マイケル・クライトンの後継者と呼ばれるテクノスリラー作家Suarezの新作『Influx』

著者:Daniel Suarez

ハードカバー: 416ページ

出版社: Dutton

ISBN-10: 0525953183

発売日: 2014/2/20(予定)

適正年齢:PG13+(中学生以上、だがバイオレンスシーンあり)

難易度:中級レベル(高校英語をマスターしたレベル。分からない単語は多いかもしれないが、解釈の必要がないシンプルで短い文章)

ジャンル:テクノスリラー/SF

キーワード:防衛機関、テロ、テクノロジーの発達と人類の存続

 

世界を変えるような発見は、巨大な企業や有名大学のラボでは起こらない。世間から落ちこぼれとみなされているような個人が、廃品や借り物を利用してガレージや地下室に作った仕事場で生まれるものなのだ。マイクロソフトもアップルもそうだった。規定の環境に順応できるような者には、これまで誰も想像できなかったような発明はできないものである。物理学者のJon Gradyには数字が色で見えるsynesthesia(共感覚)があり、世界の把握も通常の人とは異なる。環境に適応できないGradyは在宅教育ですべてを学び、大学も中退していた。その彼が小さなラボでついに発明したのが、重力を反射(mirror)する技術だった。

だが、その成功を祝っているときに神の教えに背く科学を否定する宗教テログループがラボに侵入し、全員を拉致し処刑した。テログループの首謀者Cottonはその状況をビデオに撮って世界に宣告するが、実はそれは「やらせ」だった。

(さらに…)

humanityの敵は誰なのか?娯楽作品でありながら哲学的なテクノスリラーーFreedom

Daniel Suarez
416ページ(ハードカバー)
Dutton Adult
2010/1/7
テクノスリラー/SF(とも言えないことはない)/コンピューターゲーム

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2009年テクのスリラー最大のデビュー作Daemonの続編。

前作を読んでいない方はネタバレがあるので下記を飛ばしてください

国家の機密を隠すためにDaemonによる大量殺人の罪を着せられて処刑された刑事のSebeckは、DaemonのクリエーターSobolのプログラムにより命を救われ、あるクエストを命じられる。だがそのクエストが何であるのかは誰にも明らかにされていない。

一方、Daemonによる大量殺人の捜査で初期にSebeckを援助し、次いでFBI特別捜査官Roy MerrittとNSA( National Security Agency)の特別チームリーダーNatalie Philipsを援助したJon RossもDaemonが作り上げたD-space(ダークスペースという名のサイバースペースで繋がる社会)に移る。その理由は、民間軍事会社を通じて世界の企業と政府を牛耳るThe MajorがDaemonを乗っ取るのを阻止し、humanity(人間性)を守るためだった。Sobolは最初のうちはLokiのような反社会的な性格異常者をリクルートしていたが、D-spaceは今よりも良い社会を求める理想家たちが集まるようになっていた。通常の名前や肩書きはなく、業績や関わった人々からの評価でレベルが決まるD-spaceはSobolの専門だったオンラインゲームの世界と似ている。

現状の世界での悪を代表するThe MajorとD-spaceのLokiの戦い、愛するJon Rossの誘いを断って米国への忠誠を誓うPhilips、Humanityの行方、などまったく飽きることがない展開である。

● ここが魅力

Daemonは、発売と同時に読み、見ず知らずの新人作家Suarezに「この本は絶対に売れる!」とemailを出したほど深く衝撃を受けた作品でした。私の予言通りDaemonはニューヨークタイムズ紙のベストセラーになりましたが、実を言うと、続編でがっかりするのではないかとずっと心配していたのでした。
続編のARCを入手してすぐに読み始めなかったのは、The Girl Who…シリーズの第三部でちょっとがっかりしたこともあります。でも、読み始めてそんな心配がまったく無駄だったことを知りました。ともかく、スピーディーだし、D-spaceは、ゲームの世界を知らない私のような人でもインターネットに慣れていれば、「そういえば、こういう世界になってきてるよな」と納得できます。特に、HUD(ヘッドアップディスプレー)眼鏡を装着するとそれぞれの人物の情報がついたcall-out(付記)が現れる、という発想がおもしろいです。付記には、その人の名前(これがハンドル名というところが傑作)、職種とレベル、reputation score(何人が評価して5つ星評価のいくつかというアマゾンの読者評価のようなもの)が現れ、この世界では肩書きよりもそれで判断される、というのは現代の民主主義かもしれません。

