保守派の若き女性政治専門家が共和党に提案する「ミレニアル世代」対策 The Selfie Vote

著者:Kristen Soltis Anderson
ハードカバー: 272ページ
出版社: Broadside Books
ISBN-10: 0062343106
発売日: 2015/7/7
適正年齢:PG15(政治が理解できる年齢であれば何歳でも)
難易度:中級+〜上級(わかりやすいシンプルな文章。単語は、政治に詳しくない人は調べる必要あり)
ジャンル:ノンフィクション(政治、アメリカ)
キーワード:アメリカ、選挙、大統領選、共和党、ミレニアル世代、セルフィー(自撮り)世代、政治、投票行動

(さらに…)

行動経済学をメジャーにした2人のユダヤ人心理学者の複雑な友情『The Undoing Project』

著者:Michael Lewis (Flash Boys
ハードカバー: 362ページ
出版社: W W Norton & Co Inc
ISBN-10: 0393254593
発売日: 2016/12/6
適正年齢:PG15
難易度:上級(ボキャブラリは上級だが、日本人にはわかりやすいタイプの文章)
ジャンル:ノンフィクション
キーワード:行動心理学、行動経済学、プロスペクト理論、ノーベル経済学賞、ユダヤ人、イスラエル、ビッグデータ、エビデンスに基づいた医療(evidence-based medicine, EBM)

(さらに…)

不利な条件を利点に転換する発想『 David and Goliath』

著者:Malcolm Gladwell

ハードカバー: 320ページ

出版社: Little, Brown and Company

ISBN-10: 0316204366

発売日: 2013/10/1

適正年齢:PG12(中学生以上)

難易度:中級レベル(高校英語をマスターしたレベル)、難しい単語はあるが。ストレートで分かりやすい文章

ジャンル:応用心理/社会学/ノンフィクション

キーワード:モチベーション、不利な条件の克服、発想の転換、成功

 


 

The Tipping Point
, Blink
,Outliers

といった話題作を次々と生み出してきたマルコム・グラッドウェルの最新作は、旧約聖書の有名な逸話「ダビデとゴリアテ(David and Goliath)の闘い」をテーマにしている。誰もが怖れるペリシテの巨人兵士ゴリアテをイスラエルの羊飼いの少年ダビデが石で打ち負かしたストーリーは、不利な条件の弱者が恵まれた条件の強者を破ることの例えによく使われている。

(さらに…)

記憶について、わかっていること、わかっていないこと。Pieces of Light

Charles Fernyhough
ハードカバー: 320ページ
出版社: Harper (2013/3/19)
ISBN-10: 0062237896
ISBN-13: 978-0062237897
発売日: 2013/3/19(米国)
ノンフィクション/エッセイ/脳科学、心理学/記憶

http://rcm.amazon.com/e/cm?lt1=_blank&bc1=FFFFFF&IS2=1&npa=1&bg1=FFFFFF&fc1=000000&lc1=0000FF&t=yofaclja-20&o=1&p=8&l=as4&m=amazon&f=ifr&ref=ss_til&asins=0062237896
http://rcm-jp.amazon.co.jp/e/cm?lt1=_blank&bc1=FFFFFF&IS2=1&npa=1&bg1=FFFFFF&fc1=000000&lc1=0000FF&t=yukariscott-22&o=9&p=8&l=as4&m=amazon&f=ifr&ref=ss_til&asins=0062237896

とある味や音楽が鮮明な記憶を呼び起こすことがある。
というと、必ずと言ってよいほど人はマルセル・プルーストの「失われた時を求めて」の紅茶に浸したマドレーヌのエピソードを口にする。

本書『Pieces of Light』でもプルーストのマドレーヌが出て来る。
プルーストの語り手のように、五感への刺激はフラッシュバルブ記憶(「写真のフラッシュをたいたときのように」鮮明な記憶)を喚起することが多い。
これは、同時多発テロ事件などのように重大な事件や、結婚式のように個人的に重要な出来事でよく起こる記憶である。
強い感情を伴う鮮明な記憶について、私たちは「これほど強い感情を呼び起こすのだから、本当にあったことに違いない」と思う。
だが、記憶とはそんなに信用できるものではないのである。

(さらに…)

