女の子と男の子の脳は生まれつき異なるのか?− Pink Brain Blue Brain

Lise Eliot
432 ページ
Houghton Mifflin Harcourt
2009年9月14日発売予定
脳神経学/発達心理/教育/子育て/ノンフィクション

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Simone de Beauvoirは「第二の性」で"One is not born, but rather becomes, a woman「人は女に生まれるのではない、女になるのだ」"と論じた。だが、そう信じて育った世代の高学歴/専門職の女性たちが母になってみて、息子が人形には見向きもせずにトラックを選んだり娘がバービー人形を欲しがるという体験をして「やはり男女差は生まれつきのものなのか?」という疑問が生まれるようになった。双子のケーススタディなどだけではなく脳神経科学の分野での研究を通じて科学的に男女差を分析する試みが増えている。

だが、メディアで話題になるのは、人目をひく研究結果だがよく内容を見るとネズミを使った実験でしかなかったり、条件が整っていなかったり、信憑性に欠けることがある。また、売れるのは “Men Are from Mars, Women Are from Venus”といったステレオタイプの男女差を強調するものが多く、実際のところ男女の脳が生まれつき異なるのかどうかをきちんと掘り下げたものはあまりない。

そういう意味で、脳神経学者で母親のLise Eliotが書いた Pink Brain Blue Brainは、科学的でもあるしバランスの取れたまれな本である。 Lise Eliotはハーバード大学、コロンビア大学大学院卒業でThe Chicago Medical School of Rosalind Franklin University of Medicine and Scienceで脳神経学の助教授をつとめている。男性がマジョリティの世界で戦い、しかも男の子と女の子の母親でもある。男の子の脳と女の子の脳を比較分析するのにこれ以上の適任者はいないだろう。それぞれの実験結果が実際に何を意味するのかをふつうの母親(もちろん父親)にもわかりやすく説明している。

300ページにもわたる本の簡単な結論を書くことは無理だが、あえてまとめるとこんな感じである。

  • 子宮内で浴びたホルモンと思春期のホルモン分泌が男女の脳に生物学的な差を与える。
  • 男女の生物学的な差やホルモンの影響は存在するが、実験動物とは異なり人間の場合その差はさほど大きなものではない。
  • 男の子(男性)はspatial skills(空間能力)が優れており、数学が得意であるが、攻撃性や競争心が強く、言語能力では劣る。
  • 女の子(女性)は言語能力やemotional intelligenceでは優れているが、空間能力でおとり、失敗を恐れることを含む恐怖心が強い。
  • 生物学的な傾向はあるものの、社会環境の影響のほうが大きい。
  • 攻撃性、同情心、恐怖心、競争心、などについてはもともとは小さな差異なのだが、 親や教師といった社会環境の影響の積み重ねで成長したときには大きな差異になっている。
  • 子供に対する親や教師の言動により、大人になったときの男女差は現象する。また男女の差異を少なくし、play fieldを公平にするための教育方法を提案。

Eliotは、誕生から5年間の乳幼児の脳の発達を解説した“What’s Going on in There? How the Brain and Mind Develop in the First Five Years of Life”の作者でもある。

なおコンテンツは下記のとおり

  1. Pink and Blue in the Womb
  2. Under the Pink or Blue Blankie
  3. Learning Through Play in the Preschool Years
  4. Starting School
  5. The Wonder of Words
  6. Sex, Math, and Science
  7. Love and War
  8. Truce Time

●この本の良いところ

科学的な根拠を多く紹介し、すべての研究結果を公平な視点で解説しています。また、非常にバランスが取れた見方をしています。子育てには関係ない方でも、研究結果の数々を読むだけで楽しめます。

また、女性科学者やビジネスウーマンたちが平等に活躍できる環境や感性豊かな男性を受け入れる環境作りにはおおいに賛同します。男性でも娘を持つ父親として、女性でも息子を持つ母親として、男女が公平に扱われることを望まない人はいない、と思いたいです。

解決策についてとくに賛成した箇所:

