モルモン教サバイバリストの両親に育てられた娘の驚愕のベストセラー回想録 Educated

作者:Tara Westover
ペーパーバック: 400ページ
出版社: Random House
ISBN-10: 0399590501
発売日:February 20, 2018
適正年齢:PG15
難易度:中級+
ジャンル:ノンフィクション/回想録
テーマ:モルモン教原理主義、アメリカ、サバイバリスト、アンチ政府、反体制、反西洋医学、自然信仰、アロマテラピー、ホームスクーリング、児童虐待、家族の秘密、毒親
賞など:数多くの「2018年ベストブック」、オバマ元大統領が選んだ「夏の読書」リスト

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保守派の若き女性政治専門家が共和党に提案する「ミレニアル世代」対策 The Selfie Vote

著者:Kristen Soltis Anderson
ハードカバー: 272ページ
出版社: Broadside Books
ISBN-10: 0062343106
発売日: 2015/7/7
適正年齢:PG15(政治が理解できる年齢であれば何歳でも)
難易度:中級+〜上級(わかりやすいシンプルな文章。単語は、政治に詳しくない人は調べる必要あり)
ジャンル:ノンフィクション(政治、アメリカ)
キーワード:アメリカ、選挙、大統領選、共和党、ミレニアル世代、セルフィー(自撮り)世代、政治、投票行動

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行動経済学をメジャーにした2人のユダヤ人心理学者の複雑な友情『The Undoing Project』

著者:Michael Lewis (Flash Boys
ハードカバー: 362ページ
出版社: W W Norton & Co Inc
ISBN-10: 0393254593
発売日: 2016/12/6
適正年齢:PG15
難易度:上級(ボキャブラリは上級だが、日本人にはわかりやすいタイプの文章)
ジャンル:ノンフィクション
キーワード:行動心理学、行動経済学、プロスペクト理論、ノーベル経済学賞、ユダヤ人、イスラエル、ビッグデータ、エビデンスに基づいた医療(evidence-based medicine, EBM)

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不利な条件を利点に転換する発想『 David and Goliath』

著者:Malcolm Gladwell

ハードカバー: 320ページ

出版社: Little, Brown and Company

ISBN-10: 0316204366

発売日: 2013/10/1

適正年齢:PG12(中学生以上)

難易度:中級レベル(高校英語をマスターしたレベル)、難しい単語はあるが。ストレートで分かりやすい文章

ジャンル:応用心理/社会学/ノンフィクション

キーワード:モチベーション、不利な条件の克服、発想の転換、成功

 


 

The Tipping Point
, Blink
,Outliers

といった話題作を次々と生み出してきたマルコム・グラッドウェルの最新作は、旧約聖書の有名な逸話「ダビデとゴリアテ(David and Goliath)の闘い」をテーマにしている。誰もが怖れるペリシテの巨人兵士ゴリアテをイスラエルの羊飼いの少年ダビデが石で打ち負かしたストーリーは、不利な条件の弱者が恵まれた条件の強者を破ることの例えによく使われている。

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記憶について、わかっていること、わかっていないこと。Pieces of Light

Charles Fernyhough
ハードカバー: 320ページ
出版社: Harper (2013/3/19)
ISBN-10: 0062237896
ISBN-13: 978-0062237897
発売日: 2013/3/19(米国)
ノンフィクション/エッセイ/脳科学、心理学/記憶

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とある味や音楽が鮮明な記憶を呼び起こすことがある。
というと、必ずと言ってよいほど人はマルセル・プルーストの「失われた時を求めて」の紅茶に浸したマドレーヌのエピソードを口にする。

本書『Pieces of Light』でもプルーストのマドレーヌが出て来る。
プルーストの語り手のように、五感への刺激はフラッシュバルブ記憶(「写真のフラッシュをたいたときのように」鮮明な記憶)を喚起することが多い。
これは、同時多発テロ事件などのように重大な事件や、結婚式のように個人的に重要な出来事でよく起こる記憶である。
強い感情を伴う鮮明な記憶について、私たちは「これほど強い感情を呼び起こすのだから、本当にあったことに違いない」と思う。
だが、記憶とはそんなに信用できるものではないのである。

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精神的な疾患がなくても起こる「幻覚」の数々 Hallucinations

Oliver Sacks
ハードカバー: 352ページ
出版社: Knopf
ISBN-10: 0307957241
ISBN-13: 978-0307957245
発売日: 2012/11/6
ノンフィクション/精神心理学/行動科学

