中国式子育てが世界で一番だと信じるモーレツ教育ママの「自伝」Battle Hymn of the Tiger Mother

Amy Chua
ハードカバー: 256ページ
出版社: Penguin Press (2011/1/11)
ノンフィクション/回想録/教育・子育て
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このブログにそろそろ作るべきなのは「著者を儲けさせるのは嫌だが、紹介せざるを得ない本」というカテゴリーだろう。これまでの代表的な作品にサラ・ペイリンの”ノンフィクション”がある。

自分で書いてもいないのに「ニューヨークタイムズ紙ベストセラー作家」を自称するペイリンと同じカテゴリーに入れたことがバレたら、自称「タイガーマザー」の著者に頭から喰われてしまうかもしれないが、私の中では「Battle Hymn of the Tiger Mother」のAmy ChuaとSarah Palinの姿が重なるのである。

(さらに…)

小説が苦手な方が楽しめる簡単な洋書- The Number Devil

Hans Magnus Enzensberger (著),
Michael Henry Heim (著, 翻訳),
Rotraut Susanne Berner (イラスト)
264ページ(ペーパーバック)
Holt Paperbacks
小学校高学年から中・高校生/数学が好きになる本

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娘が通っていた小学校は、米国にありますがアジア系が多く、中国系の方が経営している公文式に幼稚園前から通っている子が沢山います。そういった子は計算が速いので、私の娘は小学校低学年の頃「私は数学(こちらでは算数、数学とは分けない)ができない」と自信を失っていました。そこで私は「速く計算できることは数学ではない。お母さんが後に証明してみせますから、安心していなさい」と保証しました。

(さらに…)

女の子と男の子の脳は生まれつき異なるのか?− Pink Brain Blue Brain

Lise Eliot
432 ページ
Houghton Mifflin Harcourt
2009年9月14日発売予定
脳神経学/発達心理/教育/子育て/ノンフィクション

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Simone de Beauvoirは「第二の性」で"One is not born, but rather becomes, a woman「人は女に生まれるのではない、女になるのだ」"と論じた。だが、そう信じて育った世代の高学歴/専門職の女性たちが母になってみて、息子が人形には見向きもせずにトラックを選んだり娘がバービー人形を欲しがるという体験をして「やはり男女差は生まれつきのものなのか?」という疑問が生まれるようになった。双子のケーススタディなどだけではなく脳神経科学の分野での研究を通じて科学的に男女差を分析する試みが増えている。

だが、メディアで話題になるのは、人目をひく研究結果だがよく内容を見るとネズミを使った実験でしかなかったり、条件が整っていなかったり、信憑性に欠けることがある。また、売れるのは “Men Are from Mars, Women Are from Venus”といったステレオタイプの男女差を強調するものが多く、実際のところ男女の脳が生まれつき異なるのかどうかをきちんと掘り下げたものはあまりない。

そういう意味で、脳神経学者で母親のLise Eliotが書いた Pink Brain Blue Brainは、科学的でもあるしバランスの取れたまれな本である。 Lise Eliotはハーバード大学、コロンビア大学大学院卒業でThe Chicago Medical School of Rosalind Franklin University of Medicine and Scienceで脳神経学の助教授をつとめている。男性がマジョリティの世界で戦い、しかも男の子と女の子の母親でもある。男の子の脳と女の子の脳を比較分析するのにこれ以上の適任者はいないだろう。それぞれの実験結果が実際に何を意味するのかをふつうの母親(もちろん父親)にもわかりやすく説明している。