1. 女の子にスポーツを勧めているところ

私の娘がそうですが、幼いころから男女一緒の水泳チームに属していると、小学校では体が小さくても同級生の男の子よりも強くて速く、男の子に劣っているという感覚を抱かずに育つようです。その自信は高校生になった今でも続いているようです。また、幼いときから球技をやっていると、女性が苦手といわれるspatial skills(空間能力)が身に付きます。これもプラスです。(ただし、私の観察では水泳ばかりやっていると空間能力が減退するようで、トップスイマーは球技が苦手みたいです)

2.男の子の言語能力をのばすための働きかけ(私は男女に関係なく働きかけるべきと思いますが)

実にシンプルな解決策:"The more you talk, or read, or write, the more facile you become at each of these skills."

フラッシュカードなどのドリル方式は避けること!でないと本を読むことが嫌いになってしまいます"Be careful, though, to avoid flash cards and other drill-and-kill methods, which will make phonics a bore and turn your child off of instead of on to reading."

●この本と私の意見が異なるところ

女性科学者の Eliotが「女は数学と科学が苦手だ」というステレオタイプをこの世からなくしたいという情熱を抱いている気持ちはよくわかります。私も、数学と科学が得意な娘を持つ母親としてアカデミックの世界がもっと女性を受け入れてくれるようになって欲しいと願います。
けれども、平均的に女の子が生まれつき数学と科学が得意ではないから幼いときから働きかけることで生物学的にadvantageがある男の子との差を縮める、という考え方には全面的に賛同できません。言語能力で劣る男の子に対して特別に働きかけるという部分でもそうです。

まず私はこの分野では個人差のほうが大きいと思うのです。

私の娘のように幼いころから本を読んでやり、語りかけて育てても、数学や科学のほうが得意で同級生の男の子よりも口数(ボキャブラリー)が少ない女の子もいます。それだけでなく、彼女が仲良くしている友人グループでは、言語能力に優れている男の子のほうが多く、女の子はみんな数学や科学のほうが得意なのです。これはたぶん「平等に育てる」ことを信じる親が多い学校なので、自然にそれぞれの個性がそのまま現れたという感じなのでしょう。劣っているからそれをおぎなう教育をする、というのではなく、どっちも適度にやればいいと私は思うのです。

次に短所に注意を払いすぎる子育てにも反対です。

私の考え方は先日ご紹介した「Einstein Never Used Flashcards」にあるように、幼いときには自発的な学びの楽しさを励ますことしかしてはならない、というものです。「短所があってもいいじゃないか。ほかに本人が好きなことがあればそれをやればいい」というのが私の考え方です

私が特に強く反論したいのは、女の子が弱いと言われるspatial skills(空間能力)を育てるために学童期にコンピューターのソフトを使うことです。私の周囲で早期からコンピューターを使った数学プログラムをやっていた子で現在「すばらしい!」という数学の才能を発揮している子はいません。それよりも、ふつうのパズル、カードゲーム、積み木、レゴ、家具の組み立て、車の修理の手伝い、ボーイスカウト、ガールスカウト、野球やサッカーといったスポーツ、をいっしょうけんめいするほうが空間能力を身につけられると思います。

また、Eliotは言語能力を身につけるwindow of opportunityは乳幼児期の早期だと説く学者のひとりですが、私は 重要であるけれども決定的ではないし、親はもっとリラックスするべきだと考えています。この時期にこだわると、どうしてもFlash cardを使ってドリル…ということになりがちですから。学童期まではもっとナチュラルな「話しかけ」と「本読み」のみに徹するべきだと思います。

●読みやすさ ★★☆☆☆

医学(解剖学)用語などがあり、この手の本を読み慣れていない方には取り付きにくいかもしれませんが、論文を読み慣れている方には小説よりもかえって読みやすいでしょう。

●関連本

1.子供の才能を殺さないために親が読む本(2)ー Einstein Never Used Flashcards

2. Men are from Mars Women are from Venus

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3. What’s Going on in There?