精神的な疾患がなくても起こる「幻覚」の数々 Hallucinations

Oliver Sacks
ハードカバー: 352ページ
出版社: Knopf
ISBN-10: 0307957241
ISBN-13: 978-0307957245
発売日: 2012/11/6
ノンフィクション/精神心理学/行動科学

2012年「これを読まずして年は越せないで賞」ノンフィクション部門候補作

最近ではあまりなくなったが、私は何度も「幻覚」を体験している。
だが、このために病院に行ったことはない。
幻覚が現れるのは特定の時だけであり、日常生活を脅かすことはなかったから治療の必要性を感じなかった。もうひとつの重要な理由は、本書でサックス(Sacks)博士が紹介している実験のように、他に何の症状もないというのに、幻覚(特に幻聴を伴う場合)があるだけで「統合失調症(日本では2002年まで「精神分裂病」と呼ばれていた)」と診断を下す精神科医が多いからである。たまに現れる「幻覚」よりも、誤診のほうが日常生活を脅かすことは間違いない。

サックス博士は、本書「Hallucinations」で、精神科での治療を要しない人が体験する「幻覚」のバラエティとその原因を、事例を挙げてつぶさに説明している。

(さらに…)

アウシュヴィッツ強制収容所の三冊の回想録

先日、ポーランドでの仕事の後、アウシュヴィッツ強制収容所を訪問してきました。
そこで、私が読んだ三冊の本をご紹介しようと思います。

(さらに…)

ビジョンと脳の不思議な関係 The Mind’s Eye

Oliver Sacks
288 pages(ハードカバー)
Knopf(2010年10月26日発売)
ISBN-10: 0307272087

ノンフィクション/神経科学/エッセイ

http://rcm.amazon.com/e/cm?lt1=_blank&bc1=FFFFFF&IS2=1&npa=1&bg1=FFFFFF&fc1=000000&lc1=0000FF&t=yofaclja-20&o=1&p=8&l=as1&m=amazon&f=ifr&md=10FE9736YVPPT7A0FBG2&asins=0307272087 http://rcm-jp.amazon.co.jp/e/cm?lt1=_blank&bc1=FFFFFF&IS2=1&npa=1&bg1=FFFFFF&fc1=000000&lc1=0000FF&t=yukariscott-22&o=9&p=8&l=as1&m=amazon&f=ifr&md=1X69VDGQCMF7Z30FM082&asins=0307272087

神経学者として興味深い症例について多くのエッセイを書いて来たオリバー・サックス博士の最新刊は、ビジョンと脳に関するいくつかのエッセイを集めたものである。

(さらに…)

ごみ屋敷を作る人々の謎ーStuff

Randy O. Frost
Gail Steketee

304ページ(ハードカバー)
Houghton Mifflin
 2010/4/20
心理学/精神医学/事例

http://rcm.amazon.com/e/cm?lt1=_blank&bc1=FFFFFF&IS2=1&npa=1&bg1=FFFFFF&fc1=000000&lc1=0000FF&t=yofaclja-20&o=1&p=8&l=as1&m=amazon&f=ifr&md=10FE9736YVPPT7A0FBG2&asins=015101423X
http://rcm-jp.amazon.co.jp/e/cm?lt1=_blank&bc1=FFFFFF&IS2=1&npa=1&bg1=FFFFFF&fc1=000000&lc1=0000FF&t=yukariscott-22&o=9&p=8&l=as1&m=amazon&f=ifr&md=1X69VDGQCMF7Z30FM082&asins=015101423X

誰でも一度は「ごみ屋敷から死体発見」といったニュースを耳にしたことがあるのではないでしょうか。家中ぎっしり天井までうずたかく物が積み上げられているような状態の家は世界中にけっこう存在するようで、そういったためこみ行動を英語ではhoardingと呼びます。スミス大学の心理学教授Frostとボストン大学の学者Steketeeの2人が、病的なレベルまで物をためこむ興味深い症例を通じて分析を試みたのがこの本です。

病的なhoardingにはある種の共通点があるようです。
ひとつは、ため込みをする人の多くが、知性が高く、好奇心が旺盛で、すべてのオブジェクトに特性を見いだすことができ、チャンスを逃すのが嫌い、ということです。コレクターはこの特長にぴったり当てはまります。物に対して「一期一会」と思うので、見つけると入手せずにはいられず、物へ感情移入し、決断力がないから捨てられません。

