Category: ミステリー/スリラー/サスペンス
優れたストーリーテラー-Jodi Picoult
Jodi Picoultは、好きというよりもストーリーテラーとしての力量を尊敬している作家です。毎年のように新刊を上梓する多作にもかかわらず、社会的に異論の多い重いテーマを取り上げ、綿密な取材をしたうえで、「あなたなら、どうする?」と問いかける作品に仕上げます。Picoultのお得意は、時事、医療、法律を織り込んだ心理スリラーです。登場人物が多いので混乱しやすく、専門用語も頻発します。慣れれば読みやすい作家ですが、英語に慣れている必要はあります。読みやすさのレベルは★★☆☆☆です。 最近発売された「Handle With Care」はすぐさまニューヨークタイムズ紙の1位に踊り出ました。それだけファンが多いということでしょう。あまりにも作品数が多いので、Jodi Picoultを読んだことがない方はどれを手に取ればよいか迷うのではないかと思います。それぞれの書評は後日加えますが、とりあえず以下は私が個人的におすすめする順です。 1.My Sister’s Keeper http://rcm-jp.amazon.co.jp/e/cm?t=yukariscott-22&o=9&p=8&l=as1&asins=0743454537&md=1X69VDGQCMF7Z30FM082&fc1=000000&IS1=1<1=_blank&m=amazon&lc1=0000FF&bc1=FFFFFF&bg1=FFFFFF&f=ifr&npa=1 http://rcm.amazon.com/e/cm?t=yofaclja-20&o=1&p=8&l=as1&asins=0743454537&md=10FE9736YVPPT7A0FBG2&fc1=000000&IS1=1<1=_blank&m=amazon&lc1=0000FF&bc1=FFFFFF&bg1=FFFFFF&f=ifr&npa=1 遺伝子操作や臓器移植などに関する生命倫理がテーマ。13歳のAnnaは、稀なタイプの白血病に罹患した姉を救うために、遺伝子操作(人工授精の受精卵で遺伝子が合致したもののみを着床させる方法)で生まれた。これまですでに何度もドナーの役割を果たしてきたが、ついに姉に腎臓提供をすることを求められる。子供を救うために新たな生命を生み出すことは倫理に反するのか?ドナーとして生まれた妹に拒否する権利はあるのか?兄弟や姉妹が難病にかかっているときに、ほかの子供たちが受ける心理的なトラウマとは?登場人物が多いにもかかわらず、それぞれの心理や理念が鮮やかに描かれている。読者が自分の信念を自問せずにはいられなくなる重い作品である。誰も予測できない結末には、しばし呆然とするだろう。 2. Nineteen Minutes…
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Black Out-複雑なプロットの心理サスペンス
作者:Lisa Unger2008年5月初刊ジャンル:心理ミステリー/サスペンス Ungerファンには少々物足らないかもしれない心理スリラー http://rcm-jp.amazon.co.jp/e/cm?t=yukariscott-22&o=9&p=8&l=as1&asins=0099522152&md=1X69VDGQCMF7Z30FM082&fc1=000000&IS1=1<1=_blank&m=amazon&lc1=0000FF&bc1=FFFFFF&bg1=FFFFFF&f=ifr&npa=1 裕福な家庭の主婦アニー・パワーズの本当の名前はオフィーリア・マーチ。けれどもそれを知るのは夫のグレイとその両親だけ。誰にも言えない理由は、オフィーリアが十代のころに連続殺人者マーロー・ギーリーの共犯者とみなされていたから。当時事件を追っていた民間軍事会社のオーナーの息子グレイがオフィーリアに恋をし、彼の計らいでグレイの父の会社がオフィーリアの死を偽って新しいアイデンティティを獲得したという過去がある。心的外傷の後遺症でアニーには当時の記憶が欠けているが、死んだと思われているマーローが戻ってくると固く信じ、恐れている。彼女をがんじがらめに縛る夫の父親、汚職警官、そして夫のグレイのそれぞれが謎の行動を取り、アニーは自らと愛娘を救うために勇気を奮い起こす。 Ungerの「Beautiful Lies」と「Sliver of Truth」の2作に比べると、(それらの続編ではありません)Black Outはストーリーにまとまりがなく、スピードにも欠けるように思います。記憶がフラッシュバックで戻ってくるというアイディアは良いのですが、そのせいでかえって読みにくさを感じるかもしれません。Ungerのファンでなければ、十分興味深い心理スリラーだと感じるでしょう。けれども前の2作と同じようなドラマと興奮を期待するファンはやや失望するかもしれません。 ●ここが魅力!それでも平均的なサスペンスに比べるとダントツ面白いことは確かです。Ungerの過去2作のように真相を知りたくて最後まで一気に読んでしまえるでしょう。 ●読みやすさ ★★★☆☆ 難しい単語はほとんどありませんし、たとえ分からない単語があってもストーリーにはついてゆけると思います。 ●アダルト度 ★★★☆☆大人向けの本としては平均的といえるでしょう。 ●そのほかのUngerの作品…
