PWベストセラーリスト(児童書フィクション編)1/12/2009

パブリッシャーズウイークリー、ニューヨークタイムズともに先週から大きな変化が見られないために、今週は児童書のベストセラーをご紹介します。 1. The Tale of Despereaux http://rcm-jp.amazon.co.jp/e/cm?t=yukariscott-22&o=9&p=8&l=as1&asins=0763625299&md=1X69VDGQCMF7Z30FM082&fc1=000000&IS1=1&lt1=_blank&m=amazon&lc1=0000FF&bc1=FFFFFF&bg1=FFFFFF&f=ifr&npa=1 9~12歳対象。映画化されたために再び人気が出た作品。ねずみが主人公だが愛と裏切りなど児童書としては複雑な心理を描いたもので、大人が読んでも面白いロングセラーである。 2. 39 clues: One False Note http://rcm-jp.amazon.co.jp/e/cm?t=yukariscott-22&o=9&p=8&l=as1&asins=0545060427&md=1X69VDGQCMF7Z30FM082&fc1=000000&IS1=1&lt1=_blank&m=amazon&lc1=0000FF&bc1=FFFFFF&bg1=FFFFFF&f=ifr&npa=1 9~12歳対象。シリーズは全部を読みきると謎を解くClueが39になる。次の巻が出るまでに子供たちはカードを集め、オンラインで10万ドルの賞金をかけたゲームに参加できる。巻により異なる人気児童作家が書くという方法も斬新。 3. Brisingr…

洋書初心者への「失敗しない完読テクニック」その2

日本人の悪い癖「完ぺき主義」を捨てましょう! 私が初めてイギリスに行ったときのことです。会話の途中で文法が間違っていることに気づくと、そこまで遡って、” I lived in Kyoto…(いやまだ住んでいるんだから) I live in…(いやいや、何年住んでいるかを説明する場合には現在完了形だから) I have lived in Kyoto for…

スクープ!Still Aliceがニューヨークタイムズ紙ベストセラーリストの5位でデビュー

まだニューヨークタイムズ紙やアマゾンでは発表されていない最新ニュースです。 http://rcm-jp.amazon.co.jp/e/cm?t=yukariscott-22&o=9&p=8&l=as1&asins=1439102813&md=1X69VDGQCMF7Z30FM082&fc1=000000&IS2=1&lt1=_blank&m=amazon&lc1=0000FF&bc1=FFFFFF&bg1=FFFFFF&f=ifr&npa=1 ニューヨークタイムズ紙のベストセラーリスト(ペーパーバック、トレードフィクション編)の第5位に、11日前に発売されたばかりの「Still Alice」が躍り出ました。以前私のブログでご紹介したこの本は、最初に彼女が書いたときにはどの大手出版社も無視していたものです。ついに自費出版した彼女が使った武器はインターネット。そのいきさつについては私の夫が3月3日に発売する「World Wide Rave」に綴られています。良い作品がこんなふうに埋もれている現状というのをひしひしと感じます。でも、アメリカではネットの世界が良い作品を救っています。日本でも将来はこんなことが可能になるかもしれません。 というわけで、作者からの直接の情報によるスクープでした。邦訳は講談社から出る予定です。お楽しみに!

The Mystic Arts of Erasing All Signs of Death

大ブレイクの予感がするサスペンス http://rcm-jp.amazon.co.jp/e/cm?t=yukariscott-22&o=9&p=8&l=as1&asins=034550111X&md=1X69VDGQCMF7Z30FM082&fc1=000000&IS2=1&lt1=_blank&m=amazon&lc1=0000FF&bc1=FFFFFF&bg1=FFFFFF&f=ifr&npa=1 元小学校教師で心的外傷後ストレス障害(PTSD)がある無職の主人公が仕方がなく得たのは、死体処理の仕事。セックス、バイオレンス、グロ、ののしり言葉…まるでパルプフィクションのようなこのサスペンスは、私の趣味ではないので読むのをためらいますが、最初に見たときから売れそうな予感がびんびんします。 今後ベストセラーに入ると思いますので、ご注目を!

