『これを読まずして年は越せないで賞』番外編その4(最終回)

 

引き続き、book番外編4 bookです。

ここから入った人は、最初から読んでくださいね。

審査員



Yukari_s渡辺

このブログ「洋書ファンクラブ」の主宰者

 

Harumaki_s春巻(この特別編の編集とイラストレーター)

仕事でビジュアル書籍の翻訳などをしているせいか、装丁のきれいな本が好きで、海外の本は小説を含め表紙買いしてしまうこともしばしば。ジャンルを問わずにいろいろ読みますが、最近は短編集にハマっています。
映画と本の感想ブログ「春巻雑記帳 http://springroll.exblog.jp」のほか、趣味の工作ブログ「skip seven http://skip7.blogspot.jp」でちまちま制作している豆本と豆箱を紹介中。

 

Mona_sモナ

某大型書店の洋書仕入部門で働く会社員。
神戸のインターナショナルスクールに通っていたころから洋書が好きで
読んでいるけど、最近しみじみと「読書は体力だ」と思います。
女性が主人公になって活躍する小説が好み

 

Shoko_sちょこ

2008年よりオーストラリア在住で、このまま永住予定。
今年から念願の(仮付き)サイコロジスト。大学院で心理学を勉強中です。
そのせいなのかキャラクター重視の本が好きで、自覚がなかったけれど重い本を推薦する傾向があるみたいです。
ジャンルを問わず本を読むのがとにかく好きで、最近はオーストラリア人作家の本を広めようとひそかに活動中。

 

bookディスカッションのつづきbook

●今年はちょっと変わった作品を推したい「これを読まずして年は越せないで賞」フィクション部門

 

Yukariフィクション部門は、『Mr. Penumbra's 24-Hour Bookstore』から。これはもう、Twitterやってる人やインターネットやってる人は絶対におもしろいはず。Googleのところなんて最高でしょ!

 

Screen Shot 2012-12-11 at 4.58.53 AM

最高機密だったGoogleのデータセンター(WIREDより)

 

 

Harumakiこれはおもしろかった! 最初から笑いっぱなし。元グーグル社員が興したベーグル会社には完璧な円のベーグルを作るためのアルゴリズムがあったり、それが売れなくなると今度はいびつな昔ながらのベーグルをつくるようになったり、いちいち設定が細かくて愉快すぎる。

 

Mona近所に勤める人が古本屋に本を買いにきて、「あの作家の書いた別の本がほしいけど置いてないならネットで買うわ」って言うところとか、リアルな本屋としてはグッときちゃう。古い本の匂いがいいっていう人に、古本屋の店主のほうが「You are finished when people start
talking about the smell」って答えるところがいい。

 

Yukariそういう「あるある!」という細かいところが楽しいのよね。私がもらったARCを読んだうちの夫がね、小説に登場するヒロインのGメールアドレスにメールを出したんだって。そしたらちゃんと返事が返ってきたんですよ。「このアドレスにメールをくれたのはあなたが初めてです。おめでとう!」って。私のほうが先に読んでたから「もう出してると思ったのに」と夫に言われて、すごく悔しかった!

 

Mona
Harumaki
Shokoえー!
作者、芸が細かい。

 

Shoko細かいところまで、いま読んで、いま楽しいという点で、ぜひ今年読んでほしい本です。

 

Yukari電子書籍や古い本のどちらがいいか悪いかじゃない。将来もそんなに悪くないよ、という楽観的なところがよかった。日本人に受けそうな小説ですよね。

 

Shokoラノベと小説の中間みたいな本で、読みやすくて確かに受けそう。

 

Mona軽くて、おもしろくて、ノセてくれて、最後まで愉快で読後感がいいってありそうでないですよね。

 

Yukariそう、だから新鮮だった。皮肉な視線で世界を見ている小説はすごく多いじゃないですか。出版社がニューヨークに集中しているせいか、業界の人に受けるような都会的でひねった話が多くて、地方にいる人にはそういう話は受けない、というのが常日頃不満に感じる点なんですけど、この本はNYとサンフランシスコの差みたいなものを感じさせてくれました。

 

Harumaki言われてみれば、『Mr. Penumbra's~』は非常に西海岸っぽい話ですよね。西海岸の楽しく軽く明るい感じに満ちている。

 

Mona本の中の設定でも、NYにある秘密結社本部は堅苦しくて伝統を守れ!という嫌なノリでしたよね。

 

Yukariでは、これは最終候補に残しましょう。『Gone Girl』はどうでしたか?