300ページにもわたる本の簡単な結論を書くことは無理だが、あえてまとめるとこんな感じである。

  • 子宮内で浴びたホルモンと思春期のホルモン分泌が男女の脳に生物学的な差を与える。
  • 男女の生物学的な差やホルモンの影響は存在するが、実験動物とは異なり人間の場合その差はさほど大きなものではない。
  • 男の子(男性)はspatial skills(空間能力)が優れており、数学が得意であるが、攻撃性や競争心が強く、言語能力では劣る。
  • 女の子(女性)は言語能力やemotional intelligenceでは優れているが、空間能力でおとり、失敗を恐れることを含む恐怖心が強い。
  • 生物学的な傾向はあるものの、社会環境の影響のほうが大きい。
  • 攻撃性、同情心、恐怖心、競争心、などについてはもともとは小さな差異なのだが、 親や教師といった社会環境の影響の積み重ねで成長したときには大きな差異になっている。
  • 子供に対する親や教師の言動により、大人になったときの男女差は現象する。また男女の差異を少なくし、play fieldを公平にするための教育方法を提案。

Eliotは、誕生から5年間の乳幼児の脳の発達を解説した“What’s Going on in There? How the Brain and Mind Develop in the First Five Years of Life”の作者でもある。

なおコンテンツは下記のとおり

  1. Pink and Blue in the Womb
  2. Under the Pink or Blue Blankie
  3. Learning Through Play in the Preschool Years
  4. Starting School
  5. The Wonder of Words
  6. Sex, Math, and Science
  7. Love and War
  8. Truce Time

●この本の良いところ

科学的な根拠を多く紹介し、すべての研究結果を公平な視点で解説しています。また、非常にバランスが取れた見方をしています。子育てには関係ない方でも、研究結果の数々を読むだけで楽しめます。

また、女性科学者やビジネスウーマンたちが平等に活躍できる環境や感性豊かな男性を受け入れる環境作りにはおおいに賛同します。男性でも娘を持つ父親として、女性でも息子を持つ母親として、男女が公平に扱われることを望まない人はいない、と思いたいです。

解決策についてとくに賛成した箇所:

1. 女の子にスポーツを勧めているところ

私の娘がそうですが、幼いころから男女一緒の水泳チームに属していると、小学校では体が小さくても同級生の男の子よりも強くて速く、男の子に劣っているという感覚を抱かずに育つようです。その自信は高校生になった今でも続いているようです。また、幼いときから球技をやっていると、女性が苦手といわれるspatial skills(空間能力)が身に付きます。これもプラスです。(ただし、私の観察では水泳ばかりやっていると空間能力が減退するようで、トップスイマーは球技が苦手みたいです)

2.男の子の言語能力をのばすための働きかけ(私は男女に関係なく働きかけるべきと思いますが)

実にシンプルな解決策:"The more you talk, or read, or write, the more facile you become at each of these skills."

フラッシュカードなどのドリル方式は避けること!でないと本を読むことが嫌いになってしまいます"Be careful, though, to avoid flash cards and other drill-and-kill methods, which will make phonics a bore and turn your child off of instead of on to reading."

●この本と私の意見が異なるところ

女性科学者の Eliotが「女は数学と科学が苦手だ」というステレオタイプをこの世からなくしたいという情熱を抱いている気持ちはよくわかります。私も、数学と科学が得意な娘を持つ母親としてアカデミックの世界がもっと女性を受け入れてくれるようになって欲しいと願います。
けれども、平均的に女の子が生まれつき数学と科学が得意ではないから幼いときから働きかけることで生物学的にadvantageがある男の子との差を縮める、という考え方には全面的に賛同できません。言語能力で劣る男の子に対して特別に働きかけるという部分でもそうです。

まず私はこの分野では個人差のほうが大きいと思うのです。

私の娘のように幼いころから本を読んでやり、語りかけて育てても、数学や科学のほうが得意で同級生の男の子よりも口数(ボキャブラリー)が少ない女の子もいます。それだけでなく、彼女が仲良くしている友人グループでは、言語能力に優れている男の子のほうが多く、女の子はみんな数学や科学のほうが得意なのです。これはたぶん「平等に育てる」ことを信じる親が多い学校なので、自然にそれぞれの個性がそのまま現れたという感じなのでしょう。劣っているからそれをおぎなう教育をする、というのではなく、どっちも適度にやればいいと私は思うのです。