DaemonよりもFreedomのほうが面白いと感じたのは、前回この世界の秩序を乱す存在であったDaemonに、Humanityを救うための唯一のツールというアングルが生まれたことです。「現在の社会には民主主義があると思い込んでいるが、実は政府すら操る企業に支配されているだけではないか?」という問いかけは、決して作り事の世界のものではありません。

●読みやすさ ★★★☆☆

ブンガクではありませんから、解釈の必要がない文章です。あれこれテクニカルな用語は出てきますが、IT系の方やゲームに慣れている方はこの世界を把握しやすいので、かえって読みやすく感じるかもしれません。

●アダルト度 ★★★☆☆

ロマンスに関してはほぼプラトニックですが、拷問や殺人の部分がビビッドなので、小学生には向きません。私はバイオレンス苦手なので痛い部分の詳細はけっこう飛ばしました。

●Freedomの前編

Daemon

近未来軍事テクノスリラーe-book無料購読-Weapons of Choice

近未来軍事テクノスリラーという風変わりなジャンルのThe Axis of Time Trilogy(三部作)の第一巻、Weapons of Choiceです。今年2月に作者John Birminghamの新作が発売されたのでそのキャンペーンとして出版社と作者が過去の作品を無料提供しています。

(あらすじ)
時は近未来の2021年。国連のある戦闘グループはインドネシアでの民族浄化を止める指令を受けるが、ある実験の失敗でグループの戦闘員たちは第二次大戦中の1942年の米軍艦隊の中に飛んでしまう。米軍とともに日本の戦艦との闘いに巻き込まれるが、人種が混じり、女性もいる未来から来た戦闘グループは、白人男性優位の1942当時の米軍の軍人たちとぶつかる。

オンラインで読みたくない方は、コンピューターにPDFファイルをダウンロードしてお読みください。

14772050-Weapons-of-Choice-by-John-Birmingham-full-book.pdfをダウンロード

Weapons of Choice by John Birmingham (full book)http://d.scribd.com/ScribdViewer.swf?document_id=14772050&access_key=key-222w03rqfzn7dhlmtw4q&page=1&version=1&viewMode=

本の形で読みたい方はこちらを

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Daemon -今年最大のテクノスリラー

著者:Daniel Suarez

20091月発売

テクノスリラー/現代文学

私はローテクでコンピューターゲームにはまったく興味がない人なのですが、IT 技術やコンピューターゲーム、情報セキュリティを満載したテクノスリラーDaemonにはぞっこん惚れ込みました。作者のSuarezに「これは稀にしか生まれないモンスターだ!」というファンレターを出したほどです。ともかくものすごい才能を感じさせる本です。

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コンピューターゲームの天才クリエーターで「サイバーストーム」というゲーム会社のCEOマシュー・ソボルが脳腫瘍で死去したことがオンラインニュースで伝わる。このニュースが引き金になり、ソボルが生前にプログラムしていたDaemon(注:IT用語辞典によると、UNIXOSにおいて、バックグラウンドで動作するプログラムのこと)が動き出す。最初は2人の社員の死だったが、担当の刑事は徐々にこれが単純な殺人事件ではないことを悟り、頑固に通常の対応をして状況を悪化させてゆくFBIとは別に個人的に調査を進めてゆく。だが、彼自身も実はソボルが生前にプログラムしていた駒のひとつだったのだ。Daemonは大企業を操り始め、阻止しようとするFBICIANSANational Security Agency)などの政府機関すら非力な存在になってくる。

Daemonには、担当刑事のピーター・セベックやフリーランスのコンピューター技術者のジョン・ロスなど重要な登場人物はいるがはっきりした主人公はない。主要人物の感情的な相互作用そのものがあまり重要ではない。この物語では、防衛機関や大企業でフリーランスのシステムコンサルタントをしてきた作者だからこそ描ける、テクノロジーのリアリスティックな破壊力が主人公である。オンラインゲームのファンであればそれに近いビジュアル感覚を得るかもしれない。ともかく、Daemon(と作者Suarez)の非情な攻撃には最初から最後まで休憩する暇がない。

