中国系アメリカ人の新人類による、屈折した自己愛が印象的な風刺小説 Hello Kitty Must Die

Angela S. Choi
ペーパーバック: 320ページ
出版社: Tyrus Books
 (2010/04)
風刺小説(アジア系アメリカ人)/ブラックユーモア(大人向けなので要注意!)

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28才のフィオナ・ユー(Fiona Yu)は、イェール大卒の企業弁護士だが、いまだにサンフランシスコのチャイナタウンでコインランドリー店(Laundromat)を営む両親と同居している。

自分の稼いだ金で気の向くままにジミー・チュー、プラダ、ディオール、ルイ・ヴィトンを身につけることができても、フィオナは、両親の中国式の考え方や、西海岸のアジア系アメリカ人コミュニティのプレッシャーから逃れることができない。両親は、結婚どころか恋愛に興味もない彼女に毎週「アジア人花婿候補」を押し付けるし、同僚の中国系二世の女性弁護士は、アジア系の結婚相手を探し求めて拒否されている。人々のイメージにあるアジア系の従順な女性は、 くちごたえする口もないし、ひっかく爪もない 、「ハロー・キティ」だ。フィオナは、「ハロー・キティ」とそれを求める人々を嫌悪している。


そのうえ、企業弁護士とは、エゴの固まりのようなパートナーにこき使われ、屈辱を与えられるだけの職だ。28年間貯めてきた怒りと恨みの結果なのか、フィオナは(ここでは露骨すぎて書くのを躊躇する)目的で、専門医を訪問する。そこで、再会したのは、小学校で親友だったショーンだった。カトリックの学校に通っていた2人は、いじめっ子への逆襲で親友になったが、ショーンが事件を起こして退学になり、その後すっかり交友が絶えていた。

ふたたび仲良くなったショーンとフィオナの周囲で、人々が死に始める。

●感想

以前「Hello Kitty Must Die」が話題になっているときには手に取らなかったのですが、キンドルで無料キャンペーンになっていたので、試してみました。

作者のアンジェラ S. チョイ(Angela S. Choi)は、主人公のフィオナ・ユーと同様に、サンフランシスコ出身の中国系2世で、イェール大卒の企業弁護士でした。弁護士事務所でフィオナと同じようにボスのパートナーにこき使われる最悪の体験をしたようで、30才のときに弁護士をやめて小説家になることを決意したということです。

フィオナの内心の声はアンジェラのものと重なる部分が多いと思うのですが、そうであれば、アンジェラも心理的に相当なダメージを受けた女性ではないかと思いました。まず、導入部分の「えげつない」としか表現できないシーン(性的に露骨ですが、まったくセクシーではありません)とショーンに出会うきっかけになった出来事に至るロジックがまったく普通の女性には理解不能です。米国の新人作家が出版にこぎつけるためには第一章が肝心なので、「まずショックを与えて興味を惹く」ことを狙ったと思うのですが、それにしても「わかる、その気持ち!」と思う読者がいないだろう、という点で、風刺としては失敗かと思いました。

次に、アジア系アメリカ人のステレオタイプについて。アジア人以外が書いたら大問題になること間違いなしの侮辱的で表層的なものばかりです。韓国系アメリカ人コメディアンのマーガレット・チョーを連想させる部分が多いのですが、アンジェラのジョークはときおり「怒り」に近すぎて居心地が悪くなりました。けれども、他人への同情心が徹底的に欠如しているフィオナの心理こそが、醍醐味なのだと思います。そういった意味では、この小説は成功しています。

私好みの作品ではありませんが、以前話題になった文芸小説の「Super Sad True Love Story」よりも、2つの部分で優れていたと思います。ひとつは、家族や社会のプレッシャーで健全な心に育てなかったアジア系アメリカ人女性の内面。もうひとつは、「自己愛」のTrue Love Storyです。
終わりの部分のフィオナの語りで、小説としての価値が突然上がりました。

●読みやすさ 普通〜やや簡単

一人称で、特に難しい話題ではないので、簡単に読めるでしょう。

●おすすめの年齢層

「ハロー・キティ」という言葉が含まれていますが、子ども向けではありませんのでご注意を!いきなり露骨な性的シーンがありますが、まったくセクシーではありません。エロチカと呼ばれるようなものでも、ロマンスブックでもありません。
殺人シーンが沢山出てきますが、特にグロテスクなところはありません。
高校生以上。

渡辺由佳里 Yukari Watanabe Scott についてhttp://youshofanclub.comエッセイスト、洋書レビュアー、翻訳家、マーケティング・ストラテジー会社共同経営者。兵庫県生まれ。 助産師としてキャリアをスタート。日本語学校のコーディネーター、外資系企業のプロダクトマネージャーなどを経て、 1995年よりアメリカに移住。 2001年に小説『ノーティアーズ』で小説新潮長篇新人賞受賞。翌年『神たちの誤算』(共に 新潮社刊)を発表。他の著書に『ゆるく、自由に、そして有意義に』(朝日出版社)、 『ジャンル別 洋書ベスト500』(コスモピア)、『どうせなら、楽しく生きよう』(飛鳥新社)など。 最新刊『トランプがはじめた21世紀の南北戦争』(晶文社) ニューズウィーク日本版とケイクスで連載。 翻訳には、糸井重里氏監修の訳書『グレイトフル・デッドにマーケティングを学ぶ』(日経BP社)、『毒見師イレーナ』(ハーパーコリンズ)など。 連載 Cakes(ケイクス)|ニューズウィーク 日本版 洋書を紹介するブログ『洋書ファンクラブ』主催者 Author, translator, and English book reviewer for Japan Market. Author of "500 best books written in English" for the Japanese market. English book reviewer for Newsweek Japan. Amazon.co.jp Top 500 reviewer.

中国系アメリカ人の新人類による、屈折した自己愛が印象的な風刺小説 Hello Kitty Must Die」への3件のフィードバック

  1. 渡辺 様
     ご紹介ありがとうございます。
     アメリカでは現在無料なのですね?そのため日本からアクセスするとKindleバージョンが表示されません。
     リストマニアにこのタイトルを入れている人がいたため、そこからアクセスしたところ、日本からはダウンロードできないと表示されました。
     AT&Tも定額制を取りやめるとかニュースを聞きますし
    Amazonとの包括契約も以前ほど条件が厳しくなり、日本から
    プロモーション的な意味合いの無料本を落とせるチャンスは
    減ってきたりするでしょうか?
     英語力向上目的で多読をする人には、無理なくレベルアップ
    できるよう、サンプルの積極利用をお薦めしていますが、
    これがだんだん制約されたりしないように祈るばかりです。

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  2. こんにちは、ママンさん。
    日本からは入手できないものが増えてきたというのは、残念なことです。米国にいる私にはチェックできないので、日本に住んでいる方からお知らせいただいては、申し訳ないな〜と思っています。
    近いうちに、epubファイルもダウンロードできるキンドルが発売されるらしいので、そうなると他の無料のファイルを入れることができそうです。
    アメリカでは、図書館からebookを借りるのに使えるようになりますから、それを楽しみにしています。
    それではまた!

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  3. 渡辺 様
     すみません、途中書き換えて言葉遣いがおかしく
    なりました。「以前より条件が厳しくなり」ですね。
    図書館からebookが借りられるようになるのは本当に
    楽しみですね。私は借りに行くのはよくても、絶対返しに
    行くのが億劫になるので本は購入しますが、返しに行かずに
    すむebookなら多少の金額がかかっても借りたくなるでしょう。これで老後車椅子になっても怖くない!

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