Kindleでしか読めないキングの新作UR

Kindleが買えないためにURが読めない日本のキングファンのみなさん、読み逃しても後悔するような作品ではありませんからご心配なく。

Ur

AmazonのStephen Kingのページ

Kindle発表記念の作品だからかもしれませんが、あまり怖くなく、軽く読めて、ハッピーエンドです。この物語には、「好きな作家の作品をもっと読みたい」というファン心理が反映しています。それをキングがよくわかっているのは面白いところです。
私が個人的に吹き出したのはKindleを読んでいる主人公とそれに気づいたウエイトレスの会話です。

「それ、Kindleでしょう?」ウエイトレスが尋ねた。「私もクリスマスにもらったんだけれど、とっても気に入ってるわ。Jodi Picoult(作品数が多いので有名)の作品はもうほとんど読みつくしちゃった」
「全部ってことはないと思うな」(この理由はストーリーに関係あり)
「えー。どうしてよ?」
「たぶんもう次の作品ができてるだろうなって、そういう意味だよ」
「それをいうなら、ジェームズ・パターソンは今朝おきてからもう一冊書き終わっているわよね」そう言って彼女はケラケラ笑いながら立ち去った。

私ならここにJoyce Carol Oatesも加えますが。

あらすじはこんな感じですネタばれです)。

*********************************
ケンタッキー州のぱっとしない大学で英文学を教えているWesley Smithは、最近本に対する態度の差が原因で、バスケットボール部のコーチをしているEllen Silverman(私の友達と同姓同名!)と仲たがいする。それがひとつの原因になって、これまで「コンピューターで本を読む」ことに大反対だったWesleyはKindleを購入する。
Wesleyが注文したKindleが届くと、それはピンクだった。Kindleは白しかなかった筈だが...といぶかしがるWesleyは、このKindleには他のKindleにはない機能があることを発見する。
Kindleのメニューにはexperimentalという新しい機能を試す選択がある。そこでWesleyが見つけたのは、Amazon.comだけでなくURから本をダウンロードできるという機能だ。彼がヘミングウェイを検索してみると、間違っていることが明らかな情報があふれている。それだけでなく、ヘミングウェイが書いていないことが明らかな小説もある。好奇心でそのひとつをダウンロードしたWesleyは、文体がヘミングウェイそのものであることにショックを受ける。他の作家でもそうだった。一睡もせずにそれらの作品を読み漁っていたWesleyは自分の頭がおかしくなっていないことを確かめるためにひとりの学生と同僚にKindleを見せる。Wesleyと同じようにこのKindleの虜になった2人と一緒に、彼は他のexperimental機能も試してみる。
URでニューヨークタイムズ紙の過去の記事をいくつかダウンロードしてみると、ヒラリー・クリントンやミット・ロムニーが大統領になっている。それより恐ろしいのは、ローカルニュースだった。町の地方新聞の記事は未来のものしかダウンロードできないし、しかも「パラドックス法が適用される」というのだ。
Wesleyがそこで読んだのは、仲たがいしているがまだ愛しているEllenとバスケットボール部の部員たちが試合後のバスの事故で死亡するという記事だった。バスケットボール部にガールフレンドがいる学生とともに、Wesleyはこの事故を阻止しようとする。しかし、それは「パラドックス法」に違反することではないのか?

渡辺由佳里 Yukari Watanabe Scott についてhttp://youshofanclub.comエッセイスト、洋書レビュアー、翻訳家、マーケティング・ストラテジー会社共同経営者。兵庫県生まれ。 助産師としてキャリアをスタート。日本語学校のコーディネーター、外資系企業のプロダクトマネージャーなどを経て、 1995年よりアメリカに移住。 2001年に小説『ノーティアーズ』で小説新潮長篇新人賞受賞。翌年『神たちの誤算』(共に 新潮社刊)を発表。他の著書に『ゆるく、自由に、そして有意義に』(朝日出版社)、 『ジャンル別 洋書ベスト500』(コスモピア)、『どうせなら、楽しく生きよう』(飛鳥新社)など。 最新刊『トランプがはじめた21世紀の南北戦争』(晶文社) ニューズウィーク日本版とケイクスで連載。 翻訳には、糸井重里氏監修の訳書『グレイトフル・デッドにマーケティングを学ぶ』(日経BP社)、『毒見師イレーナ』(ハーパーコリンズ)など。 連載 Cakes(ケイクス)|ニューズウィーク 日本版 洋書を紹介するブログ『洋書ファンクラブ』主催者 Author, translator, and English book reviewer for Japan Market. Author of "500 best books written in English" for the Japanese market. English book reviewer for Newsweek Japan. Amazon.co.jp Top 500 reviewer.

Kindleでしか読めないキングの新作UR」への1件のフィードバック

  1. スティーブン・キングの作品はどれもとっても長いので、文章は簡潔で読みやすいと聞いていても、なかなか手が出ませんでした。この作品を読もうと思ったのは、「kindleでしか読めない」という部分よりも、「短編」というところに食いついたというのが正直なところです。
    kindleや小説・作家についての話がとても多く、登場人物も少ないので、話の筋を見失わずにさくさく読めました!

    いいね

コメントを残す

以下に詳細を記入するか、アイコンをクリックしてログインしてください。

WordPress.com ロゴ

WordPress.com アカウントを使ってコメントしています。 ログアウト / 変更 )

Twitter 画像

Twitter アカウントを使ってコメントしています。 ログアウト / 変更 )

Facebook の写真

Facebook アカウントを使ってコメントしています。 ログアウト / 変更 )

Google+ フォト

Google+ アカウントを使ってコメントしています。 ログアウト / 変更 )

%s と連携中