The Tattooed Girlの推薦文 by デンスケさん

毎年ノーベル賞候補に挙げられるオーツですが、日本での知名度はいまいち?
詩、小説、評論、多岐にわたる活動を行っているうえ、多作家であるわりには「これ」という作品が日本では知られていないように思います。
 
わたしも何から読んでいっていいのやら決められず、謎(?)の作家でした。
YA本やホラーも多く、自分がこの種の作品が苦手ということもあります。
とりあえず、完結した作品で適当な長さの小説、ということでこの作品をチョイス。
 
筋書きは比較的単純で、裕福なユダヤ人作家でギリシャ文学の研究家である主人公が、貧しい家庭からきた頬にタトゥーのある娘を偶然に助手兼家政婦に雇うこととなり・・・というところからストーリーは始まります。
 淡々とした内容ですが、およそ対照的といってよい二人になにが起こっていくか。
ゴシックホラーの名手である作者は、微妙に不吉な影を匂わせつつストーリーを進めてゆきます。
ダイナミックな起伏はないのですが、不安感といったものが読者にページをめくらせます。達意の作家という気がします。ラストはえっ!?というものですが、周到に伏線が用意されており、納得。作者はこの小説を「スリラー」である、と語っていますが、確かに。
 
なぜノーベル賞候補となる名声を得ているのか、少しだけわかったような。静かに語るのになぜか人を強く惹きつける話し手っていますよね。単純な筋立てながら、知らず知らずに読者を作品世界に引っ張り込む力量に感心しました。
 
ただ、この作家は一筋縄では行かない、もっと色々な引き出しがあると思います。それを知りたいのですが、その第一歩として格好の作品ではなかったかと思います。

渡辺由佳里 Yukari Watanabe Scott についてhttp://youshofanclub.comエッセイスト、洋書レビュアー、翻訳家、マーケティング・ストラテジー会社共同経営者。兵庫県生まれ。 助産師としてキャリアをスタート。日本語学校のコーディネーター、外資系企業のプロダクトマネージャーなどを経て、 1995年よりアメリカに移住。 2001年に小説『ノーティアーズ』で小説新潮長篇新人賞受賞。翌年『神たちの誤算』(共に 新潮社刊)を発表。他の著書に『ゆるく、自由に、そして有意義に』(朝日出版社)、 『ジャンル別 洋書ベスト500』(コスモピア)、『どうせなら、楽しく生きよう』(飛鳥新社)など。 最新刊『トランプがはじめた21世紀の南北戦争』(晶文社) ニューズウィーク日本版とケイクスで連載。 翻訳には、糸井重里氏監修の訳書『グレイトフル・デッドにマーケティングを学ぶ』(日経BP社)、『毒見師イレーナ』(ハーパーコリンズ)など。 連載 Cakes(ケイクス)|ニューズウィーク 日本版 洋書を紹介するブログ『洋書ファンクラブ』主催者 Author, translator, and English book reviewer for Japan Market. Author of "500 best books written in English" for the Japanese market. English book reviewer for Newsweek Japan. Amazon.co.jp Top 500 reviewer.