次に短所に注意を払いすぎる子育てにも反対です。

私の考え方は先日ご紹介した「Einstein Never Used Flashcards」にあるように、幼いときには自発的な学びの楽しさを励ますことしかしてはならない、というものです。「短所があってもいいじゃないか。ほかに本人が好きなことがあればそれをやればいい」というのが私の考え方です

私が特に強く反論したいのは、女の子が弱いと言われるspatial skills(空間能力)を育てるために学童期にコンピューターのソフトを使うことです。私の周囲で早期からコンピューターを使った数学プログラムをやっていた子で現在「すばらしい!」という数学の才能を発揮している子はいません。それよりも、ふつうのパズル、カードゲーム、積み木、レゴ、家具の組み立て、車の修理の手伝い、ボーイスカウト、ガールスカウト、野球やサッカーといったスポーツ、をいっしょうけんめいするほうが空間能力を身につけられると思います。

また、Eliotは言語能力を身につけるwindow of opportunityは乳幼児期の早期だと説く学者のひとりですが、私は 重要であるけれども決定的ではないし、親はもっとリラックスするべきだと考えています。この時期にこだわると、どうしてもFlash cardを使ってドリル…ということになりがちですから。学童期まではもっとナチュラルな「話しかけ」と「本読み」のみに徹するべきだと思います。

●読みやすさ ★★☆☆☆

医学(解剖学)用語などがあり、この手の本を読み慣れていない方には取り付きにくいかもしれませんが、論文を読み慣れている方には小説よりもかえって読みやすいでしょう。

●関連本

1.子供の才能を殺さないために親が読む本(2)ー Einstein Never Used Flashcards

2. Men are from Mars Women are from Venus

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3. What’s Going on in There?

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子供の才能を殺さないために親が読む本(2)ー Einstein Never Used Flashcards

Roberta Michnick Golinkoff, Kathy Hirsh-Pasek, Dian Eyer
320ページ
Rodale Books
2004年8月刊行
発達心理/教育/ノンフィクション

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「アインシュタインはフラッシュカードなんか使わなかった」という魅力的なタイトルの本。

アメリカでも3歳までの親の努力でわが子を天才に育てられるという宣伝文句につられて赤ん坊にフラッシュカードで単語を覚えさせたり、モーツアルトを聴かせたり、保育園から詰め込み教育をさせたりする親が激増している。特に都市部の裕福な家庭でそれが顕著である。その社会現象に疑問を覚えた発達心理学者のGolinkoff, Hirsh-Pasek, Eyerの3人が、科学的な根拠を示して早期英才教育の無意味さ(あるいは害)と遊びの重要さを解いた非常に重要な作品。

各章は以下のとおり。

  1. The Plight of the Modern Parent
  2. Brainchild: How Babies Are Wired to Learn
  3. Playing the Numbers: How Children Learn about Quantity
  4. Language: The Power of Babble
  5. Literacy: Reading between the Lines
  6. Welcome to Lake Wobegon: The Quest to Define Intelligence
  7. Who Am I? Developing a Sense of Self
  8. Getting to Know You: How Children Develop Social Intelligence
  9. Play: The Crucible of Leaning
  10. The New Formula for Exceptional Parenting

そして親が心得るべき4つの原則

  1. The best learning is learning within reach
  2. Emphasizing process over product creates a love of learning
  3. It’s EQ(emotional intelligence), not just IQ
  4. Learning in context is real learning — And play is the best teacher

●私が特に共感を覚えた箇所

*幼い脳に詰め込み教育をすると、脳でのシナプスの接続がおいつかないほどの大量の情報が氾濫するneurological “crowding”が起こり、かえって脳の健全な発達を妨げる可能性がある。

*乳幼児もフラッシュカードで単語を覚えることはできるが、その情報と自分の周囲の実際の世界とを結びつけることはできない。このような早期の経験が脳の機能を高めるという科学的な証拠はない。

