2012年の話題作Gone Girlより面白いという前評判の心理スリラー『Lies You Wanted to Hear』

著者:James Whitfield Thompson(デビュー作家)

ペーパーバック: 404ページ

出版社: Sourcebooks Landmark

ISBN-10: 1402284284

発売日: 2013/11/5

適正年齢:R(成人向け)、性的シーンや話題あり

難易度:中級レベル(高校英語をマスターしたレベル)、一人称で語られているので理解しやすい。

ジャンル:心理スリラー/ラブストーリー(ある意味)

キーワード:恋愛、結婚、思いやりと偽り、愛と憎しみ、家族関係


 

1979年、LucyとMattは友人がアレンジしたブラインド・デートで出会った。

コネチカット州の裕福な家庭で育ったLucyは、美人なのに男運が悪かった。そもそもLucyの男性の好みが問題なのだ。彼女が情熱的に愛したのは、同じように恵まれた境遇で育ったがゆえに無責任に生きているGriffinだった。彼の子供を妊娠したのだが、彼の意思で中絶することになり、それをきっかけに見捨てられて暗い気持ちで生きていた。

田舎の労働者階級の家庭で育ったMattは、真っ直ぐな性格で同僚や知人から愛される実直な警官だった。彼は知的で魅力的なLucyに最初からひとめ惚れし、彼女の裏切りや、自分のことを心から愛していないことを薄々知りながらも結婚した。


夫を愛そうと努力してもできないLucyは、完璧な夫であり父であるMattに引け目を感じ、決して間違いを起こさない夫への憎しみも覚えるのだった。重症のマタニティブルーからようやく抜けだしたLucyのもとに、過去の恋人Griffinが舞い戻る。(これ以上バラすと読む楽しさが減るので、ここまで)。

 

LucyとMattそれぞれの視点を一人称で交互に語る手法と、愛が壊れてゆく過程と嘘の数々は、Gone Girlを連想させる。だが、後味最悪の「イヤミス」と呼ばれるGone Girlとは異なるタイプの心理スリラーである。斬新さやどんでん返しの驚きなどは、Gone Girlには及ばない。Gone Girlは、後味は悪いものの、歴史に残る稀な傑作である。Lies You Wanted to Hearは、大傑作とは呼べないが、自分が求める形の愛を得ることができない哀しさや、愛と憎しみの微妙な秤や、善と悪のグレーゾーンなどについて考えさせる作品として優れている。

裕福な共和党員のLucyの両親が住んでいるのがコネチカット州New Canaanで、これは私の夫やAnn Coulterが育った町である。奨学金を得てハーバード大に行ったピッツバーグ出身の作者Thompsonにとって、New Canaanやそれに似た町出身の同級生たちは、LucyやGriffinのように見えたのだろう。また、小説の舞台はボストンなので、それらの町を選んだ作者の心理を想像するのも面白かった。

作者は67歳の新人作家で、これがデビュー作である。若者が書いた心理スリラーよりも「許し」の複雑さを感じた。

 

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