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子供の才能を殺さないために親が読む本(2)ー Einstein Never Used Flashcards

Roberta Michnick Golinkoff, Kathy Hirsh-Pasek, Dian Eyer
320ページ
Rodale Books
2004年8月刊行
発達心理/教育/ノンフィクション

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「アインシュタインはフラッシュカードなんか使わなかった」という魅力的なタイトルの本。

アメリカでも3歳までの親の努力でわが子を天才に育てられるという宣伝文句につられて赤ん坊にフラッシュカードで単語を覚えさせたり、モーツアルトを聴かせたり、保育園から詰め込み教育をさせたりする親が激増している。特に都市部の裕福な家庭でそれが顕著である。その社会現象に疑問を覚えた発達心理学者のGolinkoff, Hirsh-Pasek, Eyerの3人が、科学的な根拠を示して早期英才教育の無意味さ(あるいは害)と遊びの重要さを解いた非常に重要な作品。

各章は以下のとおり。

  1. The Plight of the Modern Parent
  2. Brainchild: How Babies Are Wired to Learn
  3. Playing the Numbers: How Children Learn about Quantity
  4. Language: The Power of Babble
  5. Literacy: Reading between the Lines
  6. Welcome to Lake Wobegon: The Quest to Define Intelligence
  7. Who Am I? Developing a Sense of Self
  8. Getting to Know You: How Children Develop Social Intelligence
  9. Play: The Crucible of Leaning
  10. The New Formula for Exceptional Parenting

そして親が心得るべき4つの原則

  1. The best learning is learning within reach
  2. Emphasizing process over product creates a love of learning
  3. It’s EQ(emotional intelligence), not just IQ
  4. Learning in context is real learning — And play is the best teacher

●私が特に共感を覚えた箇所

*幼い脳に詰め込み教育をすると、脳でのシナプスの接続がおいつかないほどの大量の情報が氾濫するneurological “crowding”が起こり、かえって脳の健全な発達を妨げる可能性がある。

*乳幼児もフラッシュカードで単語を覚えることはできるが、その情報と自分の周囲の実際の世界とを結びつけることはできない。このような早期の経験が脳の機能を高めるという科学的な証拠はない。

*早期教育を重視する保育園(academically oriented preschool)に通った子供と社会性を身につけることを重視する保育園(socially oriented preschool)に通った子供を比べた結果、5歳のときには前者のほうが数とアルファベットを知っていたが、小学校に入るとその差が消え、早期教育を受けた子が小学校でとくに「頭が良い」とみなされることはなく、かえって創造性と学習意欲が低いということがわかった。

*Gifted Children(天賦の才がある子)は、その分野で他の子よりも努力をせずにたやすくできる。他の者よりも質的に異なる方法で学び、大人の手助けを要さない傾向がある。要するに、天賦の才がある子は、親が押し付けなくてもみずからその分野に興味を抱き、自分でやる気をおこすものなのである(“They are not children who need to be pushed by their parents. They motivate themselves.)。(私の口癖「天才は作れない」に匹敵しますね)

*子供の体験やニーズではなくテストの結果重視の詰め込み教育に焦点を当てると、学習が苦痛な仕事になり、失敗の不安に脅かされるようになる。自然な学習は、子供の好奇心や探索から生じるものであり、それは楽しい体験である。

*赤ん坊の苛立つような繰り返しの行動(例えば、何度もスプーンを床に落とす)は、体験を通じて法則を発見しているのである。つまり子供時代の遊びは大切な学習なのである。

*幼児期、学童期で最も重要なのは遊びであり、学問という仕事ではない。子供は遊びを通じて学ぶように生まれついているのである。
“ The rats that remained in nature had the best brains of all”(この引用、個人的にとっても気に入っていますhappy01

●ここが魅力!

