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もし犬がミステリーを書いたとしたら… Dog On It

著者:Spencer Quinn
発売日:2009年2月10日
カテゴリー:ミステリー/サスペンス

犬好きによる犬好きのためのミステリー登場!

ナレーターのChetは跳躍力にかけては誰にも負けない大型の雑種犬。警察犬学校の卒業寸前にその跳躍力(と彼が敵視する猫)のおかげでとある“事故(これについては謎のまま)”を起こし、警察犬になれなかったという過去がある。Chetが誰よりも愛するご主人のBernieも、エリート陸軍士官学校のWest Pointを卒業したにもかかわらずさえない私立探偵で、離婚した元妻からの嫌がらせに耐えつつ、大嫌いな浮気、離婚ケースを引き受けている。そんなとき、彼らは女子高校生の失跡事件の捜査を依頼される。これがまた、失跡なのか失跡でないのか、誘拐なのか家出なのかはっきりわからない。だが、少なくともこれは浮気や離婚ケースではない。本物の探偵業だ。

犬がナレーターなもので、人間の会話の言い回しがわからなくて混乱したり、テーブルの下に落ちている食べ物に気が散ったり、突然穴を掘り始めたり、普通のミステリーのようなわけにはゆかない。そこがまたリアルで面白い。ときに腹を抱えて笑い、ときにしんみりし、気がついたらChetさえ無事でハッピーであれば消えた少女やその両親なんかどうでもいい、と思っている。ミステリーを求める人はプロットに不満を抱くかもしれないが、犬がミステリーを書いたとしたら、これ以上の傑作はない。シリーズになることが期待される。
なお、この本に関するブログもChetが書いている。

●ここが魅力!
これまで動物がナレーターの映画や本は沢山ありましたが、動物の姿を借りているだけで、人間の思考回路を離れることができないものばかり。それ(特にディズニーの子供向け映画)に辟易してきた方はDog On Itに拍手喝采することでしょう。
ともかくChetの思考回路が犬らしくて面白いのです。犬といっても、チワワのようなペットではなく、警察犬としてトレーニングされてきたエネルギーレベルの高い大型犬ですから、気に入らない状況になると吠えたり、牙をむいたりします。犬が苦手な人間をすぐに見抜いて見下げるところもあれば、おやつをくれる人に即座に好意を抱く単純さもあります。Chetの思考を追うだけでも十分読む価値がある楽しい本です。

●読みやすさ 中〜やや簡単
犬がナレーターですから、難しい言葉はあまり出てきません。
高校生レベルの英語で十分理解できるでしょう。
どの程度の英語かを試すには、Chetが書いているブログを読むと良いかもしれません。

シリーズ第2作Thereby Hangs a Tail も好調!

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