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予期せぬ事態で簡単に貧困に陥る「格差社会」での幽霊のような存在であるメイド。その回想記 Maid

<p>作者:Stephanie Land<br &sol;>&NewLine;Paperback&colon; 288 pages<br &sol;>&NewLine;Publisher&colon; Hachette Books&semi; Reprint edition &lpar;January 21&comma; 2020&rpar;<br &sol;>&NewLine;Language&colon; English<br &sol;>&NewLine;ISBN-10&colon; 0316505099<br &sol;>&NewLine;ISBN-13&colon; 978-0316505093<br &sol;>&NewLine;発売日:2019年1月22日<br &sol;>&NewLine;適正年齢:PG15<br &sol;>&NewLine;難易度:中級+~上級&lpar;7&sol;10)<br &sol;>&NewLine;ジャンル:回想録<br &sol;>&NewLine;キーワード:メイド、掃除婦、貧困、シングルマザー、ドメスティック・バイオレンス<br &sol;>&NewLine;<a href&equals;"https&colon;&sol;&sol;www&period;amazon&period;com&sol;Maid-Hard-Work-Mothers-Survive&sol;dp&sol;0316505110&sol;ref&equals;as&lowbar;li&lowbar;ss&lowbar;il&quest;&lowbar;encoding&equals;UTF8&amp&semi;qid&equals;&amp&semi;sr&equals;&amp&semi;linkCode&equals;li1&amp&semi;tag&equals;youfanclu-20&amp&semi;linkId&equals;51fce91656c2d5c153f4ec971ac33c47&amp&semi;language&equals;en&lowbar;US" target&equals;"&lowbar;blank" rel&equals;"noopener"><img 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&sol;><&sol;p>&NewLine;<p><&excl;--more-->シングルマザーになった若い女性が生活のために富裕層の家を掃除する「メイド」の仕事についた回想録『Maid』は、発売早々全米ベストセラーとなり、バラク・オバマ前大統領は2019年に年間推薦図書に選出した。2021年にはNETFLIXで映像化も決定している。<&sol;p>&NewLine;<p>この回想録で描かれるメイドは、自分を見えない幽霊のように扱う者たちの台所やトイレを毎日磨き続ける。だが、著者は貧困、DVを振るう元パートナーや経済的自立を阻む恋人、穴だらけの福祉、偏見の目、そして誰からも尊重されない孤独の中、それら全てが低下させる自己肯定感に苛まれながらも、作家になる夢と、自らの解放を叶えていく。<&sol;p>&NewLine;<p>社会から不運にも疎外された者が地べたから見た格差社会の眺めと、少しずつでも自ら未来を変えていく希望を描いたこの回想録が今月『<a href&equals;"https&colon;&sol;&sol;amzn&period;to&sol;2X7BGAJ" target&equals;"&lowbar;blank" rel&equals;"noopener">メイドの手帖<&sol;a>』(双葉社)として出版された。<&sol;p>&NewLine;<p>担当した邦訳版の「解説」を書かせていただいたので、出版社の許可を得て、ここで抜粋掲載する。<&sol;p>&NewLine;<p>◇ ◇ ◇『メイドの手帖』(双葉社)の解説 ◇ ◇ ◇<&sol;p>&NewLine;<p>2020年5月現在、新型コロナウィルスのパンデミックにより、世界のあちこちで「ソーシャルディスタンス」を取る動きや「ロックダウン(あるいは自宅待機)」がすでに二か月以上続いている。ビジネスを再開し始めた場所もあるが、ワクチンなどの予防策がない現状では、パンデミック前とまったく同じ社会に戻ることはできない。アメリカでは有名な百貨店やレストランが倒産し、この二か月だけで4000万人ほどが失業している。2007年から2008年にかけての(日本では「リーマンショック」として知られる)世界金融危機を遥かに超える経済危機になりつつあることを、多くの人が恐れている。