなのか、使うアーティストはどんな人なのか、モデルとアーティストの関係はどうなのか、などの好奇心を満足させることができるでしょう。
また、高尚なアートではなく、普段着のアートの世界を覗き見することもできます。
引用からはアートの歴史を少々学ぶこともできます。

●読みやすさ ★★☆☆☆
特に難しい文章ではありません。大学で創作を教えているだけあって簡潔です。
でも、引用や解説が多く、大学の論文を読んでいるような気がする箇所もあり、入り込みにくい感じがあるでしょう。

●アダルト度 ★☆☆☆☆
テーマはヌードで売春やストリップとヌードモデルの差などの説明もありますが、内容はきわめてマイルドです。