話題のiPadを発売日の4/3日にアップルストアで体験してきました。
購入しなかった主な理由は下記の2つです。
1.最初のバージョンは試験的な「プロトタイプ」だと私は考えているから。
必ず改善されたものが近い将来に出る。
2.近い将来もっと安くなる筈だから
でも、上記の問題が改善すればぜひ買いたい製品です。
という結論をまず書いておいて、次にiPadを使ってみたごく個人的な感想です。
1.iPadがKindleキラーであるという意見は間違っている
まず電子書籍リーダーとしてのiPadの使い心地を試してみました。
アップルサイトのビデオで見られるように、「一見」ページがクリアで美しく読みやすく感じます。本棚で本の表紙を見て選べるのも素敵です。ページをぱらぱらめくる感じもいいですね。
これが第一印象でしたが、しばらく読んでみてKindleユーザーとして感じたのが次の長所と短所です。
長所
- クリアな画面とカラーの美しさ。画面の明るさを調整できる。
- 本棚で本の表紙を見られる。
- 文字のフォントを変えられる。
- ページめくりが簡単でKindleより反応が速い。
- ページをあちこちに移動するのが簡単(「この登場人物、何者だったっけ?」と2、3ページ戻って確認するときなど)
- 文字や名前を検索して、そのページに飛べる!
- インターアクトしやすい。
(長所はアップルのGuided Toursでよくわかりますのでそちらをどうぞ)
短所
- 画面がクリアで明るいのは第一印象としては良いが、長期間読書する私のような者には目が非常に疲れる。(画面を暗くしてみたら、今度は照明が反射して読めなくなってしまった)
- Kindleは照明や太陽光線が照り返さないようになっているが、(下記の写真のように)iPadはもろに反射するので文字がまったく読めなくなる。
- この反射(glare)のためにビーチやプールサイドで読書するのには不向き。(ジップロックに入れて試してないので断言できないが、タッチスクリーンなのでお風呂も無理かと思う←これは「iPhoneをジップロックに入れて風呂で使えるから大丈夫では?」という意見をいただきました)
- 文字のサイズが2とおりしかない。変更してもあまり変わった感じがしない。フォントを変えられるのは良いが、それが重要とは思わない)
- サイズと重さ:少し片手で持ち上げて読んだだけで、腕から首にかけて鈍痛するようになった。Kindle DXもそうかもしれないが、普通のKindleに比べると長時間読むデバイスとしては重すぎる。お風呂読書用デバイスとしてもそう。Kindleは私のハンドバッグにも入るが、iPadは入らない。女性が持ち運んで読むのには不向き。
結論
Kindleベテランの活字中毒として、電子書籍リーダーとしてのiPadに最も惹かれるのは、検索できること、とページをあちこちに自由に移動できること、の2つです。Kindleで一番苛つくのがこれらの欠如ですから。
けれども、 多くの人(特に日本の方)が絶賛しているクリアな画面とカラーの美しさは、「本を読む」ことが目的の人には重要なことではないと思います。むしろ、私はすぐに目が疲れて読むのが嫌になってしまいました。何よりも苛ついたのは、スクリーンのglare(反射)です。写真のような状態では読めません。また、反射がないように自分の姿勢をかえたり、場所を移動したりしなければならないとしたら、外に持ち出す電子書籍リーダーとしては失格です。
もうひとつ気づいたのは、写真のような状態でiPadを試してい人々を観察すると、私以外ではほんの1部の人しかiBooksを試していなかったことです。大部分は別の機能に興味を持っていたようです。
追記:iPadを電子書籍リーダーとして評価するとき、日本でのレビューによく欠けているのがKindleのヘビーユーザーの視点で、それが私には非常に気になるところです。実際に活字中毒の立場で使い比べてみないとわからないのに、そうでない人がどうして「iPadはKindleキラーだ」などと言えるのでしょうか?