すでにご存知と思いますが、私は早期英才教育には反対の立場を取っており、以前にも「子供の才能を殺さないために親が読む本(1)」というブログ記事で「早期英才教育(高速計算練習やフラッシュカードで単語を覚えさせるなど)は、想像力や思考力を育てるべき時期の脳に剪定をさせてしまう危険な行動であり、せっかく子供がもって生まれた才能をかえって殺してしまうだけでなく、問題行動を取る人間を育ててしまう可能性がある」ということをお話ししました。

そのときにご紹介したこのEinstein Never Used Flashcards: How Our Children Really Learn–and Why They Need to Play More and Memorize Lessは、たぶん私の考え方に最も近いといえます。
科学的な根拠に基づいた結論ですが、普通の人にわかりやすい書き方で、しかも「どうすればよいのか」というところまで言及しています。
私もこちらでけっこう体験しましたが、「親のあなたが今ちゃんと努力しないと、お子さんが可哀想なことになりますよ」といった(よけいなお世話的)親切アドバイスをしてくる人々がいます。そういう人々に「 neurological crowding が起こると困りますから」とお断りするときに役立つ本です。
「十歳で神童、十五歳で才子、二十歳過ぎればただの人」ということわざはけっこう深いのではないかと思います

●読みやすさ ★★☆☆☆

文法的には単純で、論文を読み慣れている方にはかえって読みやすい文章です。

けれどもそれ以外の方にはとりつきにくい感じを与えるかもしれません。でも、学者さんが書いた本の中では非常に読みやすい部類です。

●最近米国で流行っていて、私が嫌な気分を覚えている早期教育のひとつBaby Sign languageのビデオ

私は学生時代に手話を学んだことがあり、手話に関してはもっと多くの人に学んでほしいと思っています。でも、このBaby Sign languageはまったく別物です。
なぜ聴覚に異常がない乳児に手話を教えてはならないか、というと、乳児はこの時期に親の声を聴き、表情を読み、通常のコミュニケーションの基礎になる学習をしているからです。何もしていないようで、けっこう忙しい大切な学びの時期なのです。そして、他人に伝えたいことがあるから言葉を発そうと努力するのです。そういった時期に母親が別の手段に集中したら、もちろん赤ん坊の脳もそちらに集中し、簡単にそれを覚えます。赤ちゃんに手話を教えてそれができるのは「すごい!天才だ!」ではなく当然の結果なのですが、健全なコミュニケーションと脳の発達のためには邪魔だと思います。neurological “crowding”のことも心配です

重症の強迫性障害患者と彼を治療した医師の実話-Life in Rewind

著者:Terry Weible Murphy(文章), Michael A. Jenike(精神科医), Edward E. Zine(患者)
256ページ
出版社: William Morrow
2009年4月14日
エッセイ・回想録/ノンフィクション/OCD(強迫性障害)

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Life in Rewind: The Story of a Young Courageous Man Who Persevered Over OCD and the Harvard Doctor Who Broke All the Rules to Help Himという長ったらしいタイトルのノンフィクションを実際に書いたのはベテランのテレビプロデューサーTerry Murphyである。Michael A. Jenike医師のおかげで息子の強迫性障害が改善したという経験を持つMurphyは、患者の励みになる本を書こうと思い立ち、Jenikeに相談した。そこで紹介されたのがEdward E. Zineという患者だった。
実はこのJenike医師は、強迫性障害の分野では非常に著名なハーバード大学医学部精神科教授であり、以前私が翻訳した強迫性障害に関する本にも登場している。高名な医師が紹介するのだから当然私たちは彼の治療で奇跡的に素晴らしい回復を成し遂げたケースだと想像する。ところがEdはJenikeの失敗例なのである。3年におよぶ治療がすべて失敗した絶望的な重症例にも関わらず、患者本人が自力で回復したという稀なケースなのだ。
「治療の失敗例を読んでどうする?」と言う読者もいるようだが、この本の素晴らしさは実はそこにあると私は思う。

軽い強迫性障害であれば外来での薬物や行動療法などでめざましく回復するが、中には外来に来ることすらできず、そのまま治療を受けられない患者、あるいは治療を受けても回復しない患者は存在する。
そのひとりが本書の主人公Ed Zineだ。
Edの父親は愛情の示し方を知らないタイプで、息子を心底愛した母親の死後、EdのOCDは急速に悪化する。「時間が前に進まなければ、愛する者たちは死なない」という観念にとり憑かれ、部屋のチリにいたるまですべてのものをそのままの位置に保ち、もし自分が何かを行ったらそれをビデオのように巻き戻しで行動するようになる。
地下の自室から一歩も外に出ず、体も洗わず、排泄物を部屋に保管したまま、家族や友人に食べ物を届けてもらうという生活を続けているEdをJenike医師は在宅治療するのである。
米国の病院では、「強迫性障害の患者の在宅治療はしない」のが方針のようである。著名な医師のJenikeがなぜEdを訪問治療するようになったのか、そしてなぜEdが最終的に自力で奇跡的な回復を果たしたのかを理解するには、Jenikeの型破りな経歴も知る必要がある。というわけで、この本はEdだけではなく、Jenike医師自身の生い立ちも語っている。
(アメリカの回想録に不可欠な挿入写真だが、本書で使われている写真の多くは不要)