 

Mona途中で真相がわかってきたときに「ええー!」と驚きました。怖い。この作者の本は初めて読んだんですけど。

 

Shoko私も初めてでした。登場人物がみんな苦手で読むのが苦しかったー。とか言っちゃっていいのかしら。

 

Harumaki大丈夫。私も登場人物がみんな嫌いだった。 そんな『Gone Girl』はラストが予想外。Gillian
Flynnは過去に『Sharp Objects』を読んだことがあるけど、自傷癖のある人が主人公でたいそう暗い話だったな…。

 

Yukari私もあれ読んで暗い人だと思った。今回のほうが上手くなっていますよね。いやーな小説ですけどね。

 

Mona最初だるい感じでなかなか進まなかったんですが、その部分のよさが後でわかる。

 

Shoko真ん中ら辺で、ペースがあがりますよね。それでも辛かったけど(笑)。

 

Harumaki最初のほうの日記がだるかった。なんてウザい女なんだ!と思ったし、結婚記念日に妙な宝探しのイベントをやるじゃないですか。あれが嫌で。

 

Monaそう、しかも1回じゃなくて何年もやってるんですよね。

 

Yukariあのウザさが後から怖くなる…。

 

Monaああいう日記をヒントにする人いるかな~。男の人が読んだらインパクト大ですよね。

 

Yukariああいうウザい女に見込まれたら、人生終わりだな。

 

Harumaki
Mona
Shokoうわー!怖い怖い!

 

Yukari「ご家庭では決して真似しないでください」ってやつね(笑)。私、夫にこの本を勧めたの。これを読んだら私のよさがすごくよくわかるよって(笑)。
しかし、こういうものを書ける人はどういう人生を送っているのか。旦那さんなんて、お前のところは大丈夫かって皆に聞かれてそう…。さて、気をとりなおして『Defending Jacob』はどうでした?

 

Mona私はこれから読みます。

 

Harumaki前半はどう転ぶのかわからない展開なんだけど、読み終わると「あなたはどう思うか」と読者が試されているという感じの本。語り手である主人公は敏腕検事なんですけど、彼がどういう人物で、本心は何を考えているのか、全然わからないんですよ。

 

Yukari読み終わった後から味が出てくるんですよね。主人公は正義の味方なのか、奥さんや子どもを愛しているのか、それとも自分自身の人生を否定したくないだけなのか、いろいろな見方ができる。

 

Shokoさらっと読める小説なのに一筋縄ではいかず、読後ディスカッションしたくなりました。

 

Mona最後にはっきり決着がつく話なんですか?

 

Yukari表面的には決着はつくけど、それがいったいなんだったのかという真相は、読者の解釈次第ですね。

 

Harumakiちょこさんの言う通り、読み終わったあとに誰かと話し合いたくなる本なんですよ。よく考えると主人公の奥さんも気の毒なんですよね。家族同士でちっとも話し合ってなくて、大事なことは主人公が勝手に決めちゃってるじゃないですか。

 

Yukari奥さんの孤独感が感じられますよ。これまでも彼女は孤独に戦ってきたんじゃないのかなって心情を想像するとかわいそう。あの夫婦の関係とか、いろいろ考えちゃう。

 

Mona読むのが楽しみになってきました。

 

YukariThe Secret Keeper』は個人的には好きですが、絶対外せないというわけでもないです。

 

Harumaki私はこれから読むんですが、ケイト・モートンの前作は大変に救いのない話でしたよね。

 

Shokoそうでした。ここで告白しますが、そのせいでケイト・モートンに対して苦手意識がありました。どこか構えて読んでしまう。

 

Yukari今回は安心して読めます。ケイト・モートンの作品の中ではいちばん救われる話です。

 

Monaいまそういうのが読みたいな。私、ケイト・モートンは落ち着いているときじゃないと読めないんです。通勤途中じゃなくて、落ち着いた環境に似合う本。ハンモックがほしい。

 

Shoko今寝る前に少しずつ、味わいながら読んでるところです。

 

Yukari静かに紅茶なんか飲みながら読むのにいい本ですよね。彼女の本は、文章が上手だから文芸に入っているけど、内容的にはロマンスですよね。非常にドラマチックで。

 

Mona
Harumakiではこちらは読んでから、また話し合うということで。

 

YukariGods of Gotham』もよかったですよね。

 

Shokoおもしろかったですね。

 

Monaまだ読んでないんですが、あらすじから察するに、スコセッシの映画『ギャング・オブ・ニューヨーク』みたいな話?

