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ティファニーのステンドグラスを実際に作ったのは無名の女性デザイナーたちだった Clara and Mr. Tiffany

Susan Vreeland
ハードカバー: 432ページ
出版社: Random House (2011/1/11)本日発売!
歴史小説/文芸小説

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オードリ・ヘップバーンの映画「ティファニーで朝食を」や白いリボンで飾られた青いティファニーの箱を知らない女性はいないだろう。その有名な宝飾店「ティファニー」の創業者の息子ルイス・カムフォート・ティファニー(Louis Comfort Tiffany)は、家業を継ぐよりも芸術家になることを望み、1885年にガラス工芸を主とした「ティファニー・スタジオ」を創立し、米国におけるアール・ヌーヴォーの第一人者として名前を残した。


Louis Comfort Tiffanyが特に有名なのは、まばゆいばかりの色を使った大胆かつ精密なデザインのステンドグラスである。ウィキペディアの説明によると、『アメリカにおけるアール・ヌーヴォーの第一人者として知られ、主にステンドグラスやモザイク加工のガラスランプの製作などにおける芸術家として知られ、主にステンドグラスやモザイク加工のガラスランプの製作などにおける芸術家として名を馳せている』とのことである。(右は本作品に登場する"Feeding the Flamingos")。

だが、彼のステンドグラス作品の多くは、実際にはClara Driscoll(クレア・ドリスコル)という女性アーティストと、彼女が率いる独身女性のチームが作ったものなのだ。それなのに、ルイス・カムフォート・ティファニーのウィキペディアのページには、「クレア・ドリスコル」という名前はまったく出てこない。

1880年代(英国のビクトリア時代後期)のニューヨーク市。宝飾店「ティファニー」の資金援助でグラス工芸とエナメル・モザイク工芸の「Tiffany Studio」を作ったLouis Comfort Tiffany(本作品のMr. Tiffany)は、労働組合にストを避けるために、労働組合に属すことのできない女性工芸家たちだけの部門を作った。

美しいものを作ることに情熱を抱く女性たちは、やりがいのある仕事をできる機会に感謝し、男性よりも熱心に働いた。男性よりも細かい作業ができるために、女性部門は男性部門よりも精巧な高級品を作り続けたが、「ティファニー・ガールズ」と呼ばれる彼女たちは結婚を禁じられ、名誉も与えられなかった。
Clara Driscollは、いったんは結婚で職場を去ったが夫の死で職場に戻り、こんにちLouis Comfort Tiffanyの代表作として知られる作品の多くをデザインした(左はThe Blue Lanternから借用したClaraのデザイン。本書にもこのデザインについて言及がある)。

美しいものを作ることへの情熱とMr. Tiffanyへの忠誠心にかられて人生を捧げて来たClaraだが、アーティストとして認められない悲しさや、独身を貫くことの辛さに悩み続けた。それでも、幸運な人生だと思っていたが、その幻想が破れる時が来る。

● ここが魅力!

本作品は、事実に基づいたフィクションです。
人物造形はフィクションですが、 Louis Comfort Tiffanyの作品として知られているステンドグラスの多くがClara Driscollという女性デザイナーと多くの独身女性たちの手によって作られたというのは事実です。

Claraは、1900年にパリのExpoで賞を受賞したのに、もちろんパリに招待されることもなく、本国でその栄誉を受けることがなかったのです。女性として大切な時期と才能をMr. Tiffanyに捧げたのに、結果的に彼女は歴史の中でさほど重要ではない人物として忘れ去られてしまいました。

彼女の功績が現在に残っているのは、Claraが、ビクトリア時代の女性らしく手紙をこまめに書いていたからです。そして、それを貴重な歴史として保存し続けた人々の努力もあります。

本書の魅力は、ステンドグラス工芸のことだけではありません。1800年代後半から1900年前半というのは、英国がビクトリア時代から第一次大戦にかけて貴族階級の崩落を迎える激動の時代です。その時代の移民で溢れるニューヨーク市の躍動感が、とても興味深く感じました。

この本を読んでいるうちに、ClaraやTiffany Girlsたちが作ったステンドグラスの作品を見てみたくなりました。
下記のビデオは、この方が撮ったClaraがデザインしたランプシェイドの数々です。
本書にも出てきますので、本を読みながら、楽しんでください。

Tiffany Studios – An Exhibition from elie nasser on Vimeo.

●読みやすさ 中程度

読む前は「長そうだ」と思ったのですが、読み始めたらあっという間でした。
あまり難しい表現がありませんし、Claraの一人称で書かれているので、文芸小説としては読みやすいほうです。

●対象となる年齢

露骨な表現はありませんが、性的な話題が多少はあります。けれども詳細はありません。
中学校の高学年からおすすめ。

 

 

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