これまでhoardingはOCD(Obsessive Compulsive Disorder, 強迫性障害)の一部として扱われてきましたが、FrostとSteketeeは、それに疑問を抱いていました。というのは、OCDの場合の儀式は不安を取り除くための強迫行為なのですが、ためこみをする人はためこむことに喜びを感じます。そもそも、物を手に入れてため込む、というのは衝動なので、ギャンブルのようなImpulse Control Disorder(ICD、衝動制御障害)に分類されるべきではないか、というのが著者たちの推測でした。そこでギャンブラーたちを広告で集めたところ、予想通りためこみの衝動がみられたのですが、hoardingにはそれ以外に、「整理整頓ができない」という問題があります。また、遺伝する傾向もあります。ため込む人の兄弟や姉妹を調査すると、多くの確率でため込む者がいます。hoardingをする家系には14番染色体のある部分にパターンがあることも分かっています。また、トゥーレット症候群との関係もあるようです。あまりにもいろいろな要素があり現行の疾患分類に組み込むことができないので、hoardingはそれだけで独立した疾患として分類されるべきではないか、というのが著者たちの見解です。

実は、わが家にも深刻なコレクター(夫)がいます。出会った頃は、アンティークの時計、ピン、程度でしたが、今はアポロ計画の宇宙飛行士とも顔見知りになっているほどのアポロ収集家です。月の砂つきのベルクロ、宇宙に行って戻って来たアポロ4号の窓、飛行士がトレーニングに使ったパネル、エンジン、といった無数のコレクションがリンビグルームにのさばっています。趣味が移行したのだから昔のコレクションを処分するかというと、そうでもありません。アンティークの時計やアポロのエンジンを捨てろとは言いませんが、京都に留学した高校生のときに近所のパチンコ屋さんからプレゼントされたパチンコ台と玉、昔のガールフレンドからプレゼントされたテディベア、なども絶対に捨てないのです。捨てるどころか、ロックコンサートやオークションに行くと必ず土産を持ち帰ります。私がぶつぶつ文句を言うので片付け上手の友達が「私が捨ててあげよう」と提案してくれるのですが、それをするとたぶん離婚だと思うので耐えています。

実は、夫だけでなく私もやや危ないのです。まず、本を捨てることができません。その理由は「また読むかもしれない」から。実際読むので、本当に捨てられません。そして、家族の所有物だったものも捨てられません。家を綺麗に保ちたい姑が、彼女の母親のものまで(捨てたくないから)私に渡すので、それも捨てることができません。こういった私たちには、本書Stuffに登場する事例たちが決して他人ごとには思えないのです。

けれども、この本に登場する事例はハンパではありません。

雑誌や新聞の切り抜きを捨てられない事例の心情は理解できますが、万引きしたものをためこむ女性や、猫を何百匹も集めて飼っていた精神科医、借金地獄なのに買い物をしてしまう女性の事例は、やはりスケールが違います。FrostとSteketeeによるhoardingのレベル分類(下記)を見て、上には上がある、と感心しましたが、この本を読んで身につまされた私は、暇ができたら家の中の収集物の整理整頓をしようと(一応)決意しました。この写真の4以上だと専門家の治療を受けたほうが良いみたいです。 

*写真の引用 by Randy Frost & Gail Steketee (photos © Oxford
University Press)

1.問題なし

LivingRm1_text

2.初期症状あり?
LivingRm2_text

3.もしいつもこの状態であれば軽度のhoarding。
LivingRm3_text

4.中程度
LivingRm4_1

5.深刻
LivingRm5_text

6.非常に深刻
LivingRm6_1

7.重症
LivingRm7_text

8.とても重症
LivingRm8_text

9.極度のhoarding
LivingRm9_text

●読みやすさ 中程度

文法的には簡潔です。けれども、一般向けとはいえ心理学の本なのでネイティブでも小説ばかり読む人には難しく感じるようです。逆に、専門書を読み慣れている日本人にとっては、解釈がいらないこの本のほうが児童書の小説よりも読みやすいのではないかと思います。

