Breaking Dawn(Twilight Saga, Book 4 )

著者:Stephenie Meyer

2008年刊

ジャンル:ロマンス/パラノーマル/ファンタジー

ハッピーエンドを望む読者のための完結編

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ロマンスはお菓子のようなものです。

安物のチョコレート菓子が好きな人もいれば、英国のハイティーやフランス料理のデザートチョコレートムースでないと口にしない人もいます。

Stephenie MeyerTwilightはフレッシュな果物を使ったフルーツタルトのようにイノセントな甘酸っぱさを保ち、砂糖とクリームの取りすぎで気分が悪くなるようなロマンスではありませんでした。図書館の理事をしている友人はふだんこの手のロマンスが苦手なのですが、Twilightの読書体験を「アイスクリームを食べたときと同じ」で「栄養素のないカロリー摂取(エンプティカロリー)だけれど、食べ終わるまでは楽しかった」と例えました。これは、ストリーテラー(シェフ)としてのMeyerの腕前によるものです。

それなのに、第4作の「Breaking Dawn」は突然Hershey’sチョコレートになってしまったのです。

発売日の深夜にバーンズ&ノーブル書店で開かれたバンパイア・プロムパーティには高校生の娘と友人3人組をつれて行ってあげたくらい応援していたのです。でも、読み終えた私が高校生の娘に伝えた感想は「Terrible!」のひとことでした。

Twilightの熱烈ファンは気を悪くするかもしれませんが、新鮮でイノセントな甘酸っぱさに惹かれてタルトを食べ始めた者にとっては、締めくくりに、チョコレートとは名ばかりのHershey’sを出されたら文句を言わずにはいられません。

あまりにも多くの点に「ああああああああ。。。。。。。。。。。。」と叫びたくなったのですが、その理由をなるべく冷静に整理してみました。

1.ふつうの人が「幸福」と誤解して求める即物的な理想(たとえば並外れた美しさと強さ、不老不死、好きな人と結婚する、これも不老不死のわが子、富、その世界でのステイタス、エトセトラ)がすべて実現してしまう。そして、主人公(とそれより問題なのは作者)がそれに疑問を持たない。

2.登場人物の性格がこれまでの作品とは大きくことなる。(エドワードのカリスマ性はどこに行ってしまったのか?)

3.中年の読者でもすんなりと17歳に戻ることができるのが魅力だったのに、この本のベラとエドワードはまるで適齢期を逃しかけた30歳くらいの夫婦のような言動をとる。魅力だったイノセントさが完璧に失われている。

4.ハッピーエンドには必ずしも必要ではないセックスと妊娠。ヤングアダルト本で、しかもファンタジーなのに、これらにあまりにも重点を置き、ページも割きすぎている。愛イコールこの2つだといわんばかりの「Breaking Dawn」は、良質のロマンスとしては失格。

5.不要に都合が良すぎるストーリー展開

このような作品になってしまった理由を私なりに推察してみました。

ファンからのハッピーエンドを求めるプレッシャーもあったと思いますが、私は彼女のモルモン教徒としての道徳観がついに邪魔をしたのではないかと疑っています。

私の少ない知識に基づくと、彼らは結婚するまでのセックスはいけないことと教えています。Meyerの大人向けのSFHost」でも主人公の男性はエドワードのように「結婚までは駄目」という態度を貫きます。そのくせ、年上の男性とはるかに年下の女性の組み合わせに対しては違和感を覚えないようです(ネタばれになるので詳細は省きます)。作品中のこれらの共通点は、最近まで幼い少女を年上の男性に嫁がせる一夫多妻の慣習(現在は違法)があり、結婚したら子供を産むことを奨励されるモルモン教の特性とも合致しているようです。また、カトリックと異なり経済的な成功が奨励されています。

作者の宗教観が影響を与えたと思うのは考えすぎでしょうか。

ベラとエドワードのハッピーエンドを切実に求めるタイプのTwilightファンは安心して楽しめるでしょう。わが娘は後日冷静になってから「まるでFanfic(ファンフィクション:二次創作)」と批判しましたが、最初に読んだときは「ハッピーエンドでよかった」と喜んでいたのですから。ロマンスがさほど好きでないファンタジーファンの高校生の少女は、「この巻はいろんな面でグロテスク」と批判しましたが、それは少数派のようです。

●読みやすさ ★★★☆☆

Twilightよりもははるかに複雑になっていますし、長くもなっています。けれども基本的には簡単で読みやすく、★★★★に近い★★★です。

●ここが魅力!

手に汗を握るシーン、涙をさそうシーン、スプラッター、など息をつく暇もなくスピーディーに展開します。娯楽作品としては最後まで飽きないでしょう。

●アダルト度 ★★★★☆

セックスシーンをきわどい場面でそらす、という技法的な努力はしていますが、セックスのことばかり考えている(それを愛と混同しているきらいがある)ティーンの主人公はヤングアダルト本にはどうかな?という感想です。

●この本を気に入った方にはこんな本も...

Twilightを参照してください。

渡辺由佳里 Yukari Watanabe Scott についてhttp://youshofanclub.comエッセイスト、洋書レビュアー、翻訳家、マーケティング・ストラテジー会社共同経営者。兵庫県生まれ。 助産師としてキャリアをスタート。日本語学校のコーディネーター、外資系企業のプロダクトマネージャーなどを経て、 1995年よりアメリカに移住。 2001年に小説『ノーティアーズ』で小説新潮長篇新人賞受賞。翌年『神たちの誤算』(共に 新潮社刊)を発表。他の著書に『ゆるく、自由に、そして有意義に』(朝日出版社)、 『ジャンル別 洋書ベスト500』(コスモピア)、『どうせなら、楽しく生きよう』(飛鳥新社)など。 最新刊『トランプがはじめた21世紀の南北戦争』(晶文社) ニューズウィーク日本版とケイクスで連載。 翻訳には、糸井重里氏監修の訳書『グレイトフル・デッドにマーケティングを学ぶ』(日経BP社)、『毒見師イレーナ』(ハーパーコリンズ)など。 連載 Cakes(ケイクス)|ニューズウィーク 日本版 洋書を紹介するブログ『洋書ファンクラブ』主催者 Author, translator, and English book reviewer for Japan Market. Author of "500 best books written in English" for the Japanese market. English book reviewer for Newsweek Japan. Amazon.co.jp Top 500 reviewer.

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