2012年「これを読まずして年は越せないで賞」ノンフィクション部門候補作

最近ではあまりなくなったが、私は何度も「幻覚」を体験している。
だが、このために病院に行ったことはない。
幻覚が現れるのは特定の時だけであり、日常生活を脅かすことはなかったから治療の必要性を感じなかった。もうひとつの重要な理由は、本書でサックス(Sacks)博士が紹介している実験のように、他に何の症状もないというのに、幻覚(特に幻聴を伴う場合)があるだけで「統合失調症(日本では2002年まで「精神分裂病」と呼ばれていた)」と診断を下す精神科医が多いからである。たまに現れる「幻覚」よりも、誤診のほうが日常生活を脅かすことは間違いない。

サックス博士は、本書「Hallucinations」で、精神科での治療を要しない人が体験する「幻覚」のバラエティとその原因を、事例を挙げてつぶさに説明している。

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アウシュヴィッツ強制収容所の三冊の回想録

先日、ポーランドでの仕事の後、アウシュヴィッツ強制収容所を訪問してきました。
そこで、私が読んだ三冊の本をご紹介しようと思います。

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ビジョンと脳の不思議な関係 The Mind’s Eye

Oliver Sacks
288 pages(ハードカバー)
Knopf(2010年10月26日発売)
ISBN-10: 0307272087

ノンフィクション/神経科学/エッセイ

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神経学者として興味深い症例について多くのエッセイを書いて来たオリバー・サックス博士の最新刊は、ビジョンと脳に関するいくつかのエッセイを集めたものである。

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ごみ屋敷を作る人々の謎ーStuff

Randy O. Frost
Gail Steketee

304ページ(ハードカバー)
Houghton Mifflin
 2010/4/20
心理学/精神医学/事例

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誰でも一度は「ごみ屋敷から死体発見」といったニュースを耳にしたことがあるのではないでしょうか。家中ぎっしり天井までうずたかく物が積み上げられているような状態の家は世界中にけっこう存在するようで、そういったためこみ行動を英語ではhoardingと呼びます。スミス大学の心理学教授Frostとボストン大学の学者Steketeeの2人が、病的なレベルまで物をためこむ興味深い症例を通じて分析を試みたのがこの本です。

病的なhoardingにはある種の共通点があるようです。
ひとつは、ため込みをする人の多くが、知性が高く、好奇心が旺盛で、すべてのオブジェクトに特性を見いだすことができ、チャンスを逃すのが嫌い、ということです。コレクターはこの特長にぴったり当てはまります。物に対して「一期一会」と思うので、見つけると入手せずにはいられず、物へ感情移入し、決断力がないから捨てられません。

これまでhoardingはOCD(Obsessive Compulsive Disorder, 強迫性障害)の一部として扱われてきましたが、FrostとSteketeeは、それに疑問を抱いていました。というのは、OCDの場合の儀式は不安を取り除くための強迫行為なのですが、ためこみをする人はためこむことに喜びを感じます。そもそも、物を手に入れてため込む、というのは衝動なので、ギャンブルのようなImpulse Control Disorder(ICD、衝動制御障害)に分類されるべきではないか、というのが著者たちの推測でした。そこでギャンブラーたちを広告で集めたところ、予想通りためこみの衝動がみられたのですが、hoardingにはそれ以外に、「整理整頓ができない」という問題があります。また、遺伝する傾向もあります。ため込む人の兄弟や姉妹を調査すると、多くの確率でため込む者がいます。hoardingをする家系には14番染色体のある部分にパターンがあることも分かっています。また、トゥーレット症候群との関係もあるようです。あまりにもいろいろな要素があり現行の疾患分類に組み込むことができないので、hoardingはそれだけで独立した疾患として分類されるべきではないか、というのが著者たちの見解です。

実は、わが家にも深刻なコレクター(夫)がいます。出会った頃は、アンティークの時計、ピン、程度でしたが、今はアポロ計画の宇宙飛行士とも顔見知りになっているほどのアポロ収集家です。月の砂つきのベルクロ、宇宙に行って戻って来たアポロ4号の窓、飛行士がトレーニングに使ったパネル、エンジン、といった無数のコレクションがリンビグルームにのさばっています。趣味が移行したのだから昔のコレクションを処分するかというと、そうでもありません。アンティークの時計やアポロのエンジンを捨てろとは言いませんが、京都に留学した高校生のときに近所のパチンコ屋さんからプレゼントされたパチンコ台と玉、昔のガールフレンドからプレゼントされたテディベア、なども絶対に捨てないのです。捨てるどころか、ロックコンサートやオークションに行くと必ず土産を持ち帰ります。私がぶつぶつ文句を言うので片付け上手の友達が「私が捨ててあげよう」と提案してくれるのですが、それをするとたぶん離婚だと思うので耐えています。