*早期教育を重視する保育園(academically oriented preschool)に通った子供と社会性を身につけることを重視する保育園(socially oriented preschool)に通った子供を比べた結果、5歳のときには前者のほうが数とアルファベットを知っていたが、小学校に入るとその差が消え、早期教育を受けた子が小学校でとくに「頭が良い」とみなされることはなく、かえって創造性と学習意欲が低いということがわかった。

*Gifted Children(天賦の才がある子)は、その分野で他の子よりも努力をせずにたやすくできる。他の者よりも質的に異なる方法で学び、大人の手助けを要さない傾向がある。要するに、天賦の才がある子は、親が押し付けなくてもみずからその分野に興味を抱き、自分でやる気をおこすものなのである(“They are not children who need to be pushed by their parents. They motivate themselves.)。(私の口癖「天才は作れない」に匹敵しますね)

*子供の体験やニーズではなくテストの結果重視の詰め込み教育に焦点を当てると、学習が苦痛な仕事になり、失敗の不安に脅かされるようになる。自然な学習は、子供の好奇心や探索から生じるものであり、それは楽しい体験である。

*赤ん坊の苛立つような繰り返しの行動(例えば、何度もスプーンを床に落とす)は、体験を通じて法則を発見しているのである。つまり子供時代の遊びは大切な学習なのである。

*幼児期、学童期で最も重要なのは遊びであり、学問という仕事ではない。子供は遊びを通じて学ぶように生まれついているのである。
“ The rats that remained in nature had the best brains of all”(この引用、個人的にとっても気に入っていますhappy01

●ここが魅力!

すでにご存知と思いますが、私は早期英才教育には反対の立場を取っており、以前にも「子供の才能を殺さないために親が読む本(1)」というブログ記事で「早期英才教育(高速計算練習やフラッシュカードで単語を覚えさせるなど)は、想像力や思考力を育てるべき時期の脳に剪定をさせてしまう危険な行動であり、せっかく子供がもって生まれた才能をかえって殺してしまうだけでなく、問題行動を取る人間を育ててしまう可能性がある」ということをお話ししました。

そのときにご紹介したこのEinstein Never Used Flashcards: How Our Children Really Learn–and Why They Need to Play More and Memorize Lessは、たぶん私の考え方に最も近いといえます。
科学的な根拠に基づいた結論ですが、普通の人にわかりやすい書き方で、しかも「どうすればよいのか」というところまで言及しています。
私もこちらでけっこう体験しましたが、「親のあなたが今ちゃんと努力しないと、お子さんが可哀想なことになりますよ」といった(よけいなお世話的)親切アドバイスをしてくる人々がいます。そういう人々に「 neurological crowding が起こると困りますから」とお断りするときに役立つ本です。
「十歳で神童、十五歳で才子、二十歳過ぎればただの人」ということわざはけっこう深いのではないかと思います

●読みやすさ ★★☆☆☆

文法的には単純で、論文を読み慣れている方にはかえって読みやすい文章です。

けれどもそれ以外の方にはとりつきにくい感じを与えるかもしれません。でも、学者さんが書いた本の中では非常に読みやすい部類です。

●最近米国で流行っていて、私が嫌な気分を覚えている早期教育のひとつBaby Sign languageのビデオ

私は学生時代に手話を学んだことがあり、手話に関してはもっと多くの人に学んでほしいと思っています。でも、このBaby Sign languageはまったく別物です。
なぜ聴覚に異常がない乳児に手話を教えてはならないか、というと、乳児はこの時期に親の声を聴き、表情を読み、通常のコミュニケーションの基礎になる学習をしているからです。何もしていないようで、けっこう忙しい大切な学びの時期なのです。そして、他人に伝えたいことがあるから言葉を発そうと努力するのです。そういった時期に母親が別の手段に集中したら、もちろん赤ん坊の脳もそちらに集中し、簡単にそれを覚えます。赤ちゃんに手話を教えてそれができるのは「すごい!天才だ!」ではなく当然の結果なのですが、健全なコミュニケーションと脳の発達のためには邪魔だと思います。neurological “crowding”のことも心配です