対象を間違ったとしか思えない夢分析の本ーThe Way of the Image

Yoram Kaufmann
96ページ(ハードカバー)
Zahav Books
2009/7/16
心理学(ユング派夢分析)

http://rcm.amazon.com/e/cm?lt1=_blank&bc1=FFFFFF&IS2=1&npa=1&bg1=FFFFFF&fc1=000000&lc1=0000FF&t=yofaclja-20&o=1&p=8&l=as1&m=amazon&f=ifr&md=10FE9736YVPPT7A0FBG2&asins=1935184008
http://rcm-jp.amazon.co.jp/e/cm?lt1=_blank&bc1=FFFFFF&IS2=1&npa=1&bg1=FFFFFF&fc1=000000&lc1=0000FF&t=yukariscott-22&o=9&p=8&l=as1&m=amazon&f=ifr&md=1X69VDGQCMF7Z30FM082&asins=1935184008

この出版社から夢分析をテーマにしたThe Way of the Imageを読んで欲しいと依頼されたとき、快く引き受けたのはこれが私の好きな分野だからです。ことに著者はニューヨーク市のユング研究所で25年以上教鞭を取っていたベテランだというのですから期待せずにはいられません。

冒頭の紹介文は、著者のKaufmann博士がイメージが持つ原型的意味を見るこれまでにないThe Orientational Approach to the Psyche(副題)という画期的な方法をこの本で教えてくれると約束します。我々のタスクは、イメージをinterpretではなくtranslateすることなのだそうです。
日本で育った人ならここで、「interpretとtranslateのどこが違うのだ?」と首をかしげるでしょう。通常私たちがこの2つの単語を使い分けるのは「通訳」と「翻訳」くらいだからです。「解釈」と翻訳する場合にはどちらにも差がありません。前後の文脈から「解釈」すると、前者の「解釈」には解釈する者のインプットがあり、後者はインプットがない直訳に近いもののようです。

いずれにせよ、これらの疑問は本文で明らかになる筈です。
著者のYoram Kaufmannが明確にinterpretとtranslateの差を示し、その後は事例を使いながらtranslateの方法を具体的に説明し、読者が自分で夢などのイメージをtranslateできるようにするに違いありません。
ですが、そんな私の期待は見事に外れてしまいました。
本文の内容は前文に多少の肉付けをした程度のものでしかなかったのです。
事例を使って夢を解釈する方法を教えてくれるのかと身を乗り出したところで、筆者は「分析者はここでどうのこうの…」と独白を始めてしまうのです。博識な老人相手の会話のように、「ときおり面白い話題が出てくるものの、最初に尋ねた質問への答えは最後までわからずじまい」、という感じの本でした。

もうひとつ気になって仕方なかったのは、同僚の学者を対象にしているような文体です。下記のAmazonのサイトの説明文を読む限りは夢分析の素人を対象にした本ですが、この本を読んで下記を達成する人はいないのではないかと思います。

“Everyone who is interested in knowing about themselves, about their dreams, about how therapy can and should work, and about the way the world of our psyche works, will find this fascinating book to be a guide for the rest of their life”

うまく筆者を誘導すれば面白い本ができたかもしれないのに残念です。

●読みやすさ ★☆☆☆☆

簡潔な表現にすればきちんと伝わることを、わざと回りくどい表現にするのは学者さんの悪い癖です。その悪い癖が顕著に出ている文章です。

女の子と男の子の脳は生まれつき異なるのか?− Pink Brain Blue Brain

Lise Eliot
432 ページ
Houghton Mifflin Harcourt
2009年9月14日発売予定
脳神経学/発達心理/教育/子育て/ノンフィクション

http://rcm.amazon.com/e/cm?lt1=_blank&bc1=FFFFFF&IS2=1&npa=1&bg1=FFFFFF&fc1=000000&lc1=0000FF&t=yofaclja-20&o=1&p=8&l=as1&m=amazon&f=ifr&md=10FE9736YVPPT7A0FBG2&asins=0618393110
http://rcm-jp.amazon.co.jp/e/cm?lt1=_blank&bc1=FFFFFF&IS2=1&npa=1&bg1=FFFFFF&fc1=000000&lc1=0000FF&t=yukariscott-22&o=9&p=8&l=as1&m=amazon&f=ifr&md=1X69VDGQCMF7Z30FM082&asins=0618393110

Simone de Beauvoirは「第二の性」で"One is not born, but rather becomes, a woman「人は女に生まれるのではない、女になるのだ」"と論じた。だが、そう信じて育った世代の高学歴/専門職の女性たちが母になってみて、息子が人形には見向きもせずにトラックを選んだり娘がバービー人形を欲しがるという体験をして「やはり男女差は生まれつきのものなのか?」という疑問が生まれるようになった。双子のケーススタディなどだけではなく脳神経科学の分野での研究を通じて科学的に男女差を分析する試みが増えている。