私の結論は、iPadは、大量に本を読む本当の本好きが「本を読むため」のデバイスとしてはおすすめできない、というものです。
追記その2:Twitterで次の2点を指摘してくださった方がありました。1)「雑誌に強い」2)「医学系の学生の教科書にiPadが強みがあるのでは」。
確かにこの2つはiPadが強いと思います。現在のKindleユーザーの多くはこれらの目的で電子書籍リーダーを使っていないので(多くはベストセラー、ミステリー、ビジネス書、ロマンスブック、文芸書)、ユーザーがKindleから乗りかえるというよりも、新しい顧客を開発することになるかもしれません。ただ、iPadが出る前に私が個人的に感じたのは、「これはコンピュータでやっていることと同じでは?」ということでした。ただし、ネットでは読めずiBooksだけで購入可能なデジタル雑誌が沢山出て来て、しかもその内容がネットでは得られないようなものであれば、これがのびる可能性はあります。でも、現時点ではカラー雑誌を画面で読むくらいなら、無料のネットで検索してしまう人のほうが多いかも。
追記その3:大事なことを書き忘れていました。iPadは無限の可能性を秘めたデバイスであり、それゆえに多様なユーザーを魅了します。ということは、Kindleを購入するほどの活字中毒ではない人が別の目的でiPadを購入し、それをきっかけに電子書籍の世界に入り込む門戸を作るデバイスかもしれません。
つまり、Kindleのヘビーユーザーが乗り換えるデバイスではなく、Kindleが説得できなかった新たな電子書籍ファンを開拓できるデバイスなのです。
2.iPadがノート型パソコンを駆逐するという意見は間違っている
Safariを試して真っ先に感じたのが「速い!」ということです。
私のMacBook Pro(OS X)と同じくらいかそれより速く感じました。もちろんストアのWiFiに接続しているせいなのですが。私のiPhoneは3G以前のものなので、WiFiと3G両方使えるタイプは、外に持ち出す機械としては非常に魅力的に感じました。ちょっとした外出や短い旅行ではMacBookを持ち出さずにこれだけで良いかもしれないと思わせてくれました。けれども最近どこかで読んだ「iPadはノート型パソコンを駆逐する」という意見は間違っていると思います。
私は20年ほど前に東芝のノートパソコンを購入したときから、デスクトップコンピューターというものを使ったことがありません。普通の方がデスクトップで行っていること(原稿を書く、ブログ記事を書く、電子メール、会計ソフトを使う、音楽を聞く、etc.,)を全部ノートで行っています。
これを全部iPadでやるなんて、まず無理ですね。5分でギブアップです。「書く」作業が多い人にとって、キーボードは非常に重要です。iPadのタッチスクリーンは非常に敏感で、他のことをやるときには良いのですが、キーボードで入力しようとすると、ちょっと触れただけで入力してしまいなかなか書けません。周りからも「too sensitive」といった感想が聞こえてきました。
また、私のようにキーの場所を感覚で覚えているローマ字記入の人は、キーの場所を指先で確認しながら打つのが習慣になっています。いちいちキーの場所を見て打ったりしてないのですよね。だからそれをついやってしまい、書き直しばかり。Twitter程度なら大丈夫ですが、それ以上の長文をiPadで書く気には全然なれませんね。これはほんの一例ですが、iPadでできることはまだまだ限られています。ノート型パソコンのユーザーには出張が多いビジネスマン、ジャーナリスト、学者などいろんな職種の人がいます。彼らがもし現在ノート型パソコンに頼っていることをiPadに任せることができるか?と聞かれたら、答えは大きなNO!でしょう。
「iPadがノート型パソコンを駆逐する」なんて言う人は、たぶんノート型パソコンをあまり使ったことがない方でしょうね。
3.iPadとKindle/ノート型パソコンを直接vs.という形で比較するのは間違っている
iPhoneが携帯電話ではないように、iPadは「電子書籍リーダー」でもなければ「ノート型パソコンの小型」でもありません。(そのどちらもほぼできちゃうのが魅力ではありますが)。iPadはどちらかというと、iPhoneやiTouchの世界を広げるものなのです。APPを使って、他のものではできないいろんな可能性を広げてくれる。
つまり、私のようにKindleを持っていて、 MacBook Pro というノート型パソコン(Macをパソコンとは呼びたくないのですが)を持っていて、それらをそれぞれの目的の主機種として使いつつ、追加として「楽しみの世界を広げるデバイス」として買う、という考え方ですね。
それともう一つ大きな需要が「シニア世代」です。
75歳の私の姑のように、PCが難しくて使いこなせず、「電子メールができて、Solitaireゲームができればそれでいいの」といった人に最適のデバイスなのです。
というわけで、先日彼女の誕生日にKindleをプレゼントして感謝された私は、iPadをクリスマスプレゼントにしようと思っています。
だからそれまでに二世代目を出してくださいね、Appleさん。