洋書初心者への「失敗しない完読テクニック」

「洋書を読もう!」と決意した人が最初に犯す失敗には次のパターンがあるのではないでしょうか。 1)意気込みがありすぎて難解な本に挑む。 2)日本語で読んだかあるいはよく知っているクラシックを選ぶ。 3)自信がないので絵本からスタートする。 1)の問題は明らかですね。3ページまで読んだら偉いものです。 2)は洋書初心者のときに私も経験しました。「嵐が丘」に挑戦し、みごとに挫折!それからアガサ・クリスティ。クリスティファンだった私は英語で読んでちっとも入り込めないのに大ショックを受けました。クラシックは当時流行の言い回しや文体を使っていますからネイティブでも現代人には読みづらいのです。最初は現代の作品から始めましょう。 3)フランス語を習い始めたときに絵本を読みましたが、幼児用のストーリーには「次どうなるのか知りたい」という意欲がなかなかわきませんでした。まるで教科書を読んでいる気分になります。読みやすさは、必ずしも難易度ではなく、モチベーションを持たせてくれるかどうかにかかっています。 それでは、どんな本であれば失敗しないのでしょう? 1)学校で学ぶ程度の文法のもの。単語もできれば学校で習う程度が理想です。したがってネイティブの小学校高学年を対象とした本が適しています。最初はあまり美文ではないものがよいでしょう。 2)現代文学の中から選びましょう。 3)先を知りたくなるストーリー性があるものが理想です。子供もそうですから、小学生や中学生に人気がある分野はアニマル・ファンタジーやファンタジー、SFです。それらが苦手な方にはユーモアや風刺小説という手もあります。あまりにも子供じみた内容のものは避けましょう。読む気がうせますから。 それを念頭に、次はおすすめの本のサンプルです ステップ1(小学校3年生から高学年向け) このサイトの「読みやすさ★★★★」に相当します ●アニマル・ファンタジー(動物が主人公のファンタジー)…

Hot, Flat, and Crowded

著者:Thomas L. Friedman 2008年9月初刊 ジャンル:ノンフィクション/科学/時事問題 http://rcm-jp.amazon.co.jp/e/cm?t=yukariscott-22&o=9&p=8&l=as1&asins=0374166854&md=1X69VDGQCMF7Z30FM082&fc1=000000&IS2=1&lt1=_blank&m=amazon&lc1=0000FF&bc1=FFFFFF&bg1=FFFFFF&f=ifr&npa=1 http://rcm.amazon.com/e/cm?t=yofaclja-20&o=1&p=8&l=as1&asins=0374166854&md=10FE9736YVPPT7A0FBG2&fc1=000000&IS2=1&lt1=_blank&m=amazon&lc1=0000FF&bc1=FFFFFF&bg1=FFFFFF&f=ifr&npa=1 人類の抱える緊急問題と解決策がぎっしり詰まった本 Hot, Flat, and Crowdedは、地球の温暖化、人口の爆発的増加といった世界が直面する緊急問題とその解決策を提示したフリードマンの最新作である。周囲の中高年の男性はみんな読んでいる。時間に追われる知人のコンサルタントさえ移動時にiPodで聞いているというので、私も話題に取り残されないように早速読むことにした。 まずは、米国を現在の情けない状況に追いやった元凶の糾弾から始まる。レーガンにブッシュ、自動車産業など先見の明に欠ける横柄な態度の列挙は、まるでわが家の食卓での会話のようで胸がすっきりする。彼がお手本として使うホンダとトヨタにも拍手喝采したくなる。 最初はこうして自国をこき下ろすが、フリードマンのうまいところは、「最終的に米国こそが世界を救うリーダーになるべきだ」と国民の楽観的な性格とヒロイズムに訴えかけることだ。よく考えると実行が難しいことでも、「やれそう」で「やらねばならぬ」という気にさせる巧みさ、そして専門の中近東外交だけでなく世界中のあらゆる産業についての博識ぶり、これがフリードマンの魅力である。 注目すべきは、フリードマンが語るクリーンエネルギー産業の将来性である。オバマ次期大統領(現時点)が宣言したように、最初は赤字を増やしてでもクリーンエネルギーに投資するという政策が実現したら、米国には後からやってきて他国を追い抜く力がある。日本にはこの闘いにぜひ勝ってほしいが。…