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ダークでセンシュアルな歴史ミステリー-What Angels Fear (Sebastian St. Cyr Mystery 1)
作者:C.S. Harris (Candice Proctorのミステリー用ペンネーム)2005年発行歴史ミステリー(19世紀英国)/政治スリラー/ロマンス(やや) 政治的策略、スパイ、過去ある女優、猟奇殺人……一度読み始めると病みつきになる、19世紀ロンドンの上流階級を舞台にしたダークなミステリーシリーズ http://rcm.amazon.com/e/cm?t=yofaclja-20&o=1&p=8&l=as1&asins=0451219716&md=10FE9736YVPPT7A0FBG2&fc1=000000&IS1=1<1=_blank&m=amazon&lc1=0000FF&bc1=FFFFFF&bg1=FFFFFF&f=ifr&npa=1 http://rcm-jp.amazon.co.jp/e/cm?t=yukariscott-22&o=9&p=8&l=as1&asins=0451219716&md=1X69VDGQCMF7Z30FM082&fc1=000000&IS1=1<1=_blank&m=amazon&lc1=0000FF&bc1=FFFFFF&bg1=FFFFFF&f=ifr&npa=1 「What Angels Fear」は、昨日(3月20日)ご紹介したCandice Proctor(ミステリー用ペンネームC.S.Harris)のSebastian St. Cyr ミステリーシリーズの第一作です。 1811年の英国が舞台。絶望的な出来事を忘れたいがために戦地に諜報員として赴いたデヴリン子爵のSebastian…
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私が好きな作家(1)-Candice Proctor
Candice Proctorには沢山の名前があります。本名のCandice Proctor名で書いているのは歴史ロマンス、C.S. Harris名で書いているのは歴史ミステリー(彼女の存在を知ったのはこれがきっかけ)、そしてご主人と共著している政治スリラーではC.S. Grahamという名前を使っています。 いずれも次世代に残るような高尚な文芸作品ではありませんし、大ベストセラーになるほど大衆ウケする娯楽作品でもありません。また、私が最も好きな作品を書いた作家でもありません。でも、「好きな作家のベスト10」を挙げるとしたら、たぶんその一人に入るでしょう。それは、登場人物に反映している彼女が好きだからです。 Candiceの父親は米国空軍諜報機関の管理職を務めており、彼女はドイツで育ちました。退職して大学教授になった父親の転職にともない米国に戻りますが、勉強ができるのに学校が大嫌いで、教師や体制と戦いすぎたのか高校を首席で卒業した生徒が行う慣わしになっている卒業式のスピーチをさせてもらえなかったというエピソードもあります(このあたり、私がすご~く共感するところです)。大学では考古学とラテンとギリシャの古典を学び、発掘にも参加しています。卒業後、オーストラリア、アジア、アフリカ、ニューギニア…と世界中を旅したのち、イギリスで発掘に参加し、CIAからリクルートもされました。中東の歴史で学士号を取り、18、19世紀ヨーロッパの歴史で博士号を取得したCandiceは、大学助教授の職に就きます。結婚相手は、ベトナム戦争も経験した軍人(現在は退職)です。彼もまたCandiceの父親のように陸軍諜報機関の士官でした。 放浪癖がある彼女はなかなかアカデミックな職に落ち着くことができず、本を書くことを考え付きます。「出版するのが容易だから」という理由でロマンスブックを書くことに決めますが、本人自身がロマンスブックファンではないために、なかなか出版されなかったいきさつをCandiceはこんなふうに書いています。ロマンスの分野に対する私の心境を完璧に代弁してくれています。(Candice Proctorのサイトより引用) I decided to try romances both…
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アメリカ人男性に人気のスリラー-The Girl with the Dragon Tattoo