Life in Rewindは、「この方法を使ったら、見事に症状がよくなった!」という典型的な本ではない。Jenike医師の努力にもかかわらずEdは回復しないし、改善した後でも理由はわからない。読者はそこに苛立つかもしれない。だが、この実に正直な体験談に、医師から見放された重症患者はかえって「自分にもできるかもしれない」という勇気を得るのではないかと私は思った。

●ここが魅力!
都合よくまとめず、ありのままのEdの病歴とJenike医師の試みと失敗を語っているところが私の最も感心したところです。
また、病や治療法よりもEdとJenike医師の人物像に焦点を当てていること、そして何よりもOCDの患者に希望を与えるエンディングです。

●読みやすさ ★★★☆☆
文法的には非常に簡単です。専門用語もさほどありませんし、医療関係のノンフィクションとしては読みやすい部類でしょう。
けれども、ストーリーの中心人物がEd、Edの両親、Jenike医師、などと移り変わるところで、読書のリズムを失うかもしれません。

●アダルト度 ★☆☆☆☆
特に子どもが読んで困る部分はありません。

●Jenike医師が登場するOCDの本(私が昔翻訳した本です)

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音楽と科学が好きな人におすすめ-This Is Your Brain on Music: The Science of a Human Obsession

Daniel J. Levitin
2006初版
322 ページ
出版社:Penguinグループ
ノンフィクション/音楽/神経心理学/神経科学

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まず著者のDaniel J. Levitinの経歴が興味深い。
最初のキャリアは音楽業界のインサイダーである。セッション・ミュージシャン、サウンド・エンジニア、レコード・プロデューサーとして、スティービー・ワンダーやブルー・オイスター・カルトといったミュージシャンたちと仕事をしたことがある。
驚くのはその後のキャリアだ。
音楽の世界を去った後に神経科学者になり、現在ではMcGill大学のMusical Perception, Cognition, and Expertiseのラボの責任者を務めている。

この本は、音楽と神経科学の両方の世界を知っているLevitinが、「何が音楽なのか?」、「音楽のカテゴリーを決めるのは何か?」、「音楽家になるのは生まれつきの才能か、それとも練習量か」、「なぜ音楽の個人的な好みがあるのか?」など、音楽と人間の脳の関係をいろいろな角度から語ったものである。副題「The Science of a Human Obsession」とあるように、音楽に対する人のObsessionについての本なのだ。

音楽や神経科学に詳しい読者から史実や音楽理論での間違いを指摘する批判があるものの、全体的には良い評価を得ており、LAタイムズ紙Book Prizeのファイナリストになっている。私が気になったのは、優れた音楽家になるための「10,000時間説」と「幼いときから音楽を始めた者で大人になっても続けている者が少ないこと」について、納得する答えが得られなかったことである。
だが、どのノンフィクションにもいえることだが、ひとつの本に書いてあることをすべて事実として読むべきではない。それを念頭に読めばいろいろな発見があり、とても面白い本である。

●ここが魅力!
私の娘の友人で幼い頃からクラシック音楽を演奏している高校生にプレゼントしたところ、とても気に入ってくれて、今年この本からの発想で科学コンテストに参加したようです。そこで私の娘にも買ってあげたところ、「面白い!」とPost Itをあちこちに貼り付けはじめ、「来年の科学フェアでは音楽に関する実験をする」と言っています。
どちらも音楽と数学・科学が好きな女子高生で、彼女たちにとっては「なるほど~。そういうことだったのか」という知識を増やす喜びだけでなく、「私も自分の仮定を立てて実験してみたい!」と動機を与える本のようです。
学生時代合唱にのめりこんだものの楽器で失敗した私にとっては、著者が一緒に仕事をしたミュージシャンとの回想録や音楽の分析に「なるほど」と思いました。こういう本のよいところは、(役に立たない知識であっても)好奇心を満足させてくれることです。