経済的な不安に加え、自宅に閉じこもっていることへの苛立ちが募っており、銃を持ってロックダウン反対の抗議運動をする集団もある。この不穏な雰囲気を反映するかのように、ソーシャルメディアでの論争も目立つようになっている。<&sol;p>&NewLine;<p>つい最近のことだが、イギリスとアメリカの両国を巻き込んだあるツイッター論争に興味を持ち、スレッドを読んでいたところ、本書『メイドの手帖』の著者であるステファニー・ランドのアカウントに遭遇した。ちょうどこの本のことを考えていたので、そのセレンディピティに驚いた。<&sol;p>&NewLine;<p>論争の発端は、イギリスの保守派の男性政治ジャーナリストが「ドメスティックワーカー(家庭内労働者)を自宅に入らせることで、彼らの家庭の家計を助けてあげることができる。自分のおばあちゃんをお茶に招くのとはちがう」と、清掃員や配管工などのビジネスの早期再開を訴えるツイートをしたことだった。それに対し、ガーディアン紙のコラムニストの男性が「清掃員を雇う経済的余裕があるのなら、お金を払って自宅待機してもらい、自分で掃除をするべきだ。その時間の余裕はあるはずだ。それができないとしたら、恐ろしく自分勝手な人間だ」とリプライした。そこにガーディアン紙にも寄稿している女性コラムニストが割り込んできてややこしくなった。「ロックダウンで時間の余裕なんかできてはいない。自宅での仕事場をもう一人の大人と二人のティーンエイジャーとシェアしなければならない私には、もっと時間がなくなった。いつもより家にいる人数が多いから汚れもたまっている。私は掃除で死ぬほど疲れているのに失礼な意見だ」と反論した彼女に、先の男性コラムニストは「ティーンエイジャーに掃除をさせればいい。僕が子どもの頃には日常的な家事は兄弟の間でローテーションだった。それに、低賃金で働く女性に健康のリスクあるいは生命のリスクを負わせるのは利己的ではないか?」と答えた。最初は(面識があると思われる)イギリス人ジャーナリスト/コラムニスト同士のやりとりだったのに、海を隔てたアメリカからも、フェミニストを名乗る白人女性、白人女性の選民意識を批判する有色人種の女性が加わって大炎上した。<&sol;p>&NewLine;<p>自分で自分の家を掃除するのが常識の日本人には、なぜこの話題が炎上したのか理解しがたいだろう。私がアメリカに移住したときにも、カルチャーショックを受けたのが「掃除」に対する感覚の違いだった。娘のプレスクールの同級生が遊びに来ていたときに私がトイレ掃除をしていたら、そのうちの一人が大きな声で「あなたの家、貧乏なの?」と娘に尋ねたのだ。「あなたのお母さん、トイレ掃除しているけれど、うちではクリーニングレディ(掃除婦)がやることだよ」と。私が自分で自宅の掃除をしていることを知って、「そういうことは安く外注して、本業に集中したほうが経済的よ」とアドバイスしてくれた専門職の女性もいた。けれども、私には「自分のトイレの掃除を他の人にさせるなんて、失礼だ」という気持ちが捨てられないし、何よりも自分でやるほうが気楽なのでずっと自分で掃除している。<&sol;p>&NewLine;<p>後で気づいたことなのだが、夫の両親や兄弟、私の友人など、周囲のアメリカ人で掃除婦を雇っていない家庭はほとんどない。特に白人女性の発言の端々からは、「経済的に成功した女は自分でトイレ掃除をするべきではない」という考え方が滲み出す。トイレ掃除が「男社会が女に押し付けてきた汚い仕事」と見なされていた過去だけでなく、貴族や富豪が手の汚れる仕事を使用人に任せてきた歴史がその心理の背景にあるのではないかと思うようになった。また、イギリスなどヨーロッパの白人の国々が北米、カリブ海、アジア、アフリカなどに進出して多くの国を植民地にした時代に、それらの国々の住民を奴隷や使用人として使ってきた歴史も影響している気がする。現在も清掃員の職業についているのは有色人種や移民の女性が多いのだが、彼らに対する白人のクライアントの態度には、テレビや映画で見るイギリス貴族のような横柄さがある。<&sol;p>&NewLine;<p>「トイレ掃除からの解放」は、英米の女性にとっては「抑圧されてきた女性のステレオタイプからの解放」のシンボルかもしれない。だが、トイレ掃除から解放された女性がそれを押し付けているのは、有色人種や移民の女性や、予期せずシングルマザーとなり誰の助けを得ることもできなかった本書の作者ステファニー・ランドのように、職業の選択肢がほとんどない女性だ。ツイッターで口論になるほど必要とされているわりには待遇は最悪だ。重労働なのに時給9ドル程度しかもらえないようだし、交通費も自腹だという。低賃金に加え、働いている間に子どもを預ける人もいない。働けば働くほど不利になるような福祉制度も足を引っ張るので、彼女たちはクタクタになるまで努力しても貧困から抜け出せない。<&sol;p>&NewLine;<p>掃除婦を雇っている人たちは、「私が雇ってあげなければ、彼女たちは生活に困る。