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盗作なのに堂々とベストセラーなYAファンタジー Throne of Glass

作者:Sarah J. Maas
ペーパーバック: 432ページ
出版社: Bloomsbury Publishing
ISBN-10: 140883233X
発売日: 2012/8/2
難易度:中級レベル
ジャンル:YAファンタジー
キーワード:Poison Study, assassin、盗作
カテゴリ:久々に「ゴミ箱行きの本」!

2012年に刊行されたYAファンタジー。
表紙カバーも内容の説明も気に入らず、最近まで無視していたのだが、あまりにもよく売れているし、シリーズ化もしているのでチェックしてみることにした。

あまり中身に期待はしていなかったのだが、それ以上に愕然としてしまうことがあった。
内容が、あまりにもPoison Study(Maria V. Snyder著)にそっくりなのだ。
ただし、主人公の少女のタイプも、筋書きも違う。

まずは、Throne of Glassの筋書きを簡単に説明しよう。
「最強の暗殺者」として有名な18歳の暗殺者Celaenaは、17歳のときに何者かの裏切りにあって投獄され、奴隷として1年鎖に繋がれていたが、突然牢獄から連れだされ、自由になる機会を与えられる。
それは、これまでの敵だった国王のお抱え暗殺者になるということだった。
ただし、条件がある。
Celaenaのように危険なならず者たちが数々の競技で争い、最後に残ったひとりだけが暗殺者になれるというのだ。途中で敗退したら、元の牢獄に戻らねばならない。そして、Celaenaにとっては、それは死を意味する。
自分を代表するチャンピオンとしてCelaenaを選んだ王子は、彼女に惹かれるようになり、王子の親友で護衛兵の隊長は「殺し屋」として警戒しているけれども同じくCelaenaに惹かれる。その間にも、Celaenaのライバルたちが、恐ろしい何者かによって惨殺されていく……という具合だ。

徹底的にちがうのは、Poison Studyの主人公のYelenaが好感がいだけるふつうの少女なのに対し、この18歳の女暗殺者の振る舞いは、甘やかされて育った金持ちのティーンのようなのだ。可哀想な人生を送ってきた女性がこんな考え方や振る舞いをするのは、どう考えても納得できないし、好感をいだけるところが何もない。
また、安易な三角関係も、最近のYAファンタジーにありがちな感じでトホホ。。。である。

そして、競技で最後に残った1人だけが救われる、というのはまるでThe Hunger Gamesだ。

肝心のPoison Studyとの類似点である。
まず、Poison StudyはThrone of Glassより5年も前の2007年に刊行されてニューヨーク・タイムズ紙ベストセラーになったファンタジーだ。
私は、翻訳もしているので、内容は隅から隅まで知り尽くしており、類似しているところがすべてわかる。
ムカムカしたので、途中で読むのをやめたが、それまでだけでも次のようなところがそっくりだ。

●18歳(Poison Studyは19歳)の少女が殺しの罪で1年間投獄されていたこと。
●最初のシーンが、牢獄から連れだされて、選択を与えられること。
●主人公が自分のボロボロの姿を恥ずかしく思っているところ。
●皆に隠している過去がある
●毒見のテスト(そっくり真似たとしか思えない)
●トレーニングの一貫で走らされ、吐いても頑張るところ
●トレーニングをする間に友人を作るところ

「そっくりなところが多いけれど、こちらのほうが文章がいい」と言うファンもいるようだが、盗作は盗作だ。

それに、最近はやりのYAファンタジーって、人物造形が浅すぎて、とてもではないけれど入り込めない。(同様に人気のRed Queenのシリーズも1冊だけ読んでうんざりしてやめた)。
ということで、私はひとりボイコット運動。

 

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