だが、メディアで話題になるのは、人目をひく研究結果だがよく内容を見るとネズミを使った実験でしかなかったり、条件が整っていなかったり、信憑性に欠けることがある。また、売れるのは “Men Are from Mars, Women Are from Venus”といったステレオタイプの男女差を強調するものが多く、実際のところ男女の脳が生まれつき異なるのかどうかをきちんと掘り下げたものはあまりない。

そういう意味で、脳神経学者で母親のLise Eliotが書いた Pink Brain Blue Brainは、科学的でもあるしバランスの取れたまれな本である。 Lise Eliotはハーバード大学、コロンビア大学大学院卒業でThe Chicago Medical School of Rosalind Franklin University of Medicine and Scienceで脳神経学の助教授をつとめている。男性がマジョリティの世界で戦い、しかも男の子と女の子の母親でもある。男の子の脳と女の子の脳を比較分析するのにこれ以上の適任者はいないだろう。それぞれの実験結果が実際に何を意味するのかをふつうの母親(もちろん父親)にもわかりやすく説明している。

300ページにもわたる本の簡単な結論を書くことは無理だが、あえてまとめるとこんな感じである。

  • 子宮内で浴びたホルモンと思春期のホルモン分泌が男女の脳に生物学的な差を与える。
  • 男女の生物学的な差やホルモンの影響は存在するが、実験動物とは異なり人間の場合その差はさほど大きなものではない。
  • 男の子(男性)はspatial skills(空間能力)が優れており、数学が得意であるが、攻撃性や競争心が強く、言語能力では劣る。
  • 女の子(女性)は言語能力やemotional intelligenceでは優れているが、空間能力でおとり、失敗を恐れることを含む恐怖心が強い。
  • 生物学的な傾向はあるものの、社会環境の影響のほうが大きい。
  • 攻撃性、同情心、恐怖心、競争心、などについてはもともとは小さな差異なのだが、 親や教師といった社会環境の影響の積み重ねで成長したときには大きな差異になっている。
  • 子供に対する親や教師の言動により、大人になったときの男女差は現象する。また男女の差異を少なくし、play fieldを公平にするための教育方法を提案。

Eliotは、誕生から5年間の乳幼児の脳の発達を解説した“What’s Going on in There? How the Brain and Mind Develop in the First Five Years of Life”の作者でもある。

なおコンテンツは下記のとおり

  1. Pink and Blue in the Womb
  2. Under the Pink or Blue Blankie
  3. Learning Through Play in the Preschool Years
  4. Starting School
  5. The Wonder of Words
  6. Sex, Math, and Science
  7. Love and War
  8. Truce Time

●この本の良いところ

科学的な根拠を多く紹介し、すべての研究結果を公平な視点で解説しています。また、非常にバランスが取れた見方をしています。子育てには関係ない方でも、研究結果の数々を読むだけで楽しめます。

また、女性科学者やビジネスウーマンたちが平等に活躍できる環境や感性豊かな男性を受け入れる環境作りにはおおいに賛同します。男性でも娘を持つ父親として、女性でも息子を持つ母親として、男女が公平に扱われることを望まない人はいない、と思いたいです。

解決策についてとくに賛成した箇所:

1. 女の子にスポーツを勧めているところ

私の娘がそうですが、幼いころから男女一緒の水泳チームに属していると、小学校では体が小さくても同級生の男の子よりも強くて速く、男の子に劣っているという感覚を抱かずに育つようです。その自信は高校生になった今でも続いているようです。また、幼いときから球技をやっていると、女性が苦手といわれるspatial skills(空間能力)が身に付きます。これもプラスです。(ただし、私の観察では水泳ばかりやっていると空間能力が減退するようで、トップスイマーは球技が苦手みたいです)

2.男の子の言語能力をのばすための働きかけ(私は男女に関係なく働きかけるべきと思いますが)

実にシンプルな解決策:"The more you talk, or read, or write, the more facile you become at each of these skills."

フラッシュカードなどのドリル方式は避けること!でないと本を読むことが嫌いになってしまいます"Be careful, though, to avoid flash cards and other drill-and-kill methods, which will make phonics a bore and turn your child off of instead of on to reading."