たとえば、Joni Mitchellについてですが、幼い頃からバイオリンを習っていて絶対音感がある私の友人が、BGMとして流していたJoni Mitchellに「これだけはやめて。音が外れていて気分が悪くなる」と言ったことがあります。
でも、Levitinによると、Joniは確信犯だったのです。
著者と同年代の私には登場するミュージシャンもなじみある名前ばかり。それも魅力でした。

●読みやすさ 平均★★☆☆☆
読む人のタイプによって読みやすさが非常に異なる本です。
音楽を学んだことがあるノンフィクションが好みの理系の方:★★★~★★★★
どちらでもなく、ふだんは小説を読む方:★

文章そのものはとてもストレートです。文芸作品と異なり、解釈の必要がない文ですから、ノンフィクション好みの理系の方にはたぶん小説よりも読みやすいでしょう。
けれども、後者の方には(専門家には難しくない)音楽理論や脳の部位の名称など専門用語が頻出するので難しい本です。しろうとにも理解できるように説明していますが、それを読むこと自体が面倒だと思います。

●アダルト度
子供に読ませて困るようなところはありませんが、理解して楽しめるのは高校生くらいからでしょう。

●この本を気に入った方にはこんな本も…
Musicophilia: Tales of Music and the Brain

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面白そうな科学分野の新刊

科学分野のノンフィクションについてのお問い合わせをいただきましたので、今月発売の新刊あるいはこれから出る新刊のうち、私が興味を抱いている本をご紹介します。いくつかは今月末に参加するBook Expo Americaで入手できると思いますので、おいおい書評のほうも。

1. Wicked Plants: The Weed That Killed Lincoln’s Mother and Other Botanical Atrocities

Algonquin Books (May 21, 2009)

邪悪な植物、というタイトルからお分かりのように毒のある植物に関する本です。アガサ・クリスティが言っていたように、女性は毒が好き。私の夫は、「変な奴」といいますが、私は奇妙な植物やキノコの本が大好きなのです。

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2. One Hundred Essential Things You Didn’t Know You Didn’t Know: Math Explains Your World

W.W. Norton & Co. (May 18, 2009)

ケンブリッジ大学の数学の教授が「なぜいつも一番長い行列に並んでいるような気がするのか?」「籤に当たる確率は?」など日常の現象を数学的に説明する本。こういうのは私の娘とその友人たち好み。興味しんしん。

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3. How Sex Works: Why We Look, Smell, Taste, Feel, and Act the Way We Do

Harper (April 28, 2009)

「なぜ人により異なる異性のタイプに惹かれるのか?」とか誰でも興味を抱きそうな話題を科学的に説明している本です。セックスに関する本というと、やたら生々しいか、生物学的すぎる傾向がありますが、生理学者のSharon Moalem(「迷惑な進化」の作者)が書いたこの本は、生理学的観点と心理学的観点の両方をとらえていて、脳神経分野の本や、上記の日常の現象を数学的に説明する本のように「どうしてこんなことが起きるのか?」と知りたい人に向いているようです。

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人が決断を下すときの感情と理性のバランス-How We Decide

