乾いたカンザスの田舎に蘇る地主一家の過去 The Scent of Rain and Lightning

Nancy Pickard
336ページ(ハードカバー)
Ballantine Books
2010/5/4
ミステリー

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The Virgin of Small Plains でエドガー賞最終候補になったNancy Pickardの新刊。

カンザス州Roseは、牛の牧場を営む大地主のLinder一家を中心とした、狭い人間関係でなりたっているような田舎町である。 1986年、干ばつが続いていたRoseを激しい雷雨が襲い、Linder家の長男 Hugh-Jayが何者かに自宅で銃殺され、妻のLaurieが行方不明になる。2人の殺人罪で逮捕されたのは、Linder家が首にしたばかりのBilly Crosbyだった。

祖父母の家を訪ねていたために無事だった当時3歳の Hugh-JayとLaurieの娘Jodyは、23年後に母校の教師としてRoseに戻って来た。両親が住んでいた大邸宅での一人暮らしを始めたばかりのJodyのもとに、叔父3人(父の弟のChase, Bobby, そして妹のBellの結婚相手Meryl)がショッキングなニュースを届けにくる。両親を殺したBillyが再審のために保釈され、町に戻ってくるというのだ。弁護士になったBillyの息子Collinが検察側が証拠を隠蔽したことを明らかにし、再審が認められたのだった。

町で最も権威があるLinder家の祖父Hughと叔父たちは、再審を認められるようなずさんな手続きをした保安官を責めるが、Jodyは町の人々から異なる事実を耳にし始める。Billyは刑務所に入っているべき危険人物だが、あの夜Hugh-Jayを殺害できた筈はないようなのだ。Jodyは、自分が知らなかった両親の異なる姿や秘密を知るようになる。

●ここが魅力!

カンザスというと、すぐに想像するのが「オズの魔法使い」ですよね。ふだんの生活で は私がまったく触れることのない場所です。

Kansas-map 日本に住んでいる方には想像しにくいかもしれませんが、アメリカ合衆国は広いので「これがアメリカ」とまとめてしまうことはできません。西海岸のカリフォルニアと東海岸のニューヨークでは当然文化もファッションも異なりますし、東海岸同士のニューヨーク市とボストン市ですら相当違います。このミステリーの舞台のカンザス州は、カリフォルニアとニューヨークのちょうど中間地点くらいの米国のど真ん中に位置しています。けれども、距離が離れているロサンジェルスとニューヨーク市のほうがこの田舎町よりずっと似ているのです。西海岸と東海岸の都市部のアメリカ人にとっては、カンザスのほうがパリやロンドンよりも外国に近いのではないかと思います。

0 アメリカ中西部の文化にあまり興味がないので、ついそこを舞台にした小説まで避ける癖がありますが、せっかくエドガー賞最終候補になったPickardのアドバンスコピーを入手できるチャンスがあったので読んだところ、予想したよりずっと楽しめました。
というのは、 The Scent of Rain and Lightningが、ふだん触れることのない中西部の田舎の文化を肌で感じさせてくれるミステリーだったからです。現代の牧場のカウボーイたちの倫理観や価値観、銃が日常生活の一部になっている土地では当たり前の行為、そんなものがかえって新鮮に思えたのでした。ミステリーとしては、多少都合の良すぎるところがあったのですが、それを差し引いても読書体験を楽しむことができました。

すごく奇妙な偶然は、主人公がJohnny CashのCDを流しながらトラックを運転する場面です。ちょうど前日に、キャッシュによるデペッシュ・モードのカバー”Your Own Personal Jesus”を聴いていたので、その曲名が出て来たときには「きゃー」っと心中で悲鳴を上げました。そのうえ、読み終わった夜、雷雨でしたし、雰囲気にどっぷり浸からせていただきました。でも不気味な本ではありませんので、ご安心を。

下記はその曲です。


●読みやすさ:普通〜やや読みやすい
(日本語が読めない作者がネット翻訳して誤解することが多いので、★評価をなくしました)

大人向けの小説としては普通からやや読みやすいレベルです。
時間があちこちに飛びますが、それほど難しい飛び方ではありません。

●アダルト度

性的なシーンはいくつかありますが、露骨な表現ではありません。
高校生以上が対象です。

渡辺由佳里 Yukari Watanabe Scott についてhttp://youshofanclub.comエッセイスト、洋書レビュアー、翻訳家、マーケティング・ストラテジー会社共同経営者。兵庫県生まれ。 助産師としてキャリアをスタート。日本語学校のコーディネーター、外資系企業のプロダクトマネージャーなどを経て、 1995年よりアメリカに移住。 2001年に小説『ノーティアーズ』で小説新潮長篇新人賞受賞。翌年『神たちの誤算』(共に 新潮社刊)を発表。他の著書に『ゆるく、自由に、そして有意義に』(朝日出版社)、 『ジャンル別 洋書ベスト500』(コスモピア)、『どうせなら、楽しく生きよう』(飛鳥新社)など。 最新刊『トランプがはじめた21世紀の南北戦争』(晶文社) ニューズウィーク日本版とケイクスで連載。 翻訳には、糸井重里氏監修の訳書『グレイトフル・デッドにマーケティングを学ぶ』(日経BP社)、『毒見師イレーナ』(ハーパーコリンズ)など。 連載 Cakes(ケイクス)|ニューズウィーク 日本版 洋書を紹介するブログ『洋書ファンクラブ』主催者 Author, translator, and English book reviewer for Japan Market. Author of "500 best books written in English" for the Japanese market. English book reviewer for Newsweek Japan. Amazon.co.jp Top 500 reviewer.

乾いたカンザスの田舎に蘇る地主一家の過去 The Scent of Rain and Lightning」への2件のフィードバック

  1. 興味をそそられる作品ですね。ゆかりさんがおっしゃるように、カンザスは景色、暮らしぶり、価値観などの点で、同じアメリカでも、東や西海岸の都市とはずいぶんと違いがありますよね。さっそくTBRに追加しました。(いつ読むか分からないけれど…)

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  2. コメントありがとうございます。
    今なんかカンザス続きなんですよ、偶然。行く機会はまったくないのですが、読むほうで。読書の良いところは、行けないところ(または、実際には行きたくないところ)を、まるでそこにいるかのように体験できることですよね。そういう意味で面白かった本です。現実世界では「カウボーイ苦手!」って思うのでしょうけれど(笑)。

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