 

Harumakiちょうどその時代のニューヨークの警察の話。とってもおもしろいけど、当時の裏用語(スラング)がふつうに文章に出てくるので、読みにくいと感じる人もいるかもしれない。だから「これ読ま」で推薦するにはどうなのかなって悩んじゃう。クセがあるから、最終候補には残さないけど余力がある人は読んでね!でもいいかも。

 

Yukari推測して読み進むのに馴れているといいけど、わからない単語を無視できない人は辛いかもしれないですね。馴れている人なら楽しめると思う。

 

Shokoなるほど。あんまり読みにくいと思わず読めたのはなんでだろうと考えてて、いま思ったんですけど、いい意味でいいかげんに読める人向きかもしれません。完璧に読もうと思うと疲れちゃうかも。

 

Harumakiあと、この本はもしかするとシリーズになるかもしれない予感が。

 

Yukariうん、続きが出そうですよね。主人公が警官として成長していく物語。絶対楽しいですよ。では、フィクション部門最終候補作は『Mr. Penumbra's 24-Hour Bookstore』、『Gone Girl』、『Defending Jacob』の3冊で、『Secret Keeper』と『The Gods of Gotham』は保留にしましょう。今日はみなさんありがとうございました。こうやって好きな本の話ができるって楽しいですね。

 

Mona
Harumaki
Shoko本当に楽しかったです!
また機会があったらぜひやりたいですね~。お疲れさまでした。

 

 

book番外編終了book

12月21日、日本時間午後6時すぎ(アメリカ東海岸時間なんと午前4時!)からツイッターで受賞作決定の生中継をいたします。審査員が全員揃うまでただの雑談をしておりますので、決定は7時すぎからになると思います。

私のツイッターアカウント(@YukariWatanabe)をフォローし、ハッシュタグ #koreyoma で追ってください。横から飛び入りコメントも歓迎です。

ツイッターのやり方が分からない方は、こちらをどうぞ。それが楽しかったら、こちらを参考書にどうぞ。

渡辺由佳里 Yukari Watanabe Scott についてhttp://youshofanclub.comエッセイスト、洋書レビュアー、翻訳家、マーケティング・ストラテジー会社共同経営者。兵庫県生まれ。 助産師としてキャリアをスタート。日本語学校のコーディネーター、外資系企業のプロダクトマネージャーなどを経て、 1995年よりアメリカに移住。 2001年に小説『ノーティアーズ』で小説新潮長篇新人賞受賞。翌年『神たちの誤算』(共に 新潮社刊)を発表。他の著書に『ゆるく、自由に、そして有意義に』(朝日出版社)、 『ジャンル別 洋書ベスト500』(コスモピア)、『どうせなら、楽しく生きよう』(飛鳥新社)など。 最新刊『トランプがはじめた21世紀の南北戦争』(晶文社) ニューズウィーク日本版とケイクスで連載。 翻訳には、糸井重里氏監修の訳書『グレイトフル・デッドにマーケティングを学ぶ』(日経BP社)、『毒見師イレーナ』(ハーパーコリンズ)など。 連載 Cakes(ケイクス)|ニューズウィーク 日本版 洋書を紹介するブログ『洋書ファンクラブ』主催者 Author, translator, and English book reviewer for Japan Market. Author of "500 best books written in English" for the Japanese market. English book reviewer for Newsweek Japan. Amazon.co.jp Top 500 reviewer.

『これを読まずして年は越せないで賞』番外編その4(最終回)」への2件のフィードバック

  1. 高校生の娘の英語の授業でNever Let me goが取り上げられ、どんな話だっけなーと、ネットサーフしていたら、ここにたどり着きました。米国サンタモニカ在住25年、Book Club歴5年です。こんな日本語のサイトがあったなんて、私がまさに探していた場所を見つけて感激です。これからも、ちょくちょく寄らせていただきます。私のBook Clubでの今月の図書は、Major Pettigrew’s Last Standで、その次がGone Girlとなっております。でも、「今年の年越せない賞」にFifty Grayが入っていないなんて、ちょっとびっくり。いい悪いは別として、かなり話題になって、日常のジョークにもよく使われてるから、まさに読んでないと年越せないかなーと思ったのですが。Book Clubでは、第一巻だけでのDiscussionだったのですが、かなり話は盛り上がりました。多くの人は、全3巻まで読んでいて、やはり、3巻まで読まないと、これは、語れないと言うアメリカ人ママが多かったですね。という私は、1巻で、うーん、もういいかなと食傷気味。でも、3巻まで読むと、かなり奥が深いラブストーリーだそーですよー。

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  2. Keikoさん、こんにちは。
    そして「洋書ファンクラブ」へようこそ。
    Fifty Shadesは、この番外編でも、もちろんおしゃべりのトピックになっていました(笑)。
    この本、このブログの長年のファンの方で、ロマンス小説ファンの方には非常に人気が悪いんですよ。
    そのあたりのことも先月読売新聞社の文芸欄から取材されたときにコメントさせていただきました。
    また、本ブログの「これ読ま賞」は基準がとっても個性的なんですよ。「売れた」とか「話題になった」はぜんぜん関係ないんです。私と審査員が「これ面白かった。他の人にも薦めたい」というのが唯一の基準なんです。
    ですから、ベストセラーや文学賞と重なるとかえって「おや、重なっちゃったね」という驚きを覚えるほど(笑)。
    そういうブログですので、今後ともどうぞよろしく〜。

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