渡辺由佳里 x 大原ケイ トーク「読まずに2018年を越せないベスト翻訳書はどれだ?」

12月の帰国中に、文芸エージェントの大原ケイさんと何度かトークイベントをご一緒させていただきました。
京都のイベントに使わせていただいた、京町家「ゲストハウス&サロン 京都 月と」は京町家を改装されたもので雰囲気たっぷりでしたし、錦市場のすぐ近くにある「Salon ABCafe」は、居心地が良い隠れ家のようでどちらも楽しかったです。

大原さんは、アメリカ出版業界のメッカであるニューヨーク市で長年文芸エージェントとして活躍してきた方で、実際にお会いする前から互いの存在をブログで知っていたという関係です。これまでも帰国のたびに本やアメリカの政治についてトークをしてきました。

2018年の帰国でも今年注目の英語の出版物や、時勢を反映したアメリカのベストセラーなどについて語り合いましたが、東京の下北沢の「本屋B&B」でのイベントでは、「翻訳書」に絞ってお薦めの本について語りました。

85人も参加してくださったのですが、実際に足を運べない方のほうが多かったと思いますので、リストだけでもここでご紹介させていただきます。

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カズオ・イシグロ氏がノーベル文学賞受賞

Screen Shot 2017-10-05 at 9.30.12 AM10月5日、長崎生まれのイギリス人作家カズオ・イシグロ氏がノーベル文学賞を受賞した。

イシグロ氏は、1982年に27歳で作家デビューしてから62歳の現在まで長編小説は7作しか刊行していない寡作な作家だ。

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Kindle Unlimited(キンドル読み放題)の隠れたメリット

アマゾンがアメリカで2014年7月に始めたKindle Screen Shot 2016-08-25 at 4.45.32 PM.pngUnlimited(キンドル読み放題)のサービスが、今年ようやく日本でもスタートした。アマゾンがリストアップした12万冊以上の本、コミック、雑誌および120万冊以上の洋書作品を、月額980円で読み放題できるというものだ。

アメリカでは、オーディオブックも無料で読める作品があるが、日本のサービスにはそれは含まれていない。だが、その代わりに、コミックを含む和書と洋書の両方が楽しめるというメリットがある。

この記事に書いたが、私はアメリカでの公式スタートより前から2年以上Kindle Unlimitedを試している。その体験から、「毎月980円払う価値があるのだろうか?」といった疑問も含めて、メリットとデメリットを語りたい。

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アメリカSF界で繰り広げられているカルチャー戦争の犠牲になったヒューゴー賞 Sad & Rabid Puppies

ヒューゴー賞(Hugo Awards)は、世界中のSFファンが注目するSF、ファンタジー、ホラージャンルの重要な賞である。
受賞作は世界SF大会(ワールドコン, World Science Fiction Convention)に登録したファンの投票で決まり、大会の間に開催される授賞式で発表される。気取った文芸賞とは異なり、批評家ではなくファンが決める賞なので、必ずといって良いほど面白く、ベストセラーにもなる。そういった点で、とても信頼性がある賞だった。……少なくともこれまでは。

hugoところが、このヒューゴー賞が社会政治的なバトルグラウンドになってしまったのだ。

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アマゾンの出版社はマクドナルド……いや、1000円で食べ放題ビュッフェかな?

アメリカのAmazon.comを継続してチェックしている人は、奇妙な現象に気づいているのではないだろうか。

kindleのベストセラーリストには2000とか3000とかすごい数の読者レビューの作品がある。しかも、90%くらいが星5つ。

その自体は不思議でもなんでもない。

けれども、これまで見たことも聞いたこともない著者と出版社のものがけっこう多いのに首をかしげる。

たとえば、下記のような作品である。
Angelfall

表紙もけっこういい感じのファンタジーだ。「新人なのに、話題になるほどすごい作品を書いたのかな?」と思う。

ところが読み始めて、「なんか変だ」と思い始める。

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Harper Leeが58年前に書いたGo Set a Watchman の刊行は、本当に作者が望んだことなのか?

Harper Leeと言えば、誰もが知る『To Kill a Mockingbird』の作者である。

この名作の後は一作も書かず、ずっとスポットライトを避けてきた有名な「隠匿者」である。

そのLeeの「新作」が今年7月に発売されることが発表され、いきなりAmazonのベストセラー1位になるほど期待を集めた。

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バレンタインデー特集:Historical Romance の代表的な作家

アメリカはまだ2月14日なので、バレンタインデー特集として代表的なHistorical Romanceの作家をご紹介しようと思います。

ロマンス小説のジャンルには、次のようなサブジャンルがあります。

Contemporary Romance:現代のリアルな社会を舞台にしたもの、
Historical Romance:過去を舞台にしたもの。ロマンスが中心の歴史小説。
Paranormal Romance:主人公がヴァンパイアやシェイプシフターなど、超常現象の設定。
Romantic Suspense: ロマンスが中心のミステリ。
Young Adult Romance: 主人公がティーン。ティーン読者対象。
Inspirational Romance:宗教的な「教え」が含まれているロマンス。主人公たちが宗教的な信念で繋がることが重要視され、多くの場合、男性主人公が女性主人公の宗教的な愛で過去の罪を悔い改めて心をいれかえる(ugh…私が一番苦手なタイプ)
Erotic Romance (Erotica):Fifty Shades of Greyで流行り始めたサブジャンル。精神的なロマンスより「主人公の性的ジャーニー」を重視したもの。

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アメリカの若者のファン心理とメディアでのLGBTQロマンス

私が小学生から本を選んであげていた娘やその友人たちが、今年の春大学を卒業する。

私の娘がハリー・ポッターの第一巻に出会ったのは幼稚園のときで、高校生の14歳のときに最終巻が出た。その間、新しい巻が出るたびに、娘とその友人たちは内容についてエンドレスに語り合っていた。ハリー・ポッターは巻が進むごとにダークになっていったし、大人っぽい内容も入るようになっていた。でも、ハリーと一緒に成長した彼らにとっては、心身の成長とちょうど合致していたのである。

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新しい時代の新しいスーパー・スパイの誕生 I Am Pilgrim

著者:Terry Hayes
ハードカバー: 704ページ
出版社: Bantam Press(米国ではAtria)
ISBN-10: 0593064941
発売日: 2013/7月(米国では2014年5月)
適正年齡:PG15(高校生以上。バイオレンス、拷問シーンあり)
難易度:上級レベル(文章は特に難解ではない。だが、ページ数が多く、沢山のサブプロットがあって混乱するかもしれない)
ジャンル:アクション・スリラー/スパイ小説
キーワード:スパイ、イスラム過激派テロリスト、9/11同時テロ、生物兵器、トルコ、アフガニスタン

CIAですらその存在を知らない超機密組織で働いていた諜報員の男は、静かな生活を求めて引退する。だが、マンハッタンのホテルで匿名で書いた犯罪科学の本をヒントにした殺人が起こり、彼が真の著者だと嗅ぎ当てたNYPDの刑事に説得され、捜査に協力することになる。

だが、それとは別に、世界を揺るがすような犯罪が静かに進行していた。せっかく組織を離れたというのに、男は『Pilgrim』というコードネームで大統領直属の諜報員として、単独で動くイスラム過激派テロリストSaracenを追うことになる。

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