StanzaとKindle の中間報告

StanzaとKindleを1週間ほど使い比べた中間報告です。 現時点ではKindleからStanzaには切り替えられないというのが率直な感想です。たぶん私のライフスタイルに合っていないだけの話なのでしょうが。 さてそれぞれの利点と欠点を挙げてみましょう。 Stanza 長所: ・コンパクトなこと。 iPhoneひとつ持てば音楽も聴けるし本も読めるのは抗いがたい魅力です。 ・ページをめくるのが速いこと。ダウンロードを待つのに苛立つことはありますが、待たずに次のページに移れるというのはKindleにはない長所です。 画面が明るいので、暗くても読めること。娘が楽器の練習をしている間、車の中で待たされる私にはけっこう大事なことです。けれどもKindleの画面が光らないのは、目が疲れないようにデザインされているからで、それを欠点と呼ぶのは失礼かとは思いますが。 短所: ・選択肢が少ないこと。最新版の注目の本があまりないというのは困ります。 ・価格。新刊のハードカバーはKindleでは(例外はあるものの)ほぼ9.99ドルと決まっています。同じ本がStanzaでは14.99ドルなどいずれも高めの設定になっています。 ・トレッドミルで走りながら読むには画面が小さすぎること。ページを何度も変えなければならないことや、触れていないとすぐに消える画面は走るのには不向きです。これは実に個人的な理由で申し訳ないですが、最大の問題なので。 Kindle 長所:…

一度読んだら虜になる死刑囚で毒味役の少女のサバイバル Poison Study

Maria V. Snyder 2008年9月初刊 ファンタジー/SF/ロマンス/ヤングアダルト/冒険 (2015年追記) 私の翻訳で日本語版が2015年7月に発売されます(ハーパーコリンズ日本到来を記念するハーパーブックスの1冊です)。 (下記は2009年当時の記事) SF、ファンタジー、ロマンス、歴史のカテゴリーが好きな高校生の娘とその友達から「面白そうな本を探してくれ」と依頼されて見つけた本。 

まだ十代の若い女性Yelenaは殺人罪を犯した死刑囚である。だが、コマンダーの毒味役を引き受ければ死刑を免れることができると選択を迫られる。死ぬまで職を離れることができない毒味役は、毎日解毒剤を飲まないと死ぬ毒を与えられているのでどちらにしても二度と自由にはならない身の上だ。 
Yelenaの上司はかつて悪名高い暗殺者のValekだ。Valekの厳しい要求、毎日死に直面する恐怖、彼女の暗殺を狙う敵、誰を信用してよいのかわからない孤独……、 Yelenaのサバイバルの試練に読者は息をつくのも忘れるだろう。 

中 世のようなこの世界には、不思議な毒や魔法があり、誰が味方で誰が敵かわからない。人を簡単に信じると死が待ち受けている。読後も作者が作り上げたこの不 思議な世界が脳裏に残って離れない。ただのロマンスやヤングアダルトのカテゴリーに入れるのはもったいないし、失礼だ。それくらい完成度が高い傑作であ る。 

私がこの本を勧めた高校生たちもそう思ったようで、(爆発的な人気の)「Twilight」より断然面白い!と言っていた。とくにValekは娘によると「(Twilightの)エドワードなんかより、ずっとHOT」という感想で、彼の年齢と職業を考慮すると母としてちょっと心配であるが…… ●読みやすさ ★★★★☆…