子供を読書好きにする方法

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米国の有名な児童書の文芸賞に Caldecott Medalというのがあります。
19世紀英国のイラストレーターRandolph Caldecottの栄誉を称えて命名されたもので、毎年 American Library Association のAssociation for Library Service to Children部門が最も優れた絵本に対して賞を与えます。
ALSCの賞には他にも有名なNewbery Medalがあり、こちらは絵本ではなく児童書が対象です。

2009年のCaldecott Medal受賞作はThe House in the Nightでしたが、メダルを逃した最終候補には優れた作品が多くあります。小学校2年生以下の子供だけでなく、絵本が好きな大人にも参考になるリストです。

Amazon.comのCaldecott Medalリスト

日本のAmazonのCaldecott Medalリスト

また、新人児童書作家のLori CalabreseExaminer.com「どうすれば子供を読書好きにできるか?」という内容のエッセイを書いていました。内容を読んだところ、娘が幼いときに私がやっていたこと(英語と日本語の両方で)とほぼ同じだったのでおおいに同感しました。ここで一部をご紹介します。
英語で本を読んであげるときにも、「英語のお勉強をしよう!」という感じじゃなくて、「一緒に楽しもうよ!」という感じが大事だと思います。読書体験を嫌なものにしてしまうと、一生その行為を避けるようになりますから、子供の反応をよく観察して、押しつけすぎないように気をつけましょう!

子供が1歳になる前から始められる方法が沢山ありますから参考になりますよ。

1. 読書を楽しい体験にしよう。
子供が楽しめる安楽な環境で本を読んであげること。膝の上に座らせたり、隣に座ってあげたりして、一緒に文字や絵がみられるようにする。

2. 本を読んであげるときに、熱意を示そう。
ブロードウェイで演じているかのように、ストーリーを読むときに熱意を込めて表現する。キャラクターによって声を変えたり、音声効果をつけたり、表情や身振り手振りを加えて表現することで、物語がもっと面白くなる。

3. 頻繁に本を読んであげよう。
毎日読書のための特別な時間(例えばランチの後とか就寝前とか)を設定する。1回の時間は子供の注意が続く範囲内で短く(5分か10分程度)、そして回数は多いほうがよい。

4.子供と一緒に 本のカバーからどんな話かを予想してみよう
読書の前に本の表紙の絵を眺めて、「どんなお話かなぁ?」と一緒に予想してみる。

5.知っている言葉やフレーズがあったら、読んでいる途中で子供が飛び入り参加するのを歓迎しよう
(「じゃましないで!」と苛立ったり、叱ったりしないでね)

    6~9は、幼い子に勧めると逆効果なのでカット。

10. 本について感想を語り合おう。
どこが一番おかしかったか、面白かったか、一番好きな登場人物や出来事は?といったことを 質問したり、答えたりする。

私たちはこれに加えて、本に出てきた食べ物を作ってみたり、本に出てくる小道具を使ったり、ぬいぐるみを使った「ごっこ遊び」をしたりしました。

自閉症の子の兄弟姉妹たちの意見-Autism and Me: Sibling Stories

著者:Ouisie Shapiro
出版社:Albert Whitman & Company
発売日:March 1, 2009
児童書
(Amazon.comによると9~12歳用だが、私が読むかぎりでは小学校低学年向け)/写真ルポ

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http://rcm-jp.amazon.co.jp/e/cm?t=yukariscott-22&o=9&p=8&l=as1&asins=0807504874&md=1X69VDGQCMF7Z30FM082&fc1=000000&IS1=1&lt1=_blank&m=amazon&lc1=0000FF&bc1=FFFFFF&bg1=FFFFFF&f=ifr&npa=1

