大きな野望を持って、3年かけて作った、だいそれた本です。たぶん私の一生で、もう二度とできないと思います(苦笑)
ーーー以下は、本の『はじめに』の抜粋です(太字は追加)ーーー
2013年に『ジャンル別 洋書ベスト500』を刊行してから9年が過ぎた。前回の執筆は予想を遥かに超える困難な作業になり、途中で何度か後悔した。1冊の本になったときには誇らしさを覚えると同時に「年を取ったら体力がなくなるから、二度とこんなにしんどい作業はできないだろう」という諦めも感じた。そういうこともあって、コスモピアから改訂版を提案していただいたときには、尻込みした。
けれども、コスモピア社長の坂本由子さんの熱意に心動かされ、改訂版を作ることを承諾したのが3年前のことだった。10年以上前にコスモピアの『多聴多読マガジン』で連載していたときにお世話になった編集者の立花なつきさんが担当してくださるというのも励みになった。
立花さんとメールやダイレクトメッセージ、そしてZoomミーティングで話し合っていくうちに、一部を変更する改訂版ではなく、根こそぎ書き換えて新しい本を作る意欲がジワジワとわいてきた。『ジャンル別 洋書ベスト500』を刊行してからの9年間に毎年250冊ほど洋書を読み、新たに紹介したい本が増えたことが大きな理由だ。
もうひとつの理由は、準備の時間をたっぷりといただいたこともあって、自分の中で「前回を超える決定版を作りたい!」という野望が膨らんできたことだ。ミーティングをするたびに私の野望が大きくなるので、それに付き合わされた立花さんは本当に大変だったと思う。この場で感謝とお詫びをしておきたい。
前回の『ジャンル別 洋書ベスト500』と異なり、今回は500冊には限定しないことにした。そこで『新・ジャンル別 洋書ベスト 500プラス』というタイトルになった。(合計レビュー数は902タイトル。ショートリスト含む)ジャンルは前回よりシンプルな分類にし、読者が選びやすいように、それぞれのジャンルの中でサブジャンルを紹介することにした。他にも、読者が読みたい本を選びやすくする新しい工夫をこらした。
また、原則的には英語で書かれた本を中心にご紹介するが、9年前に「別の言語で書かれた本も含めてほしい」という意見があったので、今回はそのリクエストに応える努力をした。英語圏に翻訳された作品の中から、アメリカ人読者によく読まれているものをご紹介する。
私個人が好きではなくても、多くの読者が好きなベストセラーはかなりある。それらについても最初はご紹介するつもりでいたのだが、やはり私個人がおすすめする作品にしぼりたい気持ちがあった。そこで、前作のときのように「私が個人的に好きな本」+「私とは好みが異なる読者にとって素晴らしいと思われる本」を選んでレビューした。
前回の本では最終的に500冊を選んだのだが、「最終選択の前のリストを知りたい」というリクエストがあった。また、私が好きな本だが、類似の作品が重なったので、レビューから外したものもある。そこで、私が最終選考する前に時間をかけて作った「優れた作品/人気作品のリスト」をショートリストとして載せることにした。また、各ジャンルでの代表的な文芸賞の受賞作品もご紹介する。
前作では古典とモダンクラシックを分けたが、アメリカでは「高校と大学で読んでおくべき作品」としてまとめて紹介されていることが多い。そこで、21 世紀に刊行された作品を含めて「知っていて当然とみなされている作品」を「古典とモダンクラシック」のジャンルであわせてご紹介することにした。ここには文芸だけではなく、SF、ミステリ、エッセイ、ノンフィクションも含まれている。
古典の中で児童書のジャンルに含まれるものは、「児童書(古典)」のジャンルでリストアップしている。そのほうが読者にとって本を選びやすいと思ったからだ。
出版社名は入れたが、発売されている国で出版社が異なることがあるのでご了承いただきたい。また、前作のときに「ISBN が記載されていない」という苦情もあったが、これも国やバージョンによって異なるのでかえって混乱する。ゆえに記載しないことにした。作品タイトルと作者名で探していただきたい。アメリカとイギリスでは同じ本のタイトルが異なることがある。今回は、異なるタイトルがある場合には両方を記載することに留意した。
この大変な作業をしてくれた立花さんには特別感謝している。原則的にひとりの著者につき紹介するのは1 作品というのは前回と同様である。しかし、稀だが異なるジャンルで活躍している作家などは例外もある。
作業を進めている最中に、リストに入れ忘れた作品を思い出したことは数え切れない。レビューするかしないか迷った作品も多いし、リストがほとんど出来上がった後で偶然出会って恋に落ち、レビューを書いた作品もある。これだけ時間をかけても、「あれを忘れていた!」という作品はたぶん数え切れないだろう。それらについては、またブログの「洋書ファンクラブ」などでご紹介していこうと思う。
なるべく充実した本を作りたいという意欲が高まってしまったために、締め切りを何度も引き延ばしてもらうなど、編集の立花さんには非常にご迷惑をおかけした。欲張ったために収録した情報が多くなりすぎ、ミスや抜けを見落とした可能性もある。なるべくそうならないよう努力したが、ミスや誤字脱字を見つけたときには、老眼と戦いながら膨大な書籍と格闘した私の姿を想像して大目に見ていただければうれしい。
本書により、みなさんにとって多くの素晴らしい本との出会いがありますように。
2022 年8 月 渡辺由佳里
ーーー「はじめに」の抜粋終わりーーー
内容が想像しやすくなるように、「contents」と「本書の構成」をご紹介します。