実は、夫だけでなく私もやや危ないのです。まず、本を捨てることができません。その理由は「また読むかもしれない」から。実際読むので、本当に捨てられません。そして、家族の所有物だったものも捨てられません。家を綺麗に保ちたい姑が、彼女の母親のものまで(捨てたくないから)私に渡すので、それも捨てることができません。こういった私たちには、本書Stuffに登場する事例たちが決して他人ごとには思えないのです。

けれども、この本に登場する事例はハンパではありません。

雑誌や新聞の切り抜きを捨てられない事例の心情は理解できますが、万引きしたものをためこむ女性や、猫を何百匹も集めて飼っていた精神科医、借金地獄なのに買い物をしてしまう女性の事例は、やはりスケールが違います。FrostとSteketeeによるhoardingのレベル分類(下記)を見て、上には上がある、と感心しましたが、この本を読んで身につまされた私は、暇ができたら家の中の収集物の整理整頓をしようと(一応)決意しました。この写真の4以上だと専門家の治療を受けたほうが良いみたいです。 

*写真の引用 by Randy Frost & Gail Steketee (photos © Oxford
University Press)

1.問題なし

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2.初期症状あり?
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3.もしいつもこの状態であれば軽度のhoarding。
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4.中程度
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5.深刻
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6.非常に深刻
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7.重症
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8.とても重症
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9.極度のhoarding
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●読みやすさ 中程度

文法的には簡潔です。けれども、一般向けとはいえ心理学の本なのでネイティブでも小説ばかり読む人には難しく感じるようです。逆に、専門書を読み慣れている日本人にとっては、解釈がいらないこの本のほうが児童書の小説よりも読みやすいのではないかと思います。

対象を間違ったとしか思えない夢分析の本ーThe Way of the Image

Yoram Kaufmann
96ページ(ハードカバー)
Zahav Books
2009/7/16
心理学(ユング派夢分析)

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この出版社から夢分析をテーマにしたThe Way of the Imageを読んで欲しいと依頼されたとき、快く引き受けたのはこれが私の好きな分野だからです。ことに著者はニューヨーク市のユング研究所で25年以上教鞭を取っていたベテランだというのですから期待せずにはいられません。

冒頭の紹介文は、著者のKaufmann博士がイメージが持つ原型的意味を見るこれまでにないThe Orientational Approach to the Psyche(副題)という画期的な方法をこの本で教えてくれると約束します。我々のタスクは、イメージをinterpretではなくtranslateすることなのだそうです。
日本で育った人ならここで、「interpretとtranslateのどこが違うのだ?」と首をかしげるでしょう。通常私たちがこの2つの単語を使い分けるのは「通訳」と「翻訳」くらいだからです。「解釈」と翻訳する場合にはどちらにも差がありません。前後の文脈から「解釈」すると、前者の「解釈」には解釈する者のインプットがあり、後者はインプットがない直訳に近いもののようです。

いずれにせよ、これらの疑問は本文で明らかになる筈です。
著者のYoram Kaufmannが明確にinterpretとtranslateの差を示し、その後は事例を使いながらtranslateの方法を具体的に説明し、読者が自分で夢などのイメージをtranslateできるようにするに違いありません。
ですが、そんな私の期待は見事に外れてしまいました。
本文の内容は前文に多少の肉付けをした程度のものでしかなかったのです。
事例を使って夢を解釈する方法を教えてくれるのかと身を乗り出したところで、筆者は「分析者はここでどうのこうの…」と独白を始めてしまうのです。博識な老人相手の会話のように、「ときおり面白い話題が出てくるものの、最初に尋ねた質問への答えは最後までわからずじまい」、という感じの本でした。

もうひとつ気になって仕方なかったのは、同僚の学者を対象にしているような文体です。下記のAmazonのサイトの説明文を読む限りは夢分析の素人を対象にした本ですが、この本を読んで下記を達成する人はいないのではないかと思います。

“Everyone who is interested in knowing about themselves, about their dreams, about how therapy can and should work, and about the way the world of our psyche works, will find this fascinating book to be a guide for the rest of their life”

うまく筆者を誘導すれば面白い本ができたかもしれないのに残念です。

●読みやすさ ★☆☆☆☆

簡潔な表現にすればきちんと伝わることを、わざと回りくどい表現にするのは学者さんの悪い癖です。その悪い癖が顕著に出ている文章です。