著者:Stieg Larsson2008年9月初刊スリラー/ミステリー すべてがパッケージになったエキサイティングなミステリー http://rcm-jp.amazon.co.jp/e/cm?t=yukariscott-22&o=9&p=8&l=as1&asins=1847245455&md=1X69VDGQCMF7Z30FM082&fc1=000000&IS1=1<1=_blank&m=amazon&lc1=0000FF&bc1=FFFFFF&bg1=FFFFFF&f=ifr&npa=1 http://rcm.amazon.com/e/cm?t=yofaclja-20&o=1&p=8&l=as1&asins=0307269752&md=10FE9736YVPPT7A0FBG2&fc1=000000&IS1=1<1=_blank&m=amazon&lc1=0000FF&bc1=FFFFFF&bg1=FFFFFF&f=ifr&npa=1 スウェーデンビジネス界の大物のスキャンダル記事を書き名誉毀損罪で実刑判決を受けたジャーナリストのBlomkvistは、パートナーと発行しているビジネス雑誌の経営危機に直面する。雑誌を守るために一時的に第一線を退いたBlomkvistは、自分を訴えた男の敵であるビジネス界重鎮から何十年も前の姪の失跡の謎を解明するように依頼される。Blomkvistが偶然にパートナーを組むことになったのは、体中にピアスをしドラゴンの刺青がある天才ハッカーのSalanderだ。小柄で少女にしかみえないSalanderは、アスペルガー症で精神的なトラウマを抱えているので他人を信用しないし寄せ付けない。けれども、しだいにBlomkvistにはなついてくる。The Girl with the Dragon Tattooは、ひと癖もふた癖もある登場人物たち、複雑なプロット、スピーディーな展開、ダークな秘密、バイオレンス、そしてロマンスとすべてがパッケージになったスリラー/ミステリーである。ミステリーとしてはやや弱い部分もあるが、スウェーデン語の英訳ながらこれだけアメリカで人気が出たのは、パッケージとして優れているからだ。特にビジネスマンの男性ファンが多いのは、作者のLarssonが実際にビジネス分野でのジャーナリストだから思考回路が似ていることもあるかもしれないが、実は独立心がある魅力的な女性たちが放っておけないBloomkvistの受動的なプレイボーイぶりに感情移入しているからではないかと私は推察している。The Girl with the Dragon…
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オンライン洋書無料購読-A Dangerous Man
ベストセラー作家Charlie Hustonのデビュー作で人気の「Hank Thompson」シリーズ第3作、A Dangerous Man。 第1作と第2作は一昨日と昨日のブログでどうぞ。キャンペーンが終了すると読めなくなりますので、お早めにどうぞ。 (注:本ブログでご紹介するのは、著者または出版社のキャンペーンとして無料になっているもの、あるいは著作権が消失したものです。キャンペーンが終了するとこのページでも読めなくなりますので、ご了承ください) A Dangerous Man by Charlie Hustonhttp://d.scribd.com/ScribdViewer.swf?document_id=8783983&access_key=key-9gi9gqqupd0lkyq455w&page=1&version=1&viewMode= Publish at…
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オンライン無料購読-Six Bad Things
ベストセラー作家Charlie Hustonのデビュー作で人気の「Hank Thompson」シリーズ第2作、Six Bad Things。 第1作は昨日のブログでどうぞ。第3作は明日アップの予定です。キャンペーンが終了すると読めなくなりますので、お早めにどうぞ。 (注:本ブログでご紹介するのは、著者または出版社のキャンペーンとして無料になっているもの、あるいは著作権が消失したものです。キャンペーンが終了するとこのページでも読めなくなりますので、ご了承ください) Six Bad Things by Charlie Hustonhttp://d.scribd.com/ScribdViewer.swf?document_id=8783270&access_key=key-2c4vnfv749yamklzvkko&page=1&version=1&viewMode= Publish at…
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オンライン無料購読-Caught Stealing
ベストセラー作家Charlie Hustonのデビュー作で人気の「Hank Thompson」シリーズ第一作、Caught Stealing。 高校野球の花形だったハンク・トンプソンは、いまやしがないバーテンダー。アル中で借金を抱えているうえに、とんでもない問題に巻き込まれてゆきます。ドラッグとバイオレンスが満載のポップスリラーで、こういうジャンルが好きな人にとっては癖になる作品とのこと。続編2作も後日アップする予定です。 (注:本ブログでご紹介するのは、著者または出版社のキャンペーンとして無料になっているもの、あるいは著作権が消失したものです。キャンペーンが終了するとこのページでも読めなくなりますので、ご了承ください) Caught Stealing by Charlie Hustonhttp://d.scribd.com/ScribdViewer.swf?document_id=8784446&access_key=key-1rytfcacneuexn4v7yy9&page=1&version=1&viewMode= Publish at Scribd or…