私は仕事をあげているのだ」と自分の行動を正当化する。自分が掃除婦に対して思いやりがある人物であることを誇るかのように「私は私の掃除婦が大好き」とツイートしたイギリス人女性もいる。だが、あるアメリカ人女性はその女性に対して「親愛なるイギリス人のレディへ。私はヨチヨチ歩きの子どもを持つシングルマザーだったときにあなたの家を掃除した者です。私は、あなたたち全員が大嫌いです。あなたのトイレに肘まで手を突っ込んで掃除することを私がどれほど『誇りに思っていた』かなんて、あなたがインターネットで言ってたら、私は喜んであなたの窓にレンガを投げ込んだでしょう」と怒りを顕にした。ステファニーは、それに「同感」とコメントしてリツイートしただけだったが、彼女がこのツイッター論争に対してどう感じているのかは明らかだった。<&sol;p>&NewLine;<p>女性コラムニストの攻撃的な反論を受けた男性コラムニストは、「自宅待機で暇になった女が掃除をするべきだ」などとはまったく言っていない。それに比べ、「私は仕事で忙しいから掃除などできない」「ティーンエイジャーにやらせればいい、というのは簡単だけれど(実現はそう簡単ではない)」といった彼女の反論には、「高等な仕事をしている私や高等教育を受けている私の子どもたちが、トイレ掃除なんて下等な仕事はできない(だから、高等教育を受けておらず、スキルがない女性に任せることのどこが悪い?)」という本音が透けて見える。フェミニストを自称する彼女たちが「掃除婦も誇りに思うべき素晴らしい仕事」と讃えても、それが表層的な褒め言葉であることを、ステファニーたち「メイド」はよく知っている。<&sol;p>&NewLine;<p>他人の家の汚いトイレを掃除し、その家の人たちから同等の人間として扱われない「メイド」になりたくてなっている人はほとんどいないだろう。だが、高等教育を受ける前に妊娠し、パートナーの援助なしに子育てをしながら生活費も稼がなければならないシングルマザーや、家庭での暴力で家出した若い女性などにとって、生き延びるための選択肢は「メイド」や性産業くらいしかないのだ。それなのに「自分は彼女たちを雇って援助してあげている」と悦に入っている人たちの自己欺瞞を、彼女たちは憎んでいる。<&sol;p>&NewLine;<p>ステファニーたちが本当に欲しいのは、自分たちを見下しながら利用する顧客ではない。自分への誇りを失わずにすむ仕事の選択肢であり、それを支えてくれる社会福祉なのだ。文才があり文筆家になる努力を続けたステファニーはメイドの仕事から抜け出すことができたが、それはとても稀なケースだ。ステファニーが書いてくれたこの本のおかげで、私たちは彼女たちの苦しさや本心を知る機会を得た。<&sol;p>&NewLine;<p>日本には、イギリスやアメリカのような「メイド」はあまりいない。だが、ステファニーのように貧困にあえぐ人たちはいて、他の人がやりたくない仕事を引き受けている。でも、その仕事だけでは彼らは食べていくことができないから生活保護を受けることになる。ステファニーも書いているが、アメリカには、そういった人々を「自分では努力せず、福祉を食い物にしている怠け者」とみなす雰囲気がある。その雰囲気を作った立役者はロナルド・レーガン大統領だ。福祉を不当に利用して贅沢な生活をしていたある女性についての1974年にシカゴ・トリビューン紙の記事が有名になり、レーガンはそれを大統領選に利用して貧困層の援助削減を正当化した。レーガンのキャンペーンには説得力があり、生活保護を受けながらキャデラックを乗り回す「福祉女王」のイメージが定着した。<&sol;p>&NewLine;<p>制度の穴を利用する者はいてもごく少数でしかないのに、生活保護を受ける女性は今でも「福祉女王」のようにみなされている。しかし、実際には、女性に限らず生活保護を受けている多くの人は単に不運だっただけだ。日本でも受給者に対する世間の目は冷たいが、予期しなかった事故、病気、失業、妊娠などで、人は簡単に貧困に陥るものなのだ。<&sol;p>&NewLine;<p>この本でステファニーがメイドになったのは、リーマンショックの時代だ。けれども、現在のパンデミックの影響はそれを超える経済難をもたらすであろう。そして、「不運」な人たちはもっと増えていくだろう。これまでは「自分には関係ない」「貧しいのは怠け者だからだ」と目を背けてきた人たちにとっても、もはや他人事ではない。<&sol;p>&NewLine;<p>自分が思いがけなく転んだときにそのまま坂を転げ落ちずにすむ社会を、今のうちに私たちは考えておくべきなのだ。<&sol;p>&NewLine;<p>この本が、そういった社会的対話のきっかけになることを祈っている。<&sol;p>&NewLine;

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