著者:Jonah Lehrer
発売日:2009年2月9日
ノンフィクション/神経心理学/応用心理学

人の頭の中身ほど面白いものはない

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私が昔大好きだったエルキュール・ポワロは、「灰色の脳細胞」が口癖の名探偵。得意技は心理分析による謎解きです。犯罪に限らず、人の心理が政治、経済、医学、などすべてにもっとも大きな影響を与えます。人間は他の動物にくらべて進化しているのだから合理的な動物かというと、そうでもないようです。どう考えても合理的とは思えない行動が何度も歴史を変えてきたのは周知の事実です。
いったいなぜ人はそのような決断を下すのでしょうか?
他人の意思決定の理由も謎ですが、自分の意思決定も謎です。あまり考えずに決めたことのほうがじっくり考えたものよりも良い結果をもたらすこともありますが、決断を早まったために後悔することもあります。私の場合、株式にかけては必ずといってよいほど間違った決断を下すのですが、「これは売れる本だ」という予感はほぼ当たります。どちらも同程度に限られた情報に基づくものですが、これほど判断力に差があるのはなぜなのか、自分でもよくわかりません。できればそれらの判断を下しているときの自分の頭の中を覗き見したいものです。
このように、人の下す判断とその背後にある脳の働きほど不可思議で面白いものはありません。

Jonah Lehrer のHow We Decideは、emotional brain(感情を司る脳の部位とそれによる決断)と rational brain(合理性を司る脳の部位とそれによる決断)のバランスの重要性を説いています。第一印象の直感的な理解力の重要性を説いたマルコム・グラッドウェルのBlinkとよく比較されるのは、テーマが似ているだけでなく、紹介する逸話や実験の選択も類似しているからです。読者を引き込む面白いエピソードや実験で決して飽きさせないところも共通点です。
もっとも大きな差は、グラッドウェルがジャーナリストであるのに対し、レーラーがノーベル賞受賞の神経学者のラボに勤務したことがある神経学者だということでしょう(彼のサイトを見ると、その若さに驚きます)。疾患のせいで感情を失い完全に合理的になった患者がかえって決断力を完全に失ってしまうというエピソードなど、神経学者だからこそ着眼し解説できる逸話がレーラーの強みです。
Blinkでグラッドウェルが使った「thin-slicing」の説明に物足りなさを感じた者としては、脳のメカニズムを説明し、「いかに判断を下すべきか」というところまで言及しているHow We Decideのほうに読み応えを感じました。
語りの達者さではグラッドウェルのBlink、内容の濃さではHow We Decide、というのが私の感想ですが、どちらも面白いので読み比べてみるのもよいでしょう。

●ここが魅力!
興味深いエピソードと実験の数々。そして、科学的にそれらの現象を解説してくれることです。科学に縁のない人でも十分「わかった」という気にさせてくれます。

●読みやすさ ★★☆☆☆
文体そのものは簡潔で読みやすいのですが、専門外の方には専門用語が難しく感じるかもしれません。

アダルト度 ☆☆☆☆☆
内容を難しく感じない子であれば、小学校の高学年から(全部を理解するのは無理にしても)トライすることはできるでしょう。面白く思うのはたぶん高校生くらいからです。

●この本を気に入った方にはこんな本も...

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宇宙物理が面白い!- Neil DeGrasse Tysonの本

理解する脳みそを持たないというのに昔から買わずにはいられないのが物理関係の本です。

高校生のときにアインシュタインの相対性理論を買ったのが始まり。「わかったような、わからないような」で終わってしまい、才能がないということをひしひしと実感しました。それでも物理への好奇心が薄れないのは、「世界の秘密を知りたい!」という人間の自然な欲求なのでしょう。数年前には超ひも理論とパラレルワールドについて書かれたThe Elegant Universe: Superstrings, Hidden Dimensions, and the Quest for the Ultimate Theoryにはまりましたが、最近はNeil DeGrasse Tysonにすっかり惚れ込んでいます。彼の本のほうがずっとわかりやすいし、ともかく面白いのです。

Tysonを原語でお勧めするのは、彼の語りのうまさを知ってほしいからです。

「ブラックホールで死ぬことのすばらしさ」を語る次のインタビューを見れば、Tysonがどんなに爆笑な物理学者かおわかりになっていただけると思います。

さて、お勧め本です。

歴史ロマンスとファンタジーロマンス、そして宇宙物理ファンの秀才女子高校生ルイーザのお誕生日に私が買ってあげた本がこれ。大好評でした。

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そして、娘の誕生日に買ってあげるのが最新作のこれ。

惑星だったプルートが格下げになったときのいきさつが語られています。(書評は彼女の誕生日が過ぎてから)。

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