Amazon Vine™ Programで得た本(それについてはこちらを)。
「自閉症や難病にかかっている子供と親も大変だが、その子の健康な兄弟(姉妹)がその犠牲になることが多い。親が手のかかる子=かわいそうな子に全力を尽くしているために、健康な兄弟たちは無視されているか常に『良い子』であることを強要される。そのために深刻な心理的・社会的問題を起こすことがある」と心理学者の友人から聞かされたことがあります。
それゆえ、Autism and Me: Sibling Stories(自閉症と私:自閉症児の兄弟姉妹の体験談)というタイトルと写真を見て「兄弟の視点で書いた本だ」と思いこんで期待していたのです。
送られた本は写真を含めてたったの32ページで、あっという間に読めたのはよいのですが、正直肩すかしをくったような気分でした。
自閉症の子とその兄弟姉妹が自然な笑顔を浮かべて仲よさそうに触れ合っている写真には頬が緩みますし、健康な兄弟姉妹からの「自閉症があるからといって僕の兄/姉/妹/弟は馬鹿ではない」、「弟がいてよかった」といったメッセージも自閉症を知らない子供にとっては役立つものですし、心温まるものです。たとえばこんな感じです。

I feel lucky to have a brother like Ford because I’m exposed to more things. One time we were at the beach, and we saw hermit crabs. Ford called them spiders, and I thought about how they did look like spiders. So he helps me see different points of view.

この語り手Callieは、『良い子』であることを期待されている健康な兄弟姉妹のイメージそのものです。たぶん実生活でもとっても良い子なのでしょう。でも、きっとフラストレーションがたまること、理解してほしいことはあるはずなのです。それを乗り越えたうえで、「それでも私は弟が好き」という結論に達しているのだということが、この本のどの子のケースからもうかがえませんでした。それが残念でなりません。

私がこのように感じたのは、Amazon.comのReading Levelに9-12歳と書かれていたせいもあります。9-12歳を対象にした本であればもっと複雑な心境まで掘り下げるべきですが、どう考えてもこの本は小学校低学年対象です。そう思い直してみれば、この本を学校の図書にすれば、自閉症の兄弟姉妹がいる子が気兼ねせずに自分のケースを紹介するきっかけになりますし、差別をなくすクラスのディスカッションにも使えます。そういう意味で、ぜひ小学校の図書館において欲しい作品です。日本であれば、中学校の英語の授業に使って、英語でのディスカッションに利用すると生きた英語を学ぶことができると思います。

●読みやすさ ★★★★★
★★★★★と★★★★の中間。初心者向け。Reading Levelが9-12歳と書かれていますが、絵本より少々難しい程度です。
中学校3年生くらいの英語力で十分読めると思います。

子供の才能を殺さないために親が読む本(1)

教育に関するノンフィクションを書く目的でレキシントン公立学校の運営陣と生徒を取材し、実際自分で子育てをした経験から、私は早期英才教育への反論をいくつか「ひとり井戸端会議」や「才能を殺さない教育」のほうに書いてきました。そうしたところ最近になって教育に関する書を多く出版されている糸山泰造さんという方からメールをいただきました。

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日本を離れてずいぶん経つので、恥ずかしながらそれまで糸山さんの存在を存じ上げなかったのですが、お送りいただいた「思考の臨界期」という論文を読ませていただいたところ、あまりにも私の信念に似ていてびっくりしました。
糸山さんと私の出会いのきっかけは、National Institute of Mental Healthの神経科学者Jay Giedd医学博士です。
5歳から25歳までの脳を研究してきたGiedd博士が発見したのは、脳は思春期で成長・成熟しきるのではなく、無駄な枝を剪定しつつ成長と成熟を続ける大事な時期だということです。おおまかに説明すると、将来の脳を決定するための反復学習が必要かつ有効になるのは思春期でありこの時期に"Use it or lose it(使って伸ばすか、使わずに失うか)"の剪定をするという理論です(詳しくはTimeの記事グラフィックをどうぞ)。それまでの幼児・児童期はニューロンの接続(可能性)をどんどん増やしてゆく大切な時期であり、そこで剪定(早期英才教育)をするべきではないのです。