ひとつだけ文句をつけるとしたら、エンディングのあいまいさであろう。

続編が期待される。

読者からは、「マイケル・クライトンの再来!」、「マイケル・クライトンより優れた才能!」という声が聞こえるが、私は少し「リング」を連想した。

●読みやすさ ★★☆☆☆

コンピューターの技術系でオンラインゲームをやっている人であれば、きっと読みやすく感じるでしょうが、技術に疎く、ゲームをしない私のような人には難しい単語が出ています。

それと、登場人物が多く、しかもそれぞれの名前が懲りすぎで覚えにくいのも困ったところです。たぶん現実を反映しているだけなのでしょうが。

●ここが魅力!

この本は、実は2年ほど前に別名で自費出版され、それがネットで人気になり大手出版社からの出版が決まったものです。読者の熱意が出版社を動かしたところからも、この作品に魅力があることは確かです。

まずの魅力は題材の斬新さです。それから、リアリティある大惨事を描ける深い知識と腕前です。まるで映画のように映像が浮かんできます。ふだんこの手の小説にはあまり引き寄せられない私でも途中で本を置くことができずに深夜まで読み続けたくらいです。

でも「感動」を求める本ではありません。

●アダルト度 ★☆☆☆☆

バイオレンスのシーンは沢山ありますが、ゲームの世界ってこんなものなのかもしれませんね。

この本の邦訳は講談社から出版されるとのことです(著者からの情報により2月9日追記)。

追記:Daemonの続編Freedomが発売されました。書評はこちらです。

Sphere

作者:Michael Crichton

1987年刊

ジャンル:SF/心理サスペンス・スリラー

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南太平洋の海底で300年から1000年前に地球に衝突したとみられる宇宙船が発見された。合衆国政府は、この宇宙船を調査するために数名の科学者を極秘に集める。海軍中佐、宇宙物理学者、女性動物学者、数学・論理学者、そして主人公の心理学者Norman Johnsonの五人は深海にもぐり、球形(sphere)の宇宙船を調査することになる。外界から切り離された深海で彼らが発見したのはUFOではなく、説明不可能な事実だった。人工の居住地で孤立した科学者たちに次々と恐ろしい出来事が起こり、心理的に追い詰められた彼らは互いを疑うようになる。どうやらすべての異常な現象はSphereが原因のようだ。この球形の物質はいったい何なのか?はたして彼らは生還することができるのか?

●読みやすさ ★★☆☆☆

マイケル・クライトンの文体は簡潔で会話も多く、読者を引き込むのが上手な書き手として有名です。ただし、専門用語や省略語なども頻繁に出てきますから、そこを「読みにくい」と感じる方がいるかもしれません。完璧に理解できなくても物語の展開を追うことはできますから、いちいち単語を調べずに先に進むことをお勧めします。

また、登場人物の紹介と状況の説明に費やされる最初の部分は退屈に感じるかもしれませんが、いったん奇妙な出来事が起きはじめると、途中でやめることができなくなります。最初のうちは軽く読み飛ばしましょう。

●ここが魅力!

なんといっても、説明不可能で不気味な出来事が次々に起こるハラハラどきどきの展開はクライトンならでは。人間の精神に関連した超常現象を扱っていても科学的に説得力があるのは作者が医師の資格を持つ科学者だからでしょう。

超常現象の謎だけでなく、登場人物の心理ドラマも加速度的に高まってきます。徹夜してでも読み終えたくなる、読み終えてもすぐには眠れない、そこがこの本の魅力です。

映画化もされていますが、(あまりできの良い作品ではないようなので)そちらは観ないことをお勧めします。

●アダルト度 ★★☆☆☆

中学生以上。

アメリカ人でも小学生が読まないのは、コンセプトを十分に理解できないのと悪夢を見る可能性があるからです。科学や人間の精神性といったサブジェクトに興味を持ち、すぐに怖がらない性格であれば小学校高学年から楽しめるでしょう。

●この本を楽しんだ方にはこんな本も……

Jurassic Parkby Michael Crichton

The Andromeda Strainby Michael Crichton

The Hostby Stephenie Meyer

I Am Legend by Richard Matheson