●この本と私の意見が異なるところ

女性科学者の Eliotが「女は数学と科学が苦手だ」というステレオタイプをこの世からなくしたいという情熱を抱いている気持ちはよくわかります。私も、数学と科学が得意な娘を持つ母親としてアカデミックの世界がもっと女性を受け入れてくれるようになって欲しいと願います。
けれども、平均的に女の子が生まれつき数学と科学が得意ではないから幼いときから働きかけることで生物学的にadvantageがある男の子との差を縮める、という考え方には全面的に賛同できません。言語能力で劣る男の子に対して特別に働きかけるという部分でもそうです。

まず私はこの分野では個人差のほうが大きいと思うのです。

私の娘のように幼いころから本を読んでやり、語りかけて育てても、数学や科学のほうが得意で同級生の男の子よりも口数(ボキャブラリー)が少ない女の子もいます。それだけでなく、彼女が仲良くしている友人グループでは、言語能力に優れている男の子のほうが多く、女の子はみんな数学や科学のほうが得意なのです。これはたぶん「平等に育てる」ことを信じる親が多い学校なので、自然にそれぞれの個性がそのまま現れたという感じなのでしょう。劣っているからそれをおぎなう教育をする、というのではなく、どっちも適度にやればいいと私は思うのです。

次に短所に注意を払いすぎる子育てにも反対です。

私の考え方は先日ご紹介した「Einstein Never Used Flashcards」にあるように、幼いときには自発的な学びの楽しさを励ますことしかしてはならない、というものです。「短所があってもいいじゃないか。ほかに本人が好きなことがあればそれをやればいい」というのが私の考え方です

私が特に強く反論したいのは、女の子が弱いと言われるspatial skills(空間能力)を育てるために学童期にコンピューターのソフトを使うことです。私の周囲で早期からコンピューターを使った数学プログラムをやっていた子で現在「すばらしい!」という数学の才能を発揮している子はいません。それよりも、ふつうのパズル、カードゲーム、積み木、レゴ、家具の組み立て、車の修理の手伝い、ボーイスカウト、ガールスカウト、野球やサッカーといったスポーツ、をいっしょうけんめいするほうが空間能力を身につけられると思います。

また、Eliotは言語能力を身につけるwindow of opportunityは乳幼児期の早期だと説く学者のひとりですが、私は 重要であるけれども決定的ではないし、親はもっとリラックスするべきだと考えています。この時期にこだわると、どうしてもFlash cardを使ってドリル…ということになりがちですから。学童期まではもっとナチュラルな「話しかけ」と「本読み」のみに徹するべきだと思います。

●読みやすさ ★★☆☆☆

医学(解剖学)用語などがあり、この手の本を読み慣れていない方には取り付きにくいかもしれませんが、論文を読み慣れている方には小説よりもかえって読みやすいでしょう。

●関連本

1.子供の才能を殺さないために親が読む本(2)ー Einstein Never Used Flashcards

2. Men are from Mars Women are from Venus

http://rcm.amazon.com/e/cm?lt1=_blank&bc1=FFFFFF&IS2=1&npa=1&bg1=FFFFFF&fc1=000000&lc1=0000FF&t=yofaclja-20&o=1&p=8&l=as1&m=amazon&f=ifr&md=10FE9736YVPPT7A0FBG2&asins=0060574216
http://rcm-jp.amazon.co.jp/e/cm?lt1=_blank&bc1=FFFFFF&IS2=1&npa=1&bg1=FFFFFF&fc1=000000&lc1=0000FF&t=yukariscott-22&o=9&p=8&l=as1&m=amazon&f=ifr&md=1X69VDGQCMF7Z30FM082&asins=0060574216

3. What’s Going on in There?

http://rcm.amazon.com/e/cm?lt1=_blank&bc1=FFFFFF&IS2=1&npa=1&bg1=FFFFFF&fc1=000000&lc1=0000FF&t=yofaclja-20&o=1&p=8&l=as1&m=amazon&f=ifr&md=10FE9736YVPPT7A0FBG2&asins=0553378252
http://rcm-jp.amazon.co.jp/e/cm?lt1=_blank&bc1=FFFFFF&IS2=1&npa=1&bg1=FFFFFF&fc1=000000&lc1=0000FF&t=yukariscott-22&o=9&p=8&l=as1&m=amazon&f=ifr&md=1X69VDGQCMF7Z30FM082&asins=0553378252