私が幼稚園のころから高校生の現在まで追跡した子供たちの中で、幼いころから公文式で高速計算練習をし教師からも「出来る子」とみなされていた子供たちは、Giedd博士の研究結果のようにニューロンのコネクションがピークに達する11~12歳ごろから同級生と同じレベルになり、剪定が行われる高校生の現在は私の娘のように高速計算をしていない者の数学レベルにはるかに及びません。
読書力も同様です。幼稚園のときにすでに小学校高学年レベルの本(単語)が読めた2人(これもまたアジア系2世)は小学校3年生くらいから平均的なレベルの生徒になり、「お母さんが読めと押し付けるから読むけれども、読書は嫌い」と正直に打ち明けてくれた子は、読書だけでなく勉強嫌いに育ってしまったようです。
コンピューターの学習ゲームも同様の結果を生んでいます。
私のこの体験は、糸山さんが文藝春秋社から出版された「絶対学力」のこのページと不気味なほど一致しています(詳しくは糸山さん主催の「どんぐり倶楽部」をどうぞ)。

最近のアメリカの脳科学と発達心理学の研究では、糸山さんや私の信念を裏付けるものが多くなっています。
特に糸山さんの「思考の臨界期」の次の部分は日本人の若い親御さんたちに読んでいただきたいと思います。
「時期がずれている時(不自然に早く)に開発される能力は害になります。害になるから、自然には発達しないようにプログラムされているのです。それなのに、眠っている子を起こして喜んでいるような人が大勢います。幼児・児童期に目ざめた能力は一生の性格(能力によっては一生の弊害)になる場合が多いので、要注意です。」
つまり、早期英才教育(高速計算練習やフラッシュカードで単語を覚えさせるなど)は、想像力や思考力を育てるべき時期の脳に剪定をさせてしまう危険な行動であり、せっかく子供がもって生まれた才能をかえって殺してしまうだけでなく、問題行動を取る人間を育ててしまう可能性があるということです。

作家で編集者の森まゆみさんという方も新聞案内人の「わが子をよその子とくらべない」というコラムで私たちと同じような問題定義をされています。

かといって、何もしない放任主義が良いというわけではありません。12歳くらいまでは遊びや親の愛情などで脳にたっぷり栄養を与え、想像力や思考力をのばす教育をすることが大切だと思います。私は特に「やりたいことに何でも挑戦させる」ことと「自発的な遊び」を重視しています。アメリカの中・上流階級の者が高校生あたりから伸びてきて後に成功を収め、中年になっても人生を楽しんでいる秘密は、たぶんこのあたりにあると思うのです。

人生の成功とは「楽しく生きる」ことであり、教育の目的はそれを実現する技能と想像力、感受性、楽観性などを身に着けることではないかと私は思っています。

6/5追記:語学の早期教育については「親子で楽しむ読書体験」をどうぞ。

8/6追記:子供の才能を殺さないために親が読む本(2)


12/31追記:日本語圏の子供に洋書での読書を教える新プログラム「洋書ファンクラブ ジュニア」を開設しました。ぜひご覧下さい

ピクチャ 7

ということで、私が体験から共感を覚える本を今後いくつかご紹介します。

糸山さんと私が共感を覚えるタフツ大学教授David Elkindの本。この分野の先駆者として多くの発達心理学者から尊敬されている先生ですが、本はいまひとつ説得力にかけるところがあります。一冊だけ読むとしたら、古典になっているこれです。

1. The Hurried Child

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2. Elkindの本より読みやすく、説得力があるのが3人の心理学者が共著したEinstein Never Used Flash Cardsです。アインシュタインはフラッシュカードなんか使わなかった、というタイトルがいいですね。「どうすればよいのか」というところまで言及しています。書評は子供の才能を殺さないために親が読む本(2)をどうぞ。

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3. そして一生を通じての